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錦繍のブナ林ときのこ、ブナの女神、クマとイワナと仙人、焚き火、表と裏、ソロー「森の生活」、陶淵明・・・
▲半分以上落葉したブナ林
葉の大半が落葉し、青空が透けて見える
こんな秋晴れに恵まれると、林内は明るく、ふかふかの落葉斜面を歩くのが楽しい
全て落葉すれば、林床に当たる風、雨、光ともに最大となる

一般的に、その時がナメコの第二のピークを迎える
しかも、倒木に生えたナメコやムキタケを発見しやすい
キノコセンサーをフル稼働させながら斜面を駆け上がる
▲縦に折り重なるように生えたブナシメジ
優秀な食菌だが、群生に出会えることは稀である
それだけに、ブナの老木に生えたブナシメジの群生は珍しい

傘の中央部に灰褐色の大理石模様があるのが最大の特徴
料理・・・味噌汁、天ぷら、和え物、煮物、炒め物、炊き込みご飯など、和・洋・中華何でも合う
▲ナメコが生えるブナ林全景
上の全景写真から、光、風通し、排水ともに良好なブナ林であることが分かる
一帯は、ナメコの菌が発生しやすい条件に恵まれ、ベストポイントの一つである
斜面に伏したブナの倒木には、毎年ナメコが群生し、数年お世話になっている
森の窪地に倒れたブナには、落葉がたまりやすい
中と右の写真は、窪地の倒木に生えたナメコが落葉で埋もれていた
ナメコが落葉に埋もれてしまうと、風、光、排水ともに悪く、ナメコは腐りやすい
残念ながら、ほとんどが劣化していたので採取はパス
▲ムキタケの群生
ムキタケは下から見れば、ヒダは密で美しい
表皮下にはゼラチン層があって、表皮はむきやすい・・・だから「ムキタケ」
倒木の上にも生えるが、特に水分の多い横から下にかけて重なるように生える

サワモダシやナメコと並び、大量に採取できる・・・キノコ採りの代表種のひとつ
雨が降った翌日は、大量の水分を含んでいる
そのまま採取すれば荷の重さに苦しめられる

ブナハリタケと同じく、余分な水分を絞り出すのが採取のポイント
かつて秋田の山村では、薄塩で漬けて長期保存していた
冬に取り出して納豆汁に入れると最高の味である・・・今では、冷凍保存、缶詰が一般的である
今年二度目のピークを象徴するナメコの幼菌と傘が開いた成菌
楽しい、楽しいキノコ採りがエンドレスに続く
降り積もった落葉にどっかり腰を下ろし、ブナの恵みに感謝しながら採取する
▲巨樹の森とナメコ
傾斜が緩い高台のブナは、巨樹が多く、寿命尽きて倒れた倒木も多い
排水性に問題があるのか、数百年ブナには、ほとんどナメコが見当たらない
しかし、林床に伏した細い枝木にナメコの幼菌が発生していた
▲ 傘が開いたナメコの成菌
細い枝木は、一見、群生の規模は小さく見えるが、上、横、
落葉に隠れた下にも群がって生えている・・・フカフカの落葉に座ってのんびり採取する

時折、頭上から落葉が舞い散り、鳥の囀りも聞こえる
こうした穏やかなブナ林のキノコ採りは、人生の楽園の一つ
▲落葉を踏みしめながらブナの森をゆく ▲クリタケ
標高約650m、巨樹の森から右の沢沿いの尾根を下る
右の沢には、ブナの風倒木が多いが、不思議とナメコが生えない
それは謎だが、サワモダシだけは採り切れないほど生える
ナメコとサワモダシは、巧みに棲み分けているのだろうか
急斜面と緩斜面の境界線に位置する倒木を探すのがポイント
上3枚の写真は、下る途中に生えていたナメコ
斜面に伏したブナの倒木にナメコ幼菌の群生を発見
降り積もった落葉を払い、まずは写真を撮る・・・横と上から見えない下にもビッシリ生えていた
時々、ナメコの傘に光が射し込むと、「炎立つ」ような輝きを放つ
ナメコは、まさに「ブナ林の宝石」と呼ぶにふさわしい
▲ブナ林のキノコ採りの図
斜面の傾斜に注目
ナメコは、湿っぽい場所を好むが、同時に排水性も良くなければ生えない
上から雨が降った場合を想像いただきたい

倒木が地面と接している・・・フカフカの落葉に雨水がたまり倒木に適度な湿気を供給する
と同時に、この傾斜が余分な雨水を排除してくれる
こうした条件を備えた場所に限ってナメコが生える
▲傘が開きかけた極上のナメコ
ナメコ採りは、ひたすらブナの風倒木を探すことに尽きるが、
やみくもに歩いても、疲労困憊するだけで当たる確率は低い
過去のデータを持っているかどうかで採取量は決まる

