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春告げ花、サビイワナ、クマの足跡、ギョウジャニンニク、カタクリのおひたし、バッケ味噌、山の幸定食、近況報告
例年ならイワナの初釣りは4月初旬・・・
しかし、昨年と同じく今冬も大雪で、4月中旬まで待って出陣した。
なぜならイワナ釣りをメインに、早春の草花の撮影や山菜も一緒に楽しみたいからだ。

故に私たちのイワナ釣り解禁日は・・・
雪解けが最も早い渓流に、春告げ花たちが一斉に咲く季節と決めている。

▲雪解けの早い海岸部の林床には、カタクリ、キクザキイチゲが咲き始めた

 秋田の渓流解禁日は、3月21日・・・昔はイワナ釣りの儀式のように解禁日には必ず出掛けていた。ある日、できるだけ奥の釣り場をめざして、分厚い雪に足をとられながら1時間ほど歩いた。まもなく竿を出そうかと思った、その時、猛スピードで走ってきたスノーモービルに簡単に追い越されてしまった。

 イワナは先行されるとほとんど釣りにならない。挙句の果てに、帰路、緩んだ雪に足をとられ地獄の雪中行軍を強いられた。雪の斜面をゆうゆうと走り回るカモシカにも馬鹿にされた。以来、渓流解禁日の出陣は、中止になったままである。
 4月16日、午前5時前、K相棒と早春のイワナ沢に向かった。林道に入ると、昨年より雪は少なく、残雪に車の跡や真新しい釣り人たちの足跡があった。例年初釣りは、その年の一番乗りで「サルでも釣れるイワナ釣り」を楽しんできたが、今回は、その一番乗りを逸してしまった

 林道をしばらく歩き、巨岩が積み重なったゴーロの上流部をめざす。ブナの根回り穴が美しい紋様を描く斜面を駆け下り、待望の渓流に降り立った。
 前日まで曇りの予報が一転、好天に恵まれた。けれども釣りは苦戦が続いた。竿を出してから二人とも、しばらくアタリなし。イワナは、明らかに釣り人を警戒していた。稀に釣れてきても、リリースサイズの7寸以下が主体であった。
▲腹部が柿色に染まったニッコウイワナ

 S字カーブの小滝の滝壺・・・K相棒に待望の良型イワナが掛かった。私に初のキープサイズが出たのは、カーブ地点の深淵であった。食いが鈍いので慎重に遅合わせをしたら、喉の奥まで呑まれてしまった。それが上のイワナである。
 昨日釣られた釣り場は、どういうふうに攻めればいいのだろうか。結論から言えば、場荒れした区間は飛ばし、とにかく源流をめざすしかない。つまり、「技術」ではなく「足で釣る」戦術に徹することに尽きる。荒釣りしながら、釣りの空白地帯を探し足早に釣り上がる。
▲白い斑点のアメマス系イワナ
 雪が解けたばかりの河原に、春の陽光を一杯に浴びてバッケがたくさん咲き誇っていた。イワナ谷にも遅い春がやってきたことを実感させてくれる。この早春の香りを味わいたくて、ツボミ状態のバッケを選び、手でひねりながら採った。
 延々とザラ瀬が続く源流部、残雪も深い・・沢に降りてから約1.5kmほど釣り上がると、イワナの食いもサイズも8寸前後と劇的にアップした。それは、やっと釣りの空白地帯に達したことを意味していた。しかし、魚止めまでわずか1kmほどしか残されていない源流域であった。
▲早春を象徴する黒ずんだサビイワナ

 厳冬期になると、イワナは深場でじっと動かず、仮死状態で越冬する。故にイワナの体色は、冬から早春にかけて黒ずんでいる。釣り人は、この黒く墨を塗ったような体色を「サビ」と呼んでいる。雪が解け、雪代の洗礼を受けると「サビ」は消え、美しいイワナに変身する。
 先行していた相棒を追い掛けていくと、上二又に達した。二又合流点は絶好のポイント・・・相棒は9寸余りのイワナを釣って満面の笑みを浮かべていた。二又にサブザックを置き、まず右の沢に入る。
ブナの根周り穴

