超渇水のイワナ谷、雨は釣り人の味方、泣き尺、クマとタケノコ採り、特製タケノコ汁、イワナ遊ぶ桃源郷 |
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6月に入ってからほとんど雨らしい雨が降っていない。 しかも6月10〜14日は、30℃を超える真夏日が5日間も続いた。 超渇水・・・イワナたちは大丈夫だろうか。 やっと雨の予報(梅雨入り)があった。 それは「釣れる釣り日和」のサインでもあった。 |
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梅雨入りとなった6月18日、急きょイワナ谷に向かった。 忘れかけていた竹濱毛バリの感触とタケノコ採りが目的であった。 朝から小雨が降り続いていたが、イワナ谷は超渇水状態であった。 時折、大粒の雨がシャワーのごとく降ったが、増水する気配はゼロ。 山は相当乾いていたのだろう・・・いくら降っても山に浸透するだけであった。 |
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エサ釣りからいきなり毛バリに切り替えると、毎度のことだが・・・戸惑う。 特に超渇水ともなれば、流れがほとんどないから、毛バリを流れに乗せて釣ることはできない。 つまり、エサ釣りと同じ感覚の毛バリ釣りは通用しない。 毛バリは疑似餌・・・毛バリに動きを与え、食い気を誘う操作が必要である。 その毛バリ釣りの感覚を思い出すのに、やたら時間がかかった。 イワナに走られたり、浅い掛かりで落としたり、果てはイワナに無視されたり・・・何とも情けない。 |
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そんなヘボな毛バリ釣りでも、雨は大きな味方になってくれた。 階段状の壺は、渇水で止水状態・・・接近する釣り人はイワナに丸見えだった。 大粒の雨が降れば水面は波立ち、釣り人の姿を消してくれる。 毛バリを水面に垂直に落とし躍らせると、波立つ水面を割ってイワナが飛び出した。 ラインを緩め、一呼吸おいて合わせる。 雨の日は、毛バリが見えにくい。 けれども、イワナにとっては本物の羽虫に見えるらしい。 どんな釣り方であっても、釣れると、不思議に毛バリ釣りの感覚が蘇ってくる。 釣りとは、釣法を問わず、釣れることが何よりの妙薬である。 |
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釣り上がるにつれて、イワナのサイズはアップ 8寸から9寸前後・・・丸々太った良型イワナが小雨の谷に踊った。 時折、浅い掛かりで流れに落とす場合もあったが、それはイワナの勝ちと相手を称賛すればいい。 残念なのは、雨でカメラがなかなか出せなかったこと。 撮影しては、カメラ用の布袋に包み、防水袋に入れてからザックに背負わねばならなかった。 季節を表す草花一輪さえ撮ることができなかった。 ちなみに、谷に咲いていた花は、オオバミゾホオズキ、ミヤマカラマツソウ、ヤグルマソウ・・・。 |
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超渇水の壺では、瀬尻でエサを待つイワナが丸見えだった。 特に9寸以上のサイズになると・・・思わずしゃがみ込み、「大きい」とつぶやく。 そっと竿を伸ばし、イワナの目の前に毛バリをソフトに着水させる。 すぐさまイワナは水面を割って毛バリに食い付く。 合わせると、竿が弓なりなって震え、丸々太ったイワナが踊り出す。 河原で上下にバウンドするイワナを手元に引き寄せると、不思議な快感が全身を貫く。 |
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▲泣き尺のイワナ 右手から小沢が合流する地点・・・いつも尺イワナが釣れる好ポイントだ。 落ち込みに毛バリを振り込む・・・全く反応なし。おかしい・・・ 再度振り込むものの反応なし・・・壺の中央を見ると、イワナの黒い影が見えた。 その目の前に毛バリを落とし、動きを与えると・・・ 黒い影が毛バリめがけて浮上するのが見えた。 イワナが毛バリをくわえて反転したところで合わせる。 竿は弓なりになり、久々にズシリと重い・・・慎重に水面を引きずりながら取り込む。 黒いサビはなく、丸々太った美白のイワナであった。 計測すれば29.5cm・・・残念ながら尺には届かなかった。 |
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最初と二回目、共にイワナが反応しなかったのは何故か イワナは、毛バリが食い筋にこないと食い付かない。 さらに止水では、毛バリに動きがないと食い付かない。 この二点に尽きるだろう。 |
