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ベストシーズン到来、タニウツギ、イワナ釣りの極意、タケノコとクマ、タケノコ汁、竹濱さんへのメッセージ・・・
初夏の花・タニウツギは、タケノコとイワナ釣りのベストシーズンを告げる木の花の代表である
先日、またまた竹濱さんから美しい毛バリをいただいた
左足は相変わらず痛むが、竹濱毛バリを眺めていると、無性にイワナを釣りたい衝動がこみ上げてきた

6月上旬の週末・・・単独で秘渓の小沢に向かった
僕は山釣りをはじめて26年・・・
そろそろ「サルでも釣れるイワナ釣りの極意」を語らねばならない年になってしまった
朝4時半、家を出発
秘渓に向かって車を走らせると、朝焼けに染まった絶景が目に飛び込んできた
清々しい静寂の朝・・・ふるさとの山並みが、田植えを終えたばかりの田んぼに映って実に美しい
▲急崖の斜面に林立するミズナラの巨木・・・マイタケの森

秘渓周辺の山と渓谷は、驚くほどミズナラの巨木が多い
しかも、キノコ石と呼ばれる花崗岩が基岩となっている
地元では、マイタケの宝庫として超有名な渓流群が広がっている

ブナ、ミズナラを主体としたブナ帯の山は、もちろんイワナの宝庫でもある
しかし、林道沿いの渓流は、釣り人も多く、スレたイワナに苦戦を強いられる
「足で釣る」の鉄則を忘れなければ、100%釣れる

こんな素晴らしい山が近場にあることの幸せを噛みしめ、杣道を歩く
歩き始めてほどなく、左足太ももに痛みが走る
やはり、完治するには数カ月を要する
整骨院によると、筋肉が硬く伸びなくなって「筋力低下」を起こしているとのことだった

ストレッチが有効とは言っても、筋力が元に戻るわけでもない
思えば、昨年、ハードなマイタケ採りにあけくれ、足の筋肉を酷使してしまった
一転、オフの5ヵ月間、何の運動もせず、怠けていた

忍びよる老化と運動不足がたたったに違いない
痛みをこらえながら山を歩く以外に、以前の筋力を取り戻すことはできないように思う
▲ホウノキ ▲トチの木の花 ▲ヤマツツジ

アップダウンが続く杣道では左足への負担が大きい
途中で沢に下りる・・・清流のマイナスイオンを浴びながら歩くと、やはり気分が爽快となる
しかも、瀬尻からイワナが走るではないか・・・

たまらず、サブザックを下ろし、チョウチン仕掛けに竹濱毛バリを結ぶ
新調した6.1mの竿で「チョウチン毛バリ釣り」を開始
▲毛バリがエラブタに掛ったイワナ

流れの落ち込みに毛バリを投じ、狙った瀬にくるとイワナが水面を割って出た
早合わせは禁物と・・・遅合わせをしたら、物凄い衝撃が返ってきた
竿は弓なりに・・・強引に引き寄せると、毛バリは口ではなく、エラブタに掛っているではないか

テンカラの場合、ガラ掛けする場合も少なくないが・・・
チョウチン毛バリでガラ掛けは珍しいことだった
それでも、今年初の竹濱毛バリに掛った感激はひとしおだった・・・竹濱毛バリに感謝
峡谷に光が射しはじめた・・・気分は爽快
警戒心が強いはずのイワナは、流れに乗って動く竹濱毛バリを本物の羽虫と思い込む
無防備に水面から顔を出し、毛バリを咥えて反転する

瀬尻で流下するエサを待っているイワナが見えた
こういうイワナは、毛バリに貪欲に反応する
思わずしゃがみ込み、羽虫が水面に落下するのを真似て、毛バリをイワナの前方に落とす

すぐさまイワナは毛バリに食らいつく
釣っては、その感激を撮るを繰り返しながら釣り上がる
「サルでも釣れるイワナ釣り」の極意・・・東北編
イワナ釣りの極意は、マニュアル本ではなく、イワナから身体で学ぶほかない
そのためには、まずイワナを確実に釣らなければならない
イワナ釣りの初心者なら、まずエサ釣りから始めるのがベストだと思う

イワナのエサ釣りは、季節や天候に左右されることなく、ほぼ確実に釣れる釣法だからである
しかし、北海道の川では、FFやルアーFが絶大な効果を発揮する

北海道の川は、源流部まで滝が皆無で川幅も広くゆったりと流れる大河が多い
エサ釣りでは、ポイントまで届かず、勝負にならない
できるだけ遠くへ飛ばせるFF、ルアーFの独断場と言って良いだろう

