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シイタケ、マイタケが生える森、マイタケの成長が早い、最上級のマイタケ4株、憧憬の被写体、サワモダシ
 マイタケは最盛期に入っているが、マイタケよりも人の数が圧倒するほど多い。そんなマイタケ激戦区の山中で、最上級のマイタケに当たった。ミズナラの倒木に生えるシイタケも豊作のようである。ミズナラの立ち枯れ木に生えるマスタケもあちこちに生えていた。また、サワモダシも一部で生えてきたが、爆発的な発生はまだまだ先のようだ。
 秋も深まった9月下旬、久々にマイタケ激戦区に向かった。林道に入ると、前に車が5台も数珠つなぎになって走っていた。ほどなく追い掛けてきた車が3台・・・車止めに着くと、駐車するスペースがないほど車で埋め尽くされていた。軽トラックにバイクや自転車を積んでいる兵も少なくない。天然マイタケ人気の高さには、改めて驚かされる。
 天気は快晴。1時間余り歩き、前回残したキノコ木を回ったが3連休で全て採られた跡だった。その代り、ミズナラの倒木にシイタケが群がって生えていた。 
 開いたシイタケの傘が、押し競饅頭のように群がって生えている光景は珍しい。こんな光景を見ていると、シイタケも豊作に違いない。水分を含んだジャンボシイタケは意外に重く、一カ所で採った重量が約1kgであった。
マイタケが生える森

 ミズナラの巨木が林立する急斜面で、基盤は花崗閃緑岩である。またマイタケが生える根元周辺には草木が少ない。つまり、日当たりが良く通気性、排水性に優れていることが分かる。こうした場所にマイタケが生える。
 歩いた痕跡を見れば、この周辺では期待できないと思い、横にトラバースしたら、ほどなく一株のマイタケに当たった。根元の左下には、サワリの株があった。
▲採らずに残した「サワリ」の株

 これが「サカリ」「スワリ」に成長すれば、最上級の大株になるであろう。それを楽しみに残す。しかし、誰かに採られる確率が高いであろう・・・自然は早い者勝ちだから運を天に任せるほかない。

 いつも不思議に思うのは、こんな急斜面に生えながら、なぜ転がり落ちないのだろうか。その微妙なバランスは、自然の妙としか言いようがない。
 尾根筋に沿って上っていくと、満開に開いた黒のマイタケ3株に当たった。もう少し遅れるとナガレになるスワリ末期のマイタケである。好天が続き、日中は気温が高い・・・マイタケの成長は驚くほど早いようだ。
 マメもあったが、豊作にしては意外に少ない。今年のマイタケは、出だしが良かったが、豊作ではなく、平年作なのだろうか・・・それとも、マイタケより人の数が多いということは、マメやサワリの状態のマイタケも採られているのだろうか。それとも、第二弾はこれから出てくるのだろうか。考えたらきりがない。
 マイタケ採りの人たちは、シイタケは採らないようだ。シイタケだけは、面白いように採れる。少々重いが、天日干しにして保存すれば香りが豊かで、薬効も素晴らしい。紛らわしいツキヨタケも豊作なので初めての方は要注意。シイタケは、右の写真のように柄が硬く長い。

 急峻な尾根筋に向かってトラバースしてから、上に登り始める。見上げると、朝陽を浴びたミズナラの巨木が目に留まった。日当たりは抜群に良い東側斜面・・・四つん這いになって急な崖を上ると、ほどなく根元に黒の最上級の株が目に飛び込んできた。
最上級のマイタケ

 姿、形が美しく、思わずガッツポーズをしたくなるほど素晴らしいマイタケであった。市場性が最も高い黒マイタケである。黒マイタケは、白や茶系統のマイタケより遅く、霜の降る頃に発生する。葉は小葉で茎は短く充実、枝は分岐が少ない。形が良く、容積の割りに重量は大きい。肉質は厚く締まり、歯切れも素晴らしい。
 とりあえずザックを根元の上に置こうと右回りに這い上がって驚く。大株が二株並んで座っているではないか・・・心が舞い踊るほどの感動、感激がどっと押し寄せてきた。秋田では、ハードなマイタケ採りでデジタル一眼レフカメラを持って歩く人は皆無に等しい。