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しばらく雨が降らず渇水が続いた。 源流部の細い流れ・・・点在する石には、苔や水辺を好む植物がびっしり生えている。 沢沿いのエゾニュウやフキは、クマに食われてなぎ倒されていた。 笹薮を覗けば・・・クマが先ほどまで食べていたようなタケノコの残骸が至るところに散乱していた。 クマは、明らかに沢沿いに集中してエサをあさっている。 クマの密度の高いイワナ谷は、クマ撃退スプレーを腰に下げていないと、一人じゃ歩けない。 |
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雨が止んだのを見計らい、バックからカメラを取り出し、撮影する。 しかし、すぐに小雨が降り出すので、面倒だがバックに背負う。 やがて鳥が鳴き出し、森の中を霧が流れ始めた。 カメラをバックから取り出し、首に下げてゴアテックスの雨具の中に入れてみる。 雨具の内側は、既に雨と汗で濡れていたから、カメラが曇りはじめた。 慌てて、カメラを首から外し、バックに背負うしかなかった・・・残念! |
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▲丸々太った旬のイワナ 荒釣りしながら魚止めをめざす。 雨がやむと、今度は風が出てきた。 そして、またしても雨・・・急ぎ足で魚止めまで駆け上がった。 |
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魚止めは、明確な滝壺はない。 渇水で尺イワナが潜むには、浅すぎる感じだ。 竿を出さず、浅い壺を覗くと、小イワナたちが数匹走った。 写真を撮ろうと、対岸に渡った・・・すると足元を尺イワナが駆け抜けていった。 何と、右岸の流れが全くない浅瀬に潜んでいたようだ。 苦笑いしながら竿をたたむ。 |
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急いで魚止めまで駆け上がったのには理由がある。 それはイワナではなく、タケノコを採るためである。 中下流部の笹薮は、みな長刀のように大きくなって食用には不適であった。 標高の高い源流部は、遅くまで雪が残っている。 故にまだ食べ頃のタケノコが生えていた・・・しかし、獣の匂いがプンプン クマが食べたタケノコの皮が散乱していた。 「クマさん、邪魔して悪いな」とつぶやきながら、今晩のタケノコを採る。 上からは雨、内からは汗・・・雨に濡れた笹薮を彷徨い歩くのは、むさ苦しいことこの上ない。 さらに汗に群がるブヨ・・・防虫網を頭から被ると、さらに蒸し暑い。 雨の日、クマと競争しながらタケノコを採るのが、こんなに苦しいとは・・・ それでも、採りたてのタケノコ汁を食べたい・・・その一心で採った。 |
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▲タケノコ汁 水分を含んだタケノコは重い。 家に帰ってから、タケノコの皮をむき、硬い節をとって料理に使えるのは、わずかに1/3程度。 本日特製のタケノコ汁は、採りたてのタケノコとミズ、冷凍保存していたマイタケを入れる。 女房は、「美味い、美味い」と連呼しながら食べていた。 やっぱり採りたてのタケノコ汁は、クマじゃないけど最高に美味い。 |
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天然イワナの塩焼きは、釣ったその日ではなく、新聞紙にくるんで一日冷蔵庫に寝かせた方が美味しい。 故に釣ったその日の料理は、刺身か唐揚げが定番。 イワナ釣り&タケノコ採りの夜は、唐揚げ&タケノコ汁で冷酒を飲む。 |
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▲二日目、定番「イワナの塩焼き」で冷酒を飲む イワナの旬は、6月である。 初夏のイワナは、水生昆虫が羽化した直後の成虫や陸生昆虫を盛んに貪る。 ブナの森と水の恵み・・・脂がのって最高に美味い。 初夏のイワナの燻製は、さらに美味しく保存性に優れている。 ただし、持続的可能な釣りを楽しむために、年一回程度にとどめたい。 |
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イワナ遊ぶ桃源郷 「桃源郷」とは、現実には存在しない理想郷、俗界を離れた別世界をいう。 だから「桃源郷」の気分を味わうには、できるだけ日常から遠く離れた場所が望ましい。 けれども、日常から遠く離れて下界を見下ろすほど高い山であっても、人だらけでは話にもならない。 「俗界を離れた別世界」というからには、一日誰とも出会わないような人跡稀な場所が望ましい。 イワナは、そんな「俗界から離れた別世界」に棲む山魚である。 だから、川の最上流・源流部に生息するイワナを追えば、桃源郷の世界を垣間見ることができる。 ただし、「イワナ遊ぶ桃源郷」の世界を発見すれば、人生が狂わされるので注意。 |