従って、ここでは、東北の山岳渓流釣りを前提に述べる
まず「サルでも釣れるイワナ釣り」を実践するには、釣り場の選定が第一
当然の事ながら、イワナの魚影ができるだけ濃い沢を選定しなければならない

次に、先行者がいれば、どんな名人でも釣果はほぼゼロに等しくなる
警戒心の強いイワナは、人の気配を感じると、決してエサを追わなくなるからだ

楽して釣ろうとすれば、それだけ釣り人の競争も激しく、スレたイワナを相手にせざるを得ない
従って、そんな釣り場では、例えプロと言えども苦戦を強いられる
例えば、イワナ釣り場として、林道沿いの沢などは論外である
まず沢の選定は・・・
林道や堰堤などの人工構造物が一切ない原生的な沢を選択することに尽きる
原生的な沢とは、ブナ、ミズナラ、サワグルミ、トチノキなど、ブナ帯の渓畦林に覆われた渓流のことである
少なくともスギの二次林が目立つような渓流は×

次に、どんな沢ならば入渓者が少ないのだろうか
例えば、沢の勾配がきつく山岳渓流と呼べるような沢、
あるいは下流部に険しいゴルジュや滝が連続するような沢、

車止めから魚止めの滝まで距離ができるだけ長い沢を選ぶことがポイントである
つまり楽な沢ほど釣り人も多い・・・その逆を選択することに尽きる

日帰り釣りの場合は、車止めから釣り場に至るまで、
少なくとも30分〜1時間以上歩かなければならないような沢を選ぶことが肝要である
つまり、イワナは「足で釣る」のが基本中の基本である

間違っても「技術」で釣ろうなどと思わないことである
だから「サルでも釣れるイワナ釣り」と言い換えることもできる

イワナ釣りの初心者ならば、そんな夢の釣り場を選択することは不可能である
だから、釣り場の選定から遡行の安全性を考えると、ベテランの指導は必須だと思う
これは、沢登りや山菜、きのこ採りとて同じである

そんな夢のイワナ釣り場に立ったとしよう
最も注意すべき点は、ポイントへのアプローチである
魚眼レンズのイワナに接近を察知されると、イワナはほぼ100%釣れない

低姿勢で前進、岩や草木に隠れるなど「木化け、石化け」の術が必要である
これは獲物を狙う野生動物が最も得意とする技である
だから、格好は二の次で、他人が見れば「泥棒」のようなスタイルがベストということになる

釣り場の選定、ポイントの見極め、アプローチ、足で釣る原則を忘れなければ、イワナは間違いなく釣れる
後は、ひたすら経験を積み重ねるのみ

春から秋まで場数を踏み、季節毎に変化するイワナの食い筋、
定位する場所を身体で徹底的に覚えることである
それを身体で覚えてしまえば、イワナを自在に釣れるようになる

つまり、第三者から「釣りバカ」と呼ばれるようにならないと、一人前の釣り師にはなれない

一人前のイワナ釣り師になるためには、釣りの年数は何の意味もない
どれだけ場数を踏んでいるかで決まる
次なる楽しみは、疑似餌の代表・毛針釣りに挑戦してみこることである
  ▲ズダヤクシュ ▲タケノコ・・・帰りに採ることに
▲ダイモンジソウの若葉 ▲ヤマワサビ ▲オオバミゾホオズキ・・・咲いているのは数個のみ

当たり前のことだが・・・
毛針釣りもエサ釣りと同様、イワナの食い筋に流さないと決して釣れない
つまり、毛針釣りは、針先に本物のエサではなく、疑似餌に代わっただけのこと・・・
何も難しく考える必要はない
初夏ともなると、羽虫が盛んに飛び交うようになる
初夏は、イワナ釣りのベストシーズンだが、エサから毛針に切り替えると、
凝り固まった釣法に衝撃を与える・・・そして革命的な進化を経験するであろう

釣り師であれば、疑似餌でイワナを釣る快感は、病み付きになるほどオモシロイ
毛針と言えば、テンカラとFFが代表格・・・

しかし、山岳渓流のイワナに限れば、障害物を回避し、
長いラインをイワナの食い筋に正確に振り込むことは至難の技・・・
長年の経験と技術を要する。従って、イワナを釣る前に諦め、敬遠する人も多い。
「サルでも釣れる毛針釣り」はないか・・・・ある・・・
エサ釣り用の仕掛けに毛針を結ぶだけと考えれば、誰でも簡単に毛針釣りができる
「チョウチン毛針」は、まさにエサ釣りの延長戦上から生まれた釣法である

