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サクラの撮影、ヤマワサビ、泣き尺、尺イワナ、早春の風景、入れ食い、カメラ水没、塩焼き&刺身
 4月下旬、連日好天が続き、日本海側の小河川は、雪代が早くも終盤にさしかかっていた。肝心のイワナの食いは今一つであったが、型はワンランクアップし、久しぶりに尺イワナが釣れた。渓流沿いにはヤマワサビの白花、海岸近くでは、ニリンソウの花もちらほらと咲き始めた。早生のホンナ、アイコが出始めたと思うが、イワナを追う余り、疲れ果て、山菜を採る余裕がなかったのは残念であった。
 4月下旬、秋田市周辺のサクラは満開に・・・「フィールドの紹介」の取材を兼ねて、秋田市の小泉潟公園や千秋公園、井川町の日本国花苑のサクラを追い掛けているが、改めて「春は花」と言えば「サクラ」だと思うほど華やかで美しい。(写真はソメイヨシノ)
▲マメザクラ ▲神代曙(ジンダイアケボノ)

 日本のサクラは、栽培品種を含めると250〜300種・・・余りに種類が多く、素人が花を見て、その種類を言い当てることはまず不可能。アップで花の撮影をした後、サクラの図鑑で調べたとしても判別が殊の外難しい。そんな中、日本国花苑は、全ての樹木に名前の名札があった。これは、サクラの撮影者にとって本当にありがたい。

 しかもサクラの種類が200種と多く、5月10日頃まで楽しめるとのこと・・・ぜひ、多くのサクラを撮影して「モリエールあきた」で紹介したいと思う。
 明日は平日で快晴の予報・・・「明日、イワナ釣りに行かないか」と、T相棒を誘ったら、すぐさま「OK」の回答が返ってきた。林道の雪はすっかり解けていたので、前回より奥に車を止めた。着替えていると、ジープが追い越したが、ほどなく止まった。こうも好天が続くと、入れ替わり立ち代わり釣り人が入っているに違いない。またしても苦戦が予想された。  
 小沢沿いに下ると、ヤマワサビの白い花が満開に咲き美しい。斜面には、エゾエンゴサクやカタクリ、キクザキイチゲの花々も咲いていた。前回の殺風景な風景と違って、春の訪れを感じさせる暖かな風景に心が和む。
 最初は、ブドウ虫をつけて釣り始めたが、前回同様アタリが遠い。イワナは、既にスレ始めていることは明らか。若干雪代も入っているので、匂いと動きで誘うミミズに代えてみる。すると、ほどなくイワナのアタリがあった。ブドウ虫と違って、ミミズは長い分、合わせるタイミングは遥かに遅い。

 なかなか針まで飲み込まないので、竿を上下にあおってイワナの食いを誘ってみる。ほどなく、イワナが上流に走った。そこを合わせる。黒いサビが残っているが、丸々太ったニッコウイワナであった。
▲雪解けの斜面に芽を出したカタクリ  ▲キクザキイチゲ
▲エンレイソウ  ▲バッケ
 依然としてイワナのアタリが遠いので、渓流沿いの山野草を撮影しながら足早に上流へ。T相棒には、全く音沙汰なし・・・「イワナのアダリ忘れだぁ」と呟くほどであった。しかし、イワナの魚影が全くないわけではない。大きな淵には、イワナが見えるのだが、警戒して食わないだけである。

 忘れた頃にやっと二匹目が釣れた。腹部が鮮やかな橙色に染まった8寸級のイワナであった。釣れない割には、イワナのサイズは悪くなかった。これは上流に行けば、期待が持てる証左でもあろう。
 雪解けの斜面にエンレイソウが群生している地点で、一時休憩・・・、パンや大福餅でエネルギーを充填する。再び釣り開始・・・カーブ地点の淵の落ち込みで粘っていると、下流からT相棒が追い掛けてきた。すると、淵尻にいたイワナが釣り人に気付いて上流に走った。何と9寸ほどの良型であった。