しかし、倒木は朽ち果てるのも早い
従って、常に新しい倒木のデータを蓄積していくことも必須である
▲苔生す倒木に生えたムキタケ
ムキタケは、ボリュームのあるキノコで、採り過ぎると荷の重さに耐えられなくなる
特に泊まりの場合は、共同装備の荷が加わるので、採り過ぎに注意が必要である
▲「ブナの女神」との再会
まるで「女神」のような顔をした神々しいブナ
思わず手を合わせて、「母なるブナ」に感謝を捧げたくなる神木である
この神木に出会うと、ラッキーな人生になるような気がする
珍しく、サワモダシ沢の倒木にナメコが生えていた
急斜面を下って沢に降り、撮る、採る
アップダウンを繰り返しながら、ブナの尾根筋を下る
▲美しいブナ林が続く ▲老木の幹に着生したムキタケ ▲ムキタケを採る
▲ナメコの大群生
「ブナの女神」と出会ったご利益が、早くも現れた
この倒木のナメコは、下側に群生している
何度も眺めているはずの倒木であった

沢から見上げても、対岸の斜面から遠望しても、この群生は死角になって全く見えなかった
「ブナの女神」を経由し、上の斜面から下ってきて初めて発見できた
これは「ブナの女神」のご利益としか言いようがない・・・我々の人生も上り坂になれば良いのだが
斜面は垂直に近く、写真を撮るにも、ナメコを切り取るにも大変な難所だった
こんな場所にナメコが群生するのも珍しい
上側は幼菌、下側は傘が開いた成菌・・・いずれも旬のナメコであった
清冽な小沢で水を汲み、お湯を沸かして昼食とする
絶景を眺めながら食後のコーヒーを飲む
さて、これからどこへ向かうか

対岸は直射日光を受けて、黄葉も一段と美しい
ちょっと下り、対岸の小沢を上って、新しいナメコ採り場の開拓に向かう
錦繍のブナ林をゆく
北斜面の黄葉は淡くくすんで見えたが、南斜面の黄葉は、一際美しい
一般に黄葉の美しさは、@夜間の冷え込み、A大気の乾燥による地中水分の減少、
B直射日光・紫外線の強さで決まるという

つまり、南斜面は直射日光が強いから色鮮やかな黄葉になるのであろう
上の写真は、沢の標高450mから高度約100mほど上った南斜面のブナ林である
▲錦繍の森・ブナ
急峻な小沢を落差100mほど上ると、平坦なブナ林の台地に辿り着く
直射日光を浴びたブナ林は、まるで森全体が炎立っているように見える

キノコを探しながら、錦繍を織るような森を彷徨う
その風景は、遠く対岸から眺めた風景とは明らかに異なっていた
森の中からまばゆい黄葉を間近に見上げると、異次元の世界に迷い込んだような夢心地になる
▲サワグルミ林とムキタケ
一帯は平坦で四囲から湧水を集めて、小川が蛇行するように流れていた
この湿地帯は、サワグルミの林になっていた
サワグルミの倒木や立ち枯れ木には、ムキタケが目立つ
サワグルミの立ち枯れ木に群生したムキタケを採る
この湿地帯を抜けると、再びブナ林が現れる
▲ブナの倒木に生えたナメコ成菌
ナメコに強い光が当たると、ブナの黄葉のように炎立って見えるから不思議だ
傘の黄金色は、ブナの黄葉と極めて似ていることに気付く
ナメコは、まるで「倒木ブナの黄葉」と形容したくなる光景だった
▲巨木に生えたムキタケ
一帯は、ムキタケの菌ばかり・・・仲間は、重くかさばるムキタケに飽きてきたようだ
私は、ナメコを探すべく、湿地帯を抜けて斜面のブナの森に向かった
▲数百年ブナの倒木
ブナの森は、平坦なサワグルミ林を取り囲むように、広がっていた
斜面を徘徊していると、寿命尽きて倒れたばかりの巨木が目立つ
倒木を丹念に探ると、まばらではあるが、ムキタケやナメコの幼菌を確認

恐らく二、三年後にはナメコ&ムキタケの大発生が期待できるだろう
ここで、ムキタケ採りに飽きた仲間は、「帰る〜」と叫ぶ声が聞こえた
私は一人、来年以降のデータ集めと黄葉の撮影をしながら森を彷徨う
黄緑、黄色、黄金色、金茶色・・・色彩交響曲を奏でているような黄葉の氾濫
西日を浴びて、黄葉が鋭く燃え上がる
樹幹を渡る風、微かに聞こえる沢の音が不思議な旋律を奏でる
▲秋晴れの空を黄葉が突き刺す
カサカサと森を舞う落葉
見上げては、「死」と「生」を永遠に繰り返す命の循環を想う