それだけに毛針釣りの初心者には、最も適した釣法といえる
いや、むしろ障害物の多い山岳渓流釣りに最も適した釣法・・・
それが「チョウチン毛針」である
何度も言うが、イワナを確実に釣るには、格好やスタイルは二の次である
スポーツフィッシング、ゲームフィッシングなどと言う俗世の言葉に騙されてはいけない

そもそもイワナは、深山幽谷の山魚である
イワナを追う釣り人は、俗世から遠く離れた非日常の世界がフィールドである
その命の循環の環の中にいる獣的感覚こそ最も重要である

そういう野生の感覚が蘇れば、「サルでも釣れるイワナ釣り」の極意を会得したと言えるだろう
ここで言う「サル」とは、人間が野生のサルになったような獣的感覚を意味している点に注意!
釣り上がるにつれて型がワンランクアップする
これは奥ほど、釣り人が少ない証左であろう
ところが左のイワナがヒットした瞬間・・・「バキッ!」と鈍い音がした

何と新調したばかりの竿先が折れてしまった
チョウチン毛バリは、糸が短い分、強合わせをすると竿への負担が大きい
それにしても、こんなことぐらいで竿が折れるとは・・・

この竿には、「メインターゲット 尺クラスまでのヤマメ、アマゴ、イワナ」とある
使用一回目で折れるとは、どういうことか・・・
最近の竿は、国内メーカーではあるが、外国工場で製造されるものがほとんど

不良品に違いない・・・などと詮索しても、現場では釣りにならない
やむなく、予備竿を出して釣り上がる
▲毛バリを丸呑みしたイワナ・・・丸々と太った魚体に注目(旬の証)

雨は降らない予報だったが、谷がやけに暗くなってきた
ほどなく雨がポタポタ落ちてきた
雨具を着込み、その内側にカメラを忍ばせ釣り上がる

入れ食いは続くものの、撮影には最悪のコンディションになってしまった
美しいイワナが釣れるのは、これからなのに・・・自然には逆らえない
▲竹濱毛バリに美魚が食らいつく

最初、茶系の毛バリで釣っていた
ところが、合わせた瞬間に外れた反動で、手が届かない枝木に引っ掛けてしまった
次に黒系の毛バリに代えて、いつも良型が潜むポイントへ静かに落とす

狙った通り、尺物が顔を出した
毛バリをくわえ、反転したのを見計らって合わせたまでは良かった
思わず力が入り過ぎて強合わせをしてしまった

道糸が短い分、糸に掛る負荷も大きい
見事に空を切り、イワナに黒系毛バリを食われてしまった
強合わせをしなくても、針が鋭ければ掛るのに・・・反省、反省

上の良型の美魚は、その直後にソフトに合わせたイワナである
▲雨の中、最後に掛けた良型イワナ

今回、竹濱毛バリを2個失ってしまった
どんなベテランでも、合わせ損ねてバラしたり、尺物に心が乱れる時がある
そんな時に限って、大事な毛バリを失ってしまう

それでも、エサ釣りに比べると、勝負が早くスピーディに釣り上がることができる
毛バリは、仕掛けがシンプルで、エサを付ける手間不要、針も飲まれることなく簡単に外せる
しかし、合わせによっては掛りが浅く、撮影中に逃げられることも少なくない

今回は、2回、撮影中に逃げられてしまった
幸い、数枚は撮影した後だったので、
「リリースしたと思えばいい」と・・・苦笑いするしかなかった
▲ニリンソウ・・・初夏に咲くとは驚かされた ▲サンカヨウ ▲初夏の花:シラネアオイ
▲オサバグサ・・・縦に鈴なりの白花が美しい ▲タケノコが生える笹藪・・・ブナ帯の林床には笹藪が多く、クマの密度も高い
▲クマがタケノコの皮をむいて食べたばかりの痕跡・・・鈴の音を聞き、クマの方から遭遇を避けてくれたに違いない

ブナとミズナラの森は、イワナ&タケノコの宝庫であるが、クマの宝庫でもある
エゾニューやタケノコを食べた痕跡周辺には、クマ道が至る所にあった
従って、単独で入渓する場合は、クマ避け鈴とクマ撃退スプレーが必携である

僕は、こうした痕跡を見ると・・・ニヤッと笑う
なぜなら、その周囲は旬のタケノコが多いシグナルだからだ
悪いことに雨足が強くなってきた

クマは、曇天や雨の日は、一日中エサを求めて動き回る
でも、ここのクマは、人ずれしていないので向こうから避けてくれるだろう
渓流足袋にピーソールを履き、念のため腰にクマ撃退スプレーがあることを手で触って確認する
▲採り切れないほど生えていたタケノコ

