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東北の元気回復プロジェクトその3
二日目の朝・・・沢の流音と鳥の囀りで目が覚める
世俗から遠く離れた別天地・・・焚き火の傍らに座り、お湯を沸かす
芽吹きが始まったブナの森と美渓を眺めながら飲むコーヒーは最高に美味い

今日は、どこへ向かうべきか
左足の調子は依然として悪く、上流に釣り上がるには無理がある
仲間とは別行動をとるしかない・・・春の陽射しにまどろみながら、単独で下流に向かう
沢通しに下れば、イワナは人影に驚きエサを追わなくなる
右岸の高台に上り、笹藪をかき分けながら下る
斜面には、イワウチワの大群落が連なり、まるで花の桃源郷を歩いている気分に浸る

ゴルジュ始点には大きな滝が懸かっている
崖を降り、草花たちを撮影しながら、沢を横断・・・左岸の高巻きルートを辿る
▲エゾエンゴサク ▲シラネアオイ・・・花はまだツボミ ▲オオサクラソウのツボミ
本日のメインポイント、ゴルジュに懸かる滝壺下流に降り立つ
身を切るほどに冷たい雪代水は、ゴルジュ帯の両岸壁に轟音を響かせながら走り下る
イワナの滝壺に近づくと、冷たい空気は凛として身震いするほどの興奮を覚える

滝壺は、雪代水で煮えたぎり、左右のポイントは物凄いスピードで渦巻いている
ハリスにガン玉3Bを2個付けて、右の渦巻きに乗せてエサを底に送り込む
読んでいたポイントまで達する前に、いきなり「ガツン」ときた

竿は水面に没するほどの強い引きに、一瞬たじろいでしまった
気を取り直し、強引に水面まで引き寄せ、サイズを目視・・・
尺物に間違いない
引き抜くのは無理・・・下流の浅瀬へと引きずり込む
キラキラと輝く清流に泳がせ、イワナの撮影を楽しむ
しかし、野生のイワナは、簡単に降参しない
逃げようと必死で暴れ回る・・・連写するも、なかなか構図が定まらない

それでも清流に踊るイワナは、被写体として一級品である
▲1匹目・・・30cm ▲2匹目・・・9寸余 ▲3匹目・・・8寸余

この滝壺には、数十尾のイワナが潜んでいる
もう5年以上前になるが、大イワナにハリスを切られたことがあった
イワナの寿命を考えると、あの大イワナは既に大往生したことだろう

釣り上げる度にサイズがワンランク下がっていった
こういう場合、大イワナが掛かる確率はほぼゼロに近い
竿を畳み、ゴルジュに咲く草花を撮影しながら、高巻きルートを戻る
深い谷沿いのブナを見上げると、青空に萌黄色の若葉が映えて美しい
岸辺の岩場には、イワウチワの花の群れ・・・
対岸に目を転じると、鮮やかな紅紫色の花が目に飛び込んできた

もしかしてオオサクラソウか・・・
急いで激流を渡って対岸へ
今年の春は遅い・・・まだツボミかと思ったが、ブナの根の周りを取り囲むように咲いていた
スカートのような大きな葉を横に広げ、「白鳥の湖」ワルツを踊っているように咲き誇る
まだ咲き始めたばかりで、花が小振りだが、数ある草花の中でも最も可憐で美しい
ゴルジュの湿り気の多い岩場は、暗い印象を受けるが、
この花が咲くと、周囲が一変する・・・まさに渓谷の華である

左太ももが不調でなければ、この花に出会うこともなかった
それだけに幸せをもらった気分で、何度もシャッター押す
▲暗いゴルジュの中は、まだ点に過ぎないほど数は少ない ▲ゴルジュ始点・・・比較的日当たりの良い岩場は、咲いている花も多い ▲シロバノオオサクラソウ・・・満開に咲くと白と紅紫色のコントラストが美しい
▲同一場所での「オオサクラソウ満開の風景」(2008年5月上旬)
急崖斜面を紅紫色に染め上げるオオサクラソウの大群落は圧巻である
もう一週間もすれば、暗いゴルジュ区間が最も華やぐ満開の季節を迎えるであろう
開けた渓で2尾釣り上げ、合計5尾
今日のノルマは達成・・・満足して竿を畳む
時計を見ると、まだ11時前だった・・・林床に咲く草花を撮影しながらテン場に向かう

山菜採りに向かった相棒は、既に採り終えて帰ってきていた
採取したシドケは、サイズ毎に分類しヒモで結び、濡れ新聞に包まれていた
作業中のアイコを借りて、収穫の一部を撮影する
▲旬のアイコ(ミヤマイラクサ) ▲湿地を好むミズ(ウワバミソウ)
昼食後、山菜畑沢に散歩兼山菜採りに向かう
天気は最高・・・清冽なマイナスイオンも最高・・・山菜も最高・・・
ただし左足だけは不調で、美しき水のスローシャッター撮影をしながらゆっくり上る
シドケ(モミジガサ)
写真のように茎が太く、まだ葉が開かない傘のような状態が旬と言われている
しかし、モミジのような葉が開いたとしても、美味しいものは美味しい
山菜が出始めたにもかかわらず、気になることが一つだけあった

山猿のように四足で斜面を駆けずり回るスーパー爺さん(山菜プロ)の姿が見えない
彼がいれば、採り分は確実に減るが、いないとやはり寂しい
どうしたことか・・・病気でもしたのだろうか
アイコとシドケは、ほぼ同一時期に生えてくる
絵になる山菜はと言えば、やはりシドケだ
無駄と知りつつ、ついついシャッターを押してしまう魅力がある

