山釣り紀行TOP

 ここ数年、クマと頻繁に遭遇しているがシャッターチャンスをものにしたことがなかった。意外にも八幡平アスピーテラインを走っている途中で、人も車も恐れないクマを発見・・・お蔭で野生のクマを至近距離で撮影することができた。今や、登山や花の撮影でもクマ被害防止対策が必須の時代になった。
▲八幡沼(1,570m)のコバイケイソウ

 2013年7月23日~24日、花の百名山シリーズの取材で八幡平を訪れた。八幡沼周辺はコバイケイソウが盛り・・・特に今年は「大豊作」のようで必見の価値がある。花に群がるミツバチやチョウたちも大喜びであった。
▲黒谷地湿原(1,440m)のニッコウキスゲ

 標高が八幡沼より120mほど低い黒谷地湿原は、ニッコウキスゲが一斉に咲き始めた。
コース・・・黒谷地湿原~源太森~八幡沼~八幡平~めがね沼・鏡沼~山頂駅~源太清水~黒谷地湿原駐車場

撮影した草花・・・ハクサンチドリ、キヌガサソウ、イワカガミ、イワイチョウ、コバイケイソウ、ニッコウキスゲ、ワタスゲ、ヒナザクラ、モウセンゴケ、シナノキンバイ、カラマツソウ、マイヅルソウ、ツマトリソウ、ハクサンシャクナゲ、ヨツバシオガマ、ベニバナイチゴ、ミヤマキンポウゲ、ミヤマセンキュウ、ムシトリスミレ、ハチマンタイアザミ、ウゴアザミ、イワオトギリ、ウサギギク、オニシモツケ、ヤマオダマキ、アカモノ、ヤマハハコ、ウメバチソウ、ウスユキソウ、ショウジョウバカマ、オオバキスミレなど
▲名水「源太清水」

 帰路は、山頂駅から八幡平アスピーテラインを歩き黒谷地湿原駐車場まで歩いた。1時間近くかかったが、意外な発見があった。冷たく五臓六腑に沁みる名水「源太清水」の美味さは◎。背負っていたペットボトルの中味を捨てて、源太清水を満タンに入れた。

 この周辺に咲いていたアザミを「オニアザミ」だと思い数枚撮影する。乾いた崖の上にはウスユキソウの白花も列をなして咲いていた。山頂駅に飾られていた花図鑑を見て驚く・・・ハチマンタイアザミ・・・「従来、オニアザミとされてきたが近年新種とされた。源太清水周辺に生える多年草」と記されていた。
▲八幡平クマ情報(八幡平ビジターセンター)

 大沼にある八幡平ビジターセンターに寄ると、クマ出没情報が掲示されていた。それによると、7月14日大沼でクマ一頭目撃、7月16日小グマ一頭、7月19日クマ一頭3回目撃と記されていた。今回撮影したクマは、恐らく大沼周辺に出没している同じクマであろう。
▲長沼周辺・・・真新しいクマの皮剥ぎと爪痕 ▲蚊取線香とクマ撃退スプレーを下げていたベテランカメラマン

 7月23日、小雨が降る中、ふけの湯温泉から大谷地、長沼、ブシ谷地に行ってみた。特に長沼からブシ谷地区間は、歩く人も稀で真新しいクマの爪痕が到る所にあった。長沼にはネムロコウホネの黄色い花が咲き始めていた。ブシ谷地のタチギボウシの花はまだまだだが、谷地一帯を埋め尽くす群落は見事であった。

 7月24日、朝6時頃、八幡沼に向かうと、三脚を据えて花の撮影をしているベテランカメラマンに出会う。彼は香取線香を腰に下げていた。「蚊取線香はクマ避けにも効くから良いですね」と言うと、腰に下げていたクマ撃退スプレーを見せてくれた。私と同じスタイルに思わず苦笑いしてしまった。

 八幡平レストハウスでカレーを食べた後、八幡平アスピーテラインを秋田方向に下る。大沼を過ぎた道路左手の草むらに黒い物が見えた。「クマだぁ~」と心の中で叫び、急ブレーキを踏む。時間は午後1時頃、クマは昼寝をしている時間のはずだが・・・食事に夢中のようだ。

 幸い、こちらを気にする様子もない。またとないシャッターチャンス・・・カメラを取り出し、車内の後窓から最大ズームアップでシャッターを押しまくる。
 対向車線から八幡平に向かう車がきた。通り過ぎた後、右手のクマに気付き、バックしてクマの真横で止まった。一瞬、クマは警戒するように顔を上げたが、気にすることもなく再度エサを食べ続けた。一般にクマは、人や車の音を嫌うはず。ところが、このクマは人や車を恐れないカラスのようなクマであった。
 何を食べているのだろうか。盛んに土を掘っては鼻先を地面につけて舐めるように食べ続けていた。恐らくアリの巣を掘って食べているのではないか。
▲上の写真の右足には鋭い爪が見える。
 また別の車がクマに気付き至近距離で止まった。クマは振り向きもせず、食事に夢中だ。こんなクマには、クマ避け鈴も通用しないだろう。どうしてこんなクマが出没するようになったのだろうか。

 マタギの言葉を思い出す・・・「クマが人間になじんでいる。里山に冬眠し、いきなり人家に出没する。・・・クマに対する教育が足りないからだ。人間が怖いことをクマに教えないとダメだ。」・・・人も車も恐れないクマ・・・それはクマが狂ったのではなく、人間社会が狂っている証左ではないだろうか。
ツキノワグマMEMO

体長140cm前後、体重/オス80〜130kg、メス50〜80kg
3年で成獣、寿命は15年〜30年・・・推定3年程度の成獣ではないか。

夏の食べ物・・・ネマガリダケ(タケノコ)、アイコ、ミズ、セリ、アザミ類などの山菜類、ミズバショウ、ザゼンソウ、エゾニュウ、フキなどの多肉多汁の植物、キイチゴ、アリの巣、ハチの巣、オニグルミなど
 「日本百名山シリーズ④ 八幡平」は、後日「あきた森づくり活動サポートセンター/森と水の郷あきた」にアップしたいと思います。

山釣り紀行TOP

inserted by FC2 system