さすがは「クマのレストラン」だ
クマが座ってタケノコを食べた周辺は、旬のタケノコが360度生えていた
心の中で呟く・・・「クマさん、悪いが、俺もタケノコを食べなきゃ命をつなげない」

採っても採っても飽きるほど生えている
採り過ぎると、荷の重さで歩けなくなるばかりか、後処理が大変だ
▲採取したタケノコ

道路近くの笹藪で採る場合は、荷の重さを気にすることはないだろう
しかし、イワナ止め近くの笹藪で採れば、荷の重さに耐えながら数時間も歩かねばならない
だから、決して缶詰にするほど採ることはできない

まして、左足不調では、なおさらのこと
雨の中、イワナとタケノコ、ミズを背負って歩く
しかし、下る途中の笹藪でタケノコを見つけると、ついつい採ってしまう
その度に荷は重くなる
▲タケノコシーズンに生えるキノコの代表・サワモダシの幼菌

タケノコ汁に欠かせないのが、サワモダシ(ナラタケ)である
これを見つけたら、当然採らねばならない
荷が重くなると、左足の激痛はピークに達する

谷は夕暮れのように薄暗くなり、上からは容赦なく雨が降り続いていた
おまけに雷まで鳴り出した
杣道に何度も腰を下ろし、左足太ももをさすりながら自問自答する

「何でこんな辛い思いをしてまで、イワナやタケノコを採らなきゃならないんだ
直売所で買った方が楽なのに・・・」と、下界が恋しくなる
しかし、這うように車止めに着くと・・・「やっぱり、この感激は、お金じゃ買えない」
タケノコを採るのは楽しいが、採り過ぎると後処理に泣かされる
皮に切れ目を入れ、皮をむく・・・穂先を壊さないよう丁寧にむく
まな板にタケノコを置き、包丁で転がしながら硬い所を一つ一つ丁寧に切り分ける

結局、美味しく食べられる量は、1/3以下
腰が痛くなるほど時間がかかる・・・妻はブツブツ文句を言いながら皮をむき続ける
タケノコ、サワモダシ、豆腐を入れ、旬のタケノコの風味を味わう味噌汁でいただく

文句を言い続けた妻は・・・「タケノコ汁、美味い!、美味い!」と連呼しながら夢中で食べる
採りたてのタケノコ汁ほど絶品な料理はない
苦労が報われる瞬間である

何故ブナ帯にクマが多いのか・・・
食べ物が少ない初夏に、美味しいタケノコが生えるからではないか・・・
と思うほど、採りたてのタケノコ料理は、最高に美味い!

だからこそ、この時季、クマとのトラブルやタケノコ採りの遭難が最も多い
その理由は、クマも人間もタケノコの美味さに狂わされるからに違いない
初夏だが、クーラー製ビグで保冷していたから、良型は旬の刺身に
その他は、イワナを二つに切り、唐揚げにする
塩焼き用のイワナは、釣った当日ではなく、新聞紙にくるんで一晩、冷蔵庫の野菜室で寝かす

釣り上げた当日、家庭用のコンロで焼けば、ヌメリで魚体が曲がり、均等に焼けない
新聞紙にくるみ一晩置くと、ヌメリが完全にとれ、姿形も美しく美味しい塩焼きができる
こういう調理法は、何度も失敗しないと分からない

ピンソールの開発者&チョウチン毛バリ師・竹濱さんへのメッセージ

竹濱さんは、震度6弱の地震が2回も襲った北茨木市で被災、さらにリューマチで治療中と聞き、
しばらく「源流のイワナ釣り」に行けない無念さを思うと、 同情の念は禁じえません
僕も左足太ももの筋力低下で通院中ですが、毛バリをいただいた恩返しをするには・・・

痛みをこらえても、竹濱毛バリで野生のイワナを釣ることしかできません
イワナを掛けたら、できるだけ竹濱毛バリをメインに撮ることを心掛けました
また、雨の中、左足不調の状態でタケノコを採る、
あるいはアップダウンが続く杣道を歩くにも、ピンソールに助けられました

帰路は、大雨となり、3時間もかけて、休み休みスローに歩き続けましたが、
鉢巻き姿の竹濱さんの笑顔を何度も思い浮かべて、何とか車止めに辿り着きました
今回のイワナ&タケノコ紀行は、竹濱毛バリとピンソール抜きには語れません

心から感謝申し上げます
リューマチが完治しましたら、ぜひご一緒に秋田のイワナから生きる力、元気をもらいましょう
その日を心待ちにしております・・・「ブナ帯文化 DE 元気に!」
僕たちは、ブナの力を信じている

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