 雪代後半になると、イワナは大淵の底ではなく、瀬や淵尻でエサを待つようになる。頭で分かっていても、釣れないと釣りも雑になるから、走るイワナに馬鹿にされる始末であった。
 何とか2尾目がヒット。黒いサビが雪代に洗われ、全身黄色っぽい美しいイワナであった。岸辺に横たえ、ズームアップで何度もシャーターを切った。
 3尾目は、刺身サイズの9寸イワナ。斑点は小さく不鮮明だが、黒いサビもとれ、腹部が柿色に染まっている。雲一つない太陽の光を浴びて、魚体がキラキラ光り輝いた。T相棒にも、今年初のイワナがヒットしたようだ。まずはほっとする。
 4尾目は、尺に若干足りない泣き尺のイワナであった。久々に竿先を震わせる野性のファイトを見せてくれた。これだから釣りはやめられない。イワナの食いは決して良くないが、イワナのサイズには満足であった。
▲芽を出したばかりのアザミ ▲エノキタケ(ユキノシタ)
 サビついたイワナは、真っ白な雪の上で撮影すると、その黒さが際立つ。
 二つの沢が合流する地点は、絶好のポイントである。しかし、何故かイワナのアタリはなかった。時計を見れば、10時半・・・そのイワナのポイントのすぐ近くで、コッフェルに水を汲み、お湯を沸かしてコーヒーを飲みながら腹ごしらえをしていた。すると、先ほどまでアタリがなかったすぐ目の前で、イワナが水面を飛び交う羽虫を狙ってジャンプしたではないか。

 すかさずT相棒が座ったまま、そのポイントにエサを送り込むと・・・何とイワナがエサをくわえたようだ。上げてビックリ、ジャンプしたイワナよりデカイ・・・計測すればジャスト30cmの尺イワナであった。あれほど警戒心の強い尺イワナであっても、釣れる時は意外なほど幼稚に釣れてくる。何とも不可解な魚としか言いようがない。
▲源流部を釣る ▲エゾエンゴサク ▲花芽を出したばかりのイチゲ
▲カタクリ ▲ウバユリの若芽 ▲エゾニュウの若芽

 途中で、T相棒のクーラーのベルトが切れてしまった。上二又まで戻ると、釣りは諦め、ベルトの修理をしているという。時計は12時ちょっと前であった。私は一人、右の沢に入った。T相棒は5尾ほどしか釣っていない。彼の分まで釣らねばと、気合いを入れて釣り上がった。
 先ほどの小沢に比べて残雪はまだ多く、早春の風景が続く。次第に雪代で濁り始めた。すると俄然イワナの食いは良くなった。ミミズは、余りに小さかったのでブドウ虫に切り替える。
 水深のある瀬では、淵尻、瀬の中間部と続けて2尾をゲット。
 久々に入れ食いを堪能・・・1時間で10尾をゲットしたところで納竿した。帰る途中、頭で考えている以上に疲れていたのか・・・足がもつれて沢の流れに前のめりに突っ込んでしまった。その時、首にぶら下げていたカメラも水没してしまった。すかさず起きて、カメラの電池を外し、乾いたタオルで丁寧にふいた。しばし、光と風に当てて乾かすも、ズームレンズの中には水が入ってしまったらしく、レンズが白く曇ってとれそうにない。

 二又まで戻り、昼食をとる間、レンズを外して乾かす。ラッキーだったのは、丸一日雲一つない好天だったこと。その日の夜、乾いたのを確認して撮影してみると、全く問題なく作動した。不幸中の幸いとは・・・こんなことを言うのであろう。

 もし雨だったら、間違いなくレンズは使い物にならなかっただろう。さらには、新調したばかりのボディもダメになっていたであろう。帰路は、イワナの刺身用にヤマワサビを採取する。
 家に帰って、晩酌の肴は、イワナの刺身だけでなく、塩焼きも食べてみたい。串刺しにしなくても折れ曲がらないようにするためには、魚体の両サイドに包丁で切れ目を入れるといいのでは。やってみると、まずまずの焼き具合になった。一風呂浴びてから、今度は刺身をつくる。

 泣き尺と9寸イワナをさばく。大皿に白い花の咲いたワサビの茎葉を下に敷き、イワナを活造り風に盛り付ける。ヤマワサビの根をすりおろし薬味用に添える。やはり野生のイワナには、野生のワサビが良く似合う。ここで、水没したカメラが正常に作動するかどうか・・・電池を入れ、フラッシュをONにして撮ってみる。問題なく作動したのを確認してホッとする。

 コリコリした刺身に、粘り気の強いワサビ醤油をつけてほおばる。何度食べても、一日の疲れが吹っ飛ぶほど美味い。決してお金では買うことのできない美味しさ・・・釣り人にしか味わえない極楽の瞬間である。だから釣の一日は、釣った魚を料理して、それを肴に酒を飲み終えるまで延々と続くのである。   

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