足元を何かが飛んでいった
止まった低木を見ると、小さなミソサザイだった
私同様、ミソサザイも嬉しさを隠し切れず、尾をふりながら「ツィツィ」と美声を発していた
▲数百年ブナの倒木に、まばらではあるが顔を出したムキタケとナメコ
来年以降に期待できるシグナルだろう
位置と場所を頭にインプットしながら森を歩く
落葉を踏みしめ、錦繍を愛でながら歩いていると、至る所にナメコの気配を感じた
右の写真は、苔むす数百年ブナから顔を出したナメコの幼菌
緑の苔と枯葉が、ナメコの可愛らしさを一層引き立ててくれる
カメラ好きには、たまらない風景が続く
黄金色のドレスをまとったブナを見上げては、シャッターを押す
右の写真は、平坦な湿地帯から流れ込む小沢の滝頭
人智を超えた美の世界・・・西日の逆光を浴び、まるで苔生す庭園のように美しい
ブナの極相林は、空間が広く、降り積もった落葉が心地よい
散歩するには、これに勝る森はないであろう
さらに、優秀な食菌・ナメコの群生に出会えるからたまらない

ナメコが生える倒木は、決まって落葉の斜面に伏している
気難しいナメコを象徴している風景でもある
落葉の絨毯に座って、ナメコ採り開始・・・一人だと、背後が気になった
というのも、このブナの天国は、クマが最も好む場所でもあるからだ
二年ほど前、この高台で親子グマに遭遇し吼えられたことを思い出す

キノコの楽園は、クマにとっても楽園なのである
マタギの文化は、こうした豊穣の森・ブナをベースに生まれたのもうなづける
青空に映える錦繍の美と倒木に目を奪われ、帰るべき小沢を見失ってしまった
気付けば、遥か上流まで遡ってしまった
緩い斜面を下ると、対岸の絶壁から白糸の滝が見えた
▲晩秋の「岩魚」
「イワナは、アユやヤマメより上流にすむ。
深山仙境の渓流に踏み込まないとお目にかかれないので゛谷の精゛ともいわれてきた。
眼光は修行僧のように鋭く、気質はたけだけしい」(「天声人語、自然編」辰濃和男)
▲イワナが棲む深山仙境のテン場
イワナ釣りならいざ知らず、キノコ採りで深山仙境に泊まる者は皆無に等しい
だから、いつも静かなキノコ宴会を楽しむことができる
しかし、稀に日帰りのキノコ採りの人たちと出会うと、「イワナ釣りか?」と誤解される

これには、いつも閉口させられる
イワナに生かされてきた人間なら、そんな馬鹿なことはしない
下界の常識と山釣りの常識の落差に、いつも驚かされる
▲寒い晩秋ほど、焚き火の有難さが身に沁みる ▲釣りバカ・ダマさんは、持参したタコを切る
▲炎立つ焚き火で2010最後のキノコ宴会
決して仙人にはなれないが、仙人になった気分を味わうことはできる
それには、イワナ遊ぶ源流に勝る場所はない 
EOSkissX3に三脚を据え、シャッタースピードを8秒にセット
シャッターぶれには、ケーブルレリーズRS-60E3を使って撮影する
焚き火のはぜる炎が、花火のように美しい軌跡を描く
ブナの極相林を眺めていると、人間社会の貧しさが透けて見えるような気がする
「どうして僕らはこんなに慌しく、こんなに命を無駄使いして生きねばならないのか・・・
生活は、諸君が一番富んでいる時に、一番貧しくみえるものだ」(ソロー「森の生活」)

「裏を見せ/表をみせてちる/もみじ」(良寛)

どんなものにも表と裏がある
表は富んでいるように見えても、裏は貧しい場合が多い
たとえ表は貧しく見えても、裏は富んでいることも少なくない
▲焚き火は、心身ともに暖かくしてくれる

「人間はいつまでも生きていられるわけではない
どうして成り行きに任せないのだ/あたふたとどこへ行こうというのだ
富貴は自分の望むところではない/かといって仙人になれるわけでもない

天気の良い日は一人で散歩し/杖を突き立てて草刈をしたり
東の丘に登っては静かにうそぶき/清流の傍らで詩をつくる
このまま自然の変化に身をまかせて死んでいこう

与えられた天命を楽しめば、何のためらいがあろうものか」(「帰去来の辞」陶淵明)

深山仙境に棲むイワナの魔力にとりつかれ、北海道から山形まで彷徨い続けた
竿を捨て、キノコ採り専門に歩いて10年・・・目からウロコが落ちた
追い求めていた心の桃源郷は、マタギ発祥の地、わがふるさとAKITAにあった

イワナ釣りを始めて31年、山釣り人生25年・・・随分遠回りしたものだと想う

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