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良型イワナの爆釣、釣りも腹八分、ヤマワサビの効能、醤油漬け、イワナの刺身とワサビ・・・
2012年5月12日(土)、いつものK相棒とワサビ谷に向かった
あいにく異常な低温で、一日冷雨が降る地獄の天候であった
けれども、イワナの活性度は高く、地獄の天候を忘れるほどイワナ天国に酔いしれた

昼になる前に相棒が言った
「飽ぎるほど釣れだぁ、もう止めにゃがぁ」

車止め発6時・・・朝から小雨が降っていた
崩壊した林道を歩くこと約25分、目的のワサビ谷の入口に着く
外は雨、内は吹き出す汗に蒸れて不快なことこの上ない

さらにアップダウンが続く杣道を歩く
GW後半以降悪天候が続いたせいか、萌黄色の新緑はまばらで、殺風景な印象を受ける
谷の冷え込みはきつく、手がかじかむほどだった
早春のイワナ釣り同様、釣り手袋をして釣り上がる
釣り上げたイワナの鮮度を保つために、クーラー式ビグを肩に下げる

内陸部の小谷だが、雪代のピークは終わり、水量は思ったほど多くない
流れの透明度は高く、群れるイワナが丸見えだった
最初は、7寸〜8寸クラスで、アタリも入れ食いというほどのものではなかった
いつものとおり、荒釣りしながら先を急ぐ
イワナは黒いサビもほとんど消えて美しい

雨のため、谷の風景や草花の撮影は断念
イワナ一点に絞って、釣り上げたイワナだけ撮影しながら釣り上がる
ちなみに目についた花は、ミズバショウ、ショウジョウバカマ、エゾエンゴサク、キクザキイチゲ、エンレイソウ、バッケ・・・
釣り手袋は、指先三本が自由に使えるように露出している
気温は推定5〜6度と低く、冷雨で指先の感覚がなくなるほど寒い
それでも釣り上がるほどにイワナのサイズもアップ、イワナの活性度はすこぶる高い

もはや技術は不要・・・イワナが勝手に餌に食らいつく感じで釣れてくる
改めて寒さに強いイワナの習性を感じた
エサ釣りなら、針を喉の奥まで飲まれることなく、口元に掛けるように合わせるのがベストである
しかし、活性度が異常に高くなると、9号のでかい針でも簡単に胃袋まで飲み込まれてしまう
今回は、イワナに心を乱され、針を飲み込まれるケースが続出した

市販の針外しは、皮の堅い胃袋まで針を飲み込まれてしまうと、簡単には外れない
こういう場合は、木の棒の先を削った自作の針外しが威力を発揮する
K相棒は、その自作の針外しを使用・・・いとも簡単に外していた
▲シドケ  ▲ヤマワサビ
▲ゴーロ連瀑帯の滝壺深くに潜むイワナは、今だ全身黒くサビついている
▲雪代に磨かれた幽谷の美魚
▲9寸クラスのイワナ

ワサビ谷は、上るにつれて傾斜がきつくなる
巨岩を積み重ねたような階段状のゴーロ連瀑帯が続く
その階段状に連なる滝壺や釜の左右の巻き込みが主なポイント

降り続く冷雨のお陰で、イワナは無警戒に餌を追った
釣り上がるにつれて、サイズもワンランクアップ、
8寸〜9寸クラスの良型イワナが竿を絞り続けた
悪天候の場合、スピーディな釣りと撮影を両立させるには、コンパクトデジカメを選ぶほかない
しかし、残念ながら画質は劣り、メモ的な撮影にならざるを得ない
それでも撮らないよりは、後日の楽しみが広がる
ゴーロの階段の終わりを告げる滝壺・・・
いつも尺前後の良型イワナが潜む好ポイントである
ちょうど岩に隠れて見えないが、尺近いイワナを釣り上げ、右手でイワナを野ジメにしている所だ

相棒も良型イワナの爆釣に狂わされているようだ
「いや〜、イワナの型もえな・・・これだば、寒さも忘れる」
▲9寸余りのオスイワナ

何度もイワナを釣っていると、針の塗装が剥げ落ちてくる
ハリスもパンチパーマがかかったように弱って来る
こんな時、針を代えないで釣り続けていると、イワナにハリスを切られてしまう危険がある