シドケの採り方
できるだけ茎が太いものを選び、手で自然に折れるところから折るのがコツ
一本、一本根元をナイフで切り取ると、見た目が美しく後始末も簡単である
ブナの恵み「美しき水」
世界に冠たる白神の名水は、美しき水の代表である
斜面下の岩穴から「ゴォー、ゴォー」と凄まじい音を立てて、森に染み込んだ水が大量に湧き出す
白神の美水は、冷たくマイナスイオン効果も格別に高い
▲美水の煌めき
▲低木類の代表・クロモジの若葉
白神の森は、ブナの純度が極めて高いが、多様な樹種で構成されている
サワグルミ、トチノキ、ミズナラ、カツラ、ホオノキ、ハウチワカエデ、イタヤカエデ、オオヤマザクラなど
背丈が低い低木類では、クロモジ、ヒメアオキ、オオカメノキ、ハイイヌガヤ、タムシバ、キブシなど
▲オオカメノキの白花 ▲サワグルミ ▲桂の黄色い若葉
▲山菜畑沢の収穫「アイコ&シドケ」
アイコとシドケがあれば、その他の食用種には手がのびない
それほどこの二種は美味で、山菜の横綱格である
イワナのイケス
午前中、釣り上げたイワナは全て網袋に入れ、流れに浸しながら持ち帰った
暇つぶしには・・・石を丁寧に積み上げイケスを造って、イワナをはなす

放した直後は・・・イワナが暴れ回り、頭を石に隠すなど、撮影どころではない
静かに30分ほど見守っていれば、必ず落ち着く・・・それまで待って撮影する
できるだけイワナを刺激しないように遠くからズームアップ撮影するのがコツ
 「イワナ/サケ科で、アメマスの陸封型。背部から体側にかけて白っぽい斑点を散りばめている。魚の中では最も上流の冷水域にすむ。ブナ帯の渓流、滝や淵のできるような谷川に生息しているが、源流の、水も少ない小川の砂礫や落ち葉の下にかくれていることも少なくない・・・

 イワナは、水生昆虫をおもな餌にしているが、トンボ、トカゲ、カエル、ムカデなど何でも餌にするという。ブナの木で繁殖していて枝から落ちてくる虫もよく食べるという・・・イワナの多い川のある森は楽しみも多い」(「ブナの森の昆虫と動物」西口親雄)
▲今晩の刺身用イワナ4尾 ▲皮を剥ぎ取る・・・淡いピンク色が食欲をそそる

撮影が終わったら、イケスから旬のイワナを取り出し山魚料理開始
美味しく調理し、ありがたくいただいてこそイワナは成仏する
▲旬の刺身 ▲残りのアラは唐揚げ用
▲中村会長が釣り上げた34cmのイワナ
イワナを主体に上流へ釣り上がったのは、中村会長のみ
予想どおり、春一番の証・34cmの尺上イワナを筆頭に、尺イワナを数本背負ってきた

刺身に使いたいところだが、イケスの生きたイワナの旬にはかなわない
やむなく塩焼きに格下げされてしまった
▲山釣り最長老満77歳の中村会長(昭和9年/1934年生れ)

満77歳になっても、一向に衰える気配なし・・・
野生のごとく山野を駆け巡るスーパー爺さん
「渓の翁」こと瀬畑雄三さんと同じく・・・「こんな爺さん見たことない!」

毎回、初の山釣りは、胸まで届く胴長を履き、平気な顔で山と谷を歩く
一般人なら、山釣りには歩きにくく蒸れる胴長は選択しない
しかし、そんな常識は彼には通用しない

使い古した胴長だが、いくら耐用年数を過ぎようと、決して捨てたりはしない
穴を補修しては使い続ける
こういう人が大多数だとすれば、胴長屋さんは確実につぶれる

今回、十数年も経過した胴長に、大ハプニングが起きた
急斜面を下る途中、あえなく両足ともフェルト部分が剥がれてしまった
それでも諦めない・・・フェルト足袋風に修理し、ピンソールミニで固定し釣り歩く

応急処置程度の足ごしらえは、ハードな山釣りに耐えられるはずがない
それでも壊れては直すを繰り返し、決して釣りも諦めない

二日目・・・
「そんな足ごしらえでは危ないから、大滝より上に行くのは止めた方が良い」と忠告したが・・・
「何しに来たのや、上さ行がねぇば来た意味にゃべ」と・・・一人で上流に向かった

しかし・・・午後4時を過ぎても帰らない
応急処置の胴長を履いた山釣り限界高齢者・・・
だんだん心配が膨らんでくる・・・

午後4時半、尺イワナを背負って帰ってきた
心配するだけ無駄なスーパー爺さん・・・
それにしても・・・この「生きる力」「元気」はどこから湧いてくるのだろうか
▲山の野菜のおひたし
山菜特有の香り、歯ごたえ、うまみを簡単な調理で味わうのが「おひたし」
▲ブナ帯の源流酒場・・・縄文の世界へタイムスリップ・・・ついには酩酊
▲ブナ帯の山菜 ▲ブナ帯の山魚「イワナ」
▲芽吹きの森の中、山菜を採りながら車止めをめざす

「自然に逆らっても勝てない」 「僕たちは、白神の力を信じている」

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