 右の沢は、水量が少なく雪も深かった。右の岩場から湧水が滴り落ちる絶好のポイントは、張り出した枝が邪魔で振り込めない。仕掛けを1.5mほどのチョウチン仕掛けにして、枝の下に竿を伸ばしながらブドウ虫のエサをポイントへ誘導していった。しかしその途中で気付かれたのか、イワナに走られてしまった。
 わずか一尾ほど釣ると、谷は分厚い雪渓に埋め尽くされていた。やむなく竿をたたみ、左の沢に入るべく深雪の谷を下った。
▲深雪の谷を下る 冬眠から覚めたクマの足跡
▲沢に向かって下ったクマの足跡 ▲沢から山に向かって歩いて行ったクマの足跡
 左の沢は、日当たりが良く雪解けも早い。右の沢より水量が多く、ポイント毎に良型イワナが竿を絞った。二人とも釣りに夢中となる。終わってみれば、30匹入りのブドウ虫が残り少なくなるほど釣っていた。
▲魚止めの滝

 数多く釣ったハリスは相当弱っていた。けれども、ハリスを一度も代えることなく魚止めを迎えた。左の壺に振り込み、底を探ると、ほどなく竿は大きな弧を描いた。大物か・・・と思ったが合わせるとハリスが簡単に切れてしまった。

 面倒くさがらず、こまめにハリスを交換すべきだったと反省・・・けれども、リリースしたと思えば心も軽くなる。ものは考えようだ。
 気が付けば歩き過ぎて老体はヨタヨタ状態・・・12時半、二又に戻って昼食。オニギリ、漬物、甘納豆、パン、熱いカップラーメン、コーヒーを飲み、1時間ほどかけてエネルギーを充電した。けれども帰りの上りは、足が上がらなくなるほど疲労困憊してしまった。

 お蔭で車止めまで二時間たっぷり掛かった。今日一日歩いた距離は、10km弱に及んだ。
 林道を車で下る途中、カタクリ畑でおひたし用のカタクリを摘む。そしていつものギョウジャニンニク畑に向かうと、ちょうど食べ頃のギョウジャニンニクが生えていた。二枚葉を選び、根を残すようにハサミで切り取りながら採取した。
▲旬のギョウジャニンニク
 車で林道を下る途中、サルたちに出会った。サルの群れは、早春植物やブナの新芽を求めて海岸から100m足らずの地点まで下がっていた。これからブナの芽吹きとともに上流に向かって移動していくことだろう。雪国の春は、サルたちにとっても、待ち焦がれた季節である。
▲ギョウジャニンニクを油炒め用に切る ▲豚バラを炒めた後、ギョウジャニンニクを入れて炒め、万能つゆなどで味付けする
ギョウジャニンニクと豚バラの油炒め カタクリのおひたし
バッケ味噌

▽バッケみその作り方
 よく水洗いし熱湯で色好くサッとゆでる。冷水にさらし、ザルに上げる。よく水分をとり、細かく刻む。フライパンに油を熱し、味噌、砂糖を入れて練る。刻んだバッケを入れて、ざっと混ぜる。
山の幸定食のメインディッシュ「イワナの刺身&塩焼き

 半年ぶりの山の幸定食で熱燗を飲めば、極楽、極楽・・・一日の苦労も疲れも吹っ飛び、心身ともにリフレッシュできる。これは決してお金で買えない妙薬である。だから何歳になろうとも、足が動く限り、山に向かわざるをえない。
近況報告「美しき森と水の郷あきた(仮称)」

 現在、「あきた森づくり活動サポートセンター」のホームページを作成しています。「特集記事」として「美しき森と水の四季」、「森と水の恵み・山菜図鑑」「山村の文化」について編集、もちろん「森と水の恵み・イワナ編」も編集を予定しています。

 本題の「森の学校」や森づくり活動などについても、こまめに取材編集し、写真を中心にタイムリーな情報発信に努めていきたいと思います。新ホームページのアップの際には、当HPでお知らせしたいと思いますのでご期待願います。

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