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竜巻・突風被害、晩秋ナメコ、ナメコ不作の決め手、ムキタケは平年作、凍みナメコ、ナメコを隠す落葉
 ブナの黄葉も終わり、すっかり落葉すると、音沙汰がなかったナメコやムキタケが一斉に生えだしていた。今年は大不作・・・と、諦めていただけに嬉しさもひとしおであった。ただし群生の規模は、例年より小さく、「平年」を下回る「不作」に変わりはないように思う。
 何故かムキタケだけは、たくさん群生していた。自然の豊凶は、バイオリズムのように繰り返す。恐らく、昨年はナメコが大豊作、だから今年は不作の年に当たっていただけであろう。来年は、平年作以上になることを期待したい。
 災害列島に生きていることを改めて実感する出来事が相次いでいる。2013年11月7日、急速に発達した低気圧の影響で県内は大荒れ、竜巻とみられる突風の被害で12棟の屋根が剥がれ、電柱4本が折れるなどの被害が出た。その二日後、これ以上ない好天に恵まれた。

 しかし、年を重ねると、こんなに急激な気象の変化に身体がついていくのが難しい。ナメコも同じ心境なのだろうか。
▲原木栽培のナメコ(11月6日撮影、八峰町)

 菌床栽培と違って原木栽培は、気象の影響を受ける。今年は、ナメコの発生が例年より10日以上も遅く、量も少ないという。だから、お客さんの注文に応えられないとぼやいていた。まして天然ナメコは、気象の影響をもろに受ける。苦戦が予想された。
 2013年11月9日(土)、いつもの相棒二人と、今年最後のナメコ採りに向かった。ブナの森は、ほとんど落葉し、林床に太陽の光が降り注ぐ。例年なら、ナメコの発生が第二のピークを迎える晩秋・・・そんな典型的な風景が広がっていた。
 車止めを出発したのは、朝の7時頃。降り積もる落葉を踏みしめながらナメコの森に向かった。ほどなく先行者二名に追い着く。ムキタケを採っているようだ。杣道沿いに斜めに倒れた倒木にはムキタケが群生していた。それは彼らに譲り、本命のナメコの森に一直線に向かった。

 川を渡って足もとを濡らすと・・・ウェット足袋を履いていても、足の感覚がなくなるほど山の冷え込みは厳しかった。
 傾斜がきつい斜面に横たわるナメコ木に向かうと、待望のナメコが生えていた。少しまばらだが、やっと、ナメコが沈黙を破って顔を出してくれたことに嬉しさが込みあげてきた。
 どんなキノコでも、雑に採れば、家に帰ってから泥と落ち葉を取り除くのに一苦労させられる。だから、できるだけ泥と落ち葉が混ざらないように丁寧に採取する必要がある。そのためのナメコ採りアイテムが、ナイフと小さなザルである。
 沈黙していたナメコが一斉に出てきただけに品質は良く、腐った老菌は皆無に等しかった。  
▲昨年、大群生したナメコ木にやっと出てきたナメコ

 上の写真が、今年のナメコの状況を象徴している。晩秋になってやっと出てきたものの、まばらで群生の規模が小さいのが分かる。これは全てのナメコ木に共通していた。つまり、これが平年作を下回る「不作」と判定する決め手である。ただし、次回につながるマメも散見された。
▲倒木の斜面下側と、上側の裏に旬のナメコが生えていた。それを丁寧に採取する。
▲凍みナメコ

 倒木の上側に生えたナメコは、朝の冷え込みで凍りついていた。いつ雪が降ってもおかしくない季節・・・ナメコたちが、そんなに遅くまで眠っていたということは、今年の気象がいかに異常であったかを物語っているように思う。
▲ムキタケの群生

 ムキタケは、例年と変わらず群生していた。ただし、ムキタケは重くかさばるので、私は全て写真を撮るだけにとどめる。K相棒は、ムキタケ好きの人がいるので喜んで採取していた。
▲珍しく群生していたナメコの成菌

 ちょっと傘が開き過ぎだが、傘裏は白く旬の成菌であった。ナイフで株ごと切り取り、ザルで受け取りながら効率よく採取する。
▲次回につながるマメ
▲採取せず、全てパスしたムキタケ・・・もったいない!
▲ブナの巨樹が林立する台地のナメコ木・・・残念ながらナメコはまばらであった。  
▲巨樹の森で唯一、群生していたナメコ・・・それでも群生の規模は小さい。
▲晩秋ナメコは保護色

 晩秋になるとブナ林の中は明るく、草木も倒れているので遠くまで見通しがきく。だから晩秋ナメコは探しやすいと言われる。しかし、強風などで大量に落葉すると、見逃す場合が少なくない。例えば上の写真のような場合、遠くからでは「落葉か、ナメコか」を判別するのが極めて難しい。だからキノコ木周辺は、落葉を手で払いながら探すことも必要である。
▲ムキタケ ▲死亡例もある猛毒・ニガクリタケ
 青空が透けて見えるブナ林。中でも巨木が倒れると、周囲は異様に明るく歩きやすい。こうしたブナの倒木を中心にナメコを探し歩く。今回は、二日前の突風で大量に落葉し、ナメコを覆い隠すほど降り積もっていた。だから常に先頭を切って探し回っていたY相棒が旬のナメコを見逃してしまった。
 それが上の写真・・・今回、最上級のナメコの群生である。それを見失うとは・・・Y相棒は、上から降りてきたが、倒木の下側で、かつ降り積もる落葉に隠れていたので、つい見逃してしまったらしい。私は、この木周辺でナメコを採ったことがあった。念のため、下まで降りて確認しようとした時、落葉に隠れていたナメコを発見した。
▲肉厚で極上のナメコ

 傘が開ききらない極上のナメコを見れば、本能的に撮りたくなるし、もちろん採りたくなる。これは理屈じゃなくて、ブナ帯に生きる遺伝子が騒ぐからに違いない。こういう美味な風景を眺めていると、大根おろし和え、ナメコ汁、納豆汁、芋の子汁・・・が、頭の中に次々と浮かんでくる。
▲ブナの巨樹 ▲いつもお世話になっているキノコ木 
 最後のナメコ木・・・この倒木に生えたナメコも見逃すところであった。急斜面を下った窪地に横たわるブナの倒木・・・何年もお世話になってきたキノコ木である。遠くから眺めながら、ベテランY相棒が言った。「あれっ、ナメコが生える木がねぇ・・・下さ落とされだがな」・・・それほどおびただしい落葉に埋もれていた。

 それにK相棒が相槌をうった。先ほど見逃した一件があっただけに、よくよく凝視していると・・・あれは落葉ではなくナメコではないか。近づけば、やはりナメコであった。強風で一斉に落葉した場合のナメコ採りは、遠くから眺めただけでは×・・・近づいて確認する必要性を痛感させられた。

 それにしてもナメコ採りは、例え不作であっても、やっぱり楽しい。それはブナ林の最後の贈り物・・・今年も楽しい山釣りを堪能させていただいた。秋田が誇るブナ帯の森に深く感謝を捧げたい。   

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