 しかし私は、天然マイタケの中でも形の美しい最上級のマイタケを撮りたい一心で、重くかさばるデジタル一眼レフカメラを背負っている。ついにその瞬間がやってきた。早速ザックからカメラを取り出し、小躍りしながらシャッターを押しまくった。

 最上級のマイタケは、大きさ、姿、形、いずれをとっても「キノコの王様」である。カメラマンなら、一度は撮ってみたい憧憬の被写体である。
 採ったマイタケを綺麗に並べて写真を撮りたかったが、そんなスペースは皆無・・・やむなくザックの上に黄色の風呂敷を広げ、その上に撮ったマイタケを並べて撮る。ブナ林の恵み「キノコの王様」を眺めながらジュースで乾いた喉を潤し、ヨモギ饅頭をほおばる。

 思えば、昨日、電話で相棒を誘ってみたけれど、残念ながら予定があってダメだという。そんな時に限って当たる。木漏れ日を浴びながら、「金で買えない幸せ」を一人でかみしめる。相棒も、さそがし羨むであろう。本日の獲物を前に、授けてくれた山の神様に心の中で感謝を捧げる。

 「ふるさとの山に向かいて言うことなし、ふるさとの山はありがたきかな」(石川啄木)
 マイタケ採りは120%満足。一気に沢に向かって下る。沢筋には、トチの実が大量に落下し、ミズのコブコも満開だった。
 沢沿いを下っていると、倒木にサワモダシが群がって生えているのに出くわす。荷を下ろして、とりあえず写真を撮る。撮っているうちに・・・採りたくなった。というのも、食べるには私の一番好きなキノコだからだ。特に大好物の納豆汁に欠かせない食材である。
 25リットルの袋が一杯になるほど採って背負う。久々にキノコの重さで肩と腰が痛くなるほどだった。ただし、これでサワモダシの最盛期が近いと思われては困る。大量に発生していたのは、この一カ所だけ。まだまだ山全体が爆発するような気配はない。
▲ノコンギク ▲サラシナショウマ
▲サワモダシは、まず水から湯がく。その後、水を入れたボールに入れ、ゴミを選別する。
▲調理サイズに切り裂き、無洗のまま冷凍袋に入れて冷凍保存する。

 毎年、マイタケとナメコは、1年分キノコ専用の冷凍庫に保存し食べている。サワモダシだけは、冷凍保存が少なく、ほとんど缶詰にして保存している。缶詰にすれば贈答品として最も喜ばれるからである。
姿形の良い大株は、日当たり良い東向き、南向きの斜面

 左の写真は、うっすらと木漏れ日を浴びている。右の写真は、太陽の光が充分当たっているのが分かる。西側や北側の暗い斜面に.もマイタケは生えるが、最上級のマイタケは、やはり日当たりの良い東向き、南向きの斜面であろう。
帰路、崩壊林道を自転車を押しながら帰ってきたマイタケマンに声を掛けた。
「当たりましたか」
「うん、何とか当だた。んだども間一髪・・・採っている最中にしゃ、人がやって来た。

新聞(さきがけ新聞「天然マイタケ今年は豊作? 直売所に大量入荷」)に出でがら人が多過ぎでぇ困るなや」
マイタケの数より人が多いから、全員当たるはずもなく惨敗する気の毒な人もいた。

足取りも重くヨレヨレ状態で歩いていたマイタケマンが前を歩いていた。
彼を追い越すと、私のザックを見るなり・・・
「大株に当だったがぁ」
「うん、何とか黒の大株に当だた」と嬉しそうに答えた。

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