頭で分かっていても、雨の中では面倒臭くてそのまま釣り続けてしまう
これまで、そんな愚かな対応で何度逃げられたか知れないのに・・・
右から小沢が流入する上二又・・・
枝沢が合流する地点のポイントは、尺物が期待できる最大のポイントだ
狙い通り、尺イワナが掛った

弱っていたハリスが心配で、一気に陸の上に抜き上げると・・・
ハリスは切れて、雪が解けたばかりのイチゲ群落に落ちた
間一髪、逃げようと上下にパウンドを繰り返す尺イワナを手で押さえる
今回は、何とか逃がさずに釣り上げに成功した
残雪の上に置いて撮影すると、全体的に黒っぽくサビが残っているのが分かる

ワサビ谷のイワナの特徴は、この尺イワナが象徴するように
斑点の着色は薄いが、腹部の着色は濃い柿色に染まっている点である
源流部は残雪が目立ち、マンサクの花が咲いていた
もう5月中旬になるが、源流部はまだ早春の季節であった
まだ魚止めまで先が長いが、ここで二人ともイワナ釣りに飽きてしまった

イワナ釣りは、ついついもう一匹という誘惑に勝てず、谷の奥まで釣り上がるのが一般的だ
なのに釣れ過ぎると、釣りたい欲が完全に失せることがある
今日のイワナ釣りは、まさにそんな釣りの一日だった
イワナ釣りは、例えいくら釣れたとしても、サイズが小さければ不満が残る
しかし、良型イワナが爆釣ともなれば、不思議と釣欲を失ってしまう
それは何故なのだろうか

しいて言えば、生き物である限り「満腹」になれば、食欲を失う例に似ているように思う
「釣りも腹八分」・・・
やはり、釣りは、ほどほどに釣れてこそオモシロイ
 ヤマワサビは、傾斜がきつく、きれいな水が湧いているか、斜面のすぐ下に伏流水が流れているような湿っぽい場所に群生する。清流のシンボル・ワサビが優占する沢は、一般的にイワナの魚影も濃い。つまりワサビ谷は、イワナ谷でもある。
▲ヤマワサビ畑

ヤマワサビの旬は、白い花が咲く前と言われる
できるだけ花がツボミ状態の若芽を選んで採る
根はイワナの刺身用に太いものを数本採り、後はナイフで根際から刈り採る

ヤマワサビの醤油漬け
▲葉と茎は根際から切り、よく水洗いする ▲食べやすい長さにザク切りにし、軽く塩を振ってもむ
▲熱湯をかけた後、さっと冷水に浸し水気を切る ▲フリーザーパックに入れ、万能つゆを注ぎ、冷蔵庫の中で冷やしながら漬け込む

▽ヤマワサビの効能・・・ワサビは薬草でもある
老化防止、がん・動脈硬化予防・・・中部大三輪教授は、辛み成分が老化防止やガン、動脈硬化などを引き起こす酸化ストレスへの抵抗力を向上させることを米国の科学誌に発表

脳細胞の再生・・・名古屋市立大学岡嶋教授らは、辛み成分が脳の神経細胞の再生を促し記憶力や学習能力を改善させる効果を実証。認知症予防や血管拡張、骨密度強化など多彩な効能がある。

その他強力殺菌、骨増強、下痢止め、抗虫、食欲増進などの効果がある

▲太い根はビケ根をとり、皮を包丁の刃先で削り落としてからおろす ▲ホンナとシドケ

▽ワサビのおろし方
ヤマワサビは、根の先端部分が黒く固い
元の方は太く新鮮で、粘りも強く緑色もきれいである
故に、太く新鮮な元の部分からすりおろすのがベスト
▲9寸〜尺イワナの刺身とヤマワサビ

この天然づくしのイワナの刺身を食べたいがために、寒さをこらえて釣りに出掛けた
粘り気抜群のヤマワサビは、イワナの薬味に最高である
脇役としてヤマワサビを一株添える

身が締まった赤味の刺身に、ワサビの緑が良く似合い食欲をそそる
この天然づくしの一品を肴に熱燗を飲めば、日常のストレスも吹っ飛ぶ
それが私にとって最大の効能である

釣りの一日を振り返って思った
イワナが飽きるほど釣れる沢は、
日本中探しても、そうざらにあるものではない


釣り人なら誰しも、年に一度くらいは飽きるほど釣る夢を見るであろう
その夢を叶えるには、釣り人の技術ではなく、「イワナの楽園」を発見するほかない
そんな夢のようなイワナ釣り場が、近くにある幸せに、まず感謝しなければならないと思う

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