山釣り紀行TOP

 4月上旬、今年初のイワナ釣りへ。今春は気温が高く、サクラの開花予報も例年より早いとの予報である。ならば、雪解けの早いイワナ谷なら、もう終盤に入っているのではないか。ところが、雪代はピークであった。初物イワナは何とか手にしたものの、苦労と貧果を味わう一日となった。
 昨日の悪天候が嘘のように、雲一つない好天に恵まれた。しかし、目的のイワナ谷は、昨日の雨と雪代で濁流と化していた。これじゃ川を渡ることすらできない。流域の少ない源流部に入るしかないが・・・右岸の林道は、崩落や洗掘がひどく、かなり手前で車は進むことができない。ならば、のんびり写真でも撮りながら歩き、水が引くのを待つしかない。
 大雨の被害はひどく、林道は至る所で寸断されていた。幸い、危険個所にはロープが張られ、梯子まで設置されていた。本当にありがたい。春の訪れを告げる樹木の花・・・キブシ、マルバマンサク、バッコヤナギなどを撮りながら、久々に山の散歩を楽しむ。
▲マルバマンサク
▲バッコヤナギ
▲キブシ
▲カモシカの足跡と糞
 左手に毛がフサフサした獣が斜面をゆっくり上っているのが見えた。二人ともクマ避け鈴を鳴らしていたので、その音に気付くと、立ち止まって振り向いた。一定の距離があれば、カモシカは逃げずに我々の方をじっと見て動かない。絶好のシャッターチャンス。厳しい冬を生き抜いた毛並みは素晴らしく、実に美しいカモシカであった。
▲青空と残雪と裸木のブナ林
 今年は雪解けが早いと思ったが、なんのなんの、雪が深く、根周り穴も小さい。故に、雪代は今がピークであった。雪代最盛期は、最も危険で、かつイワナの食いも鈍く最悪。
 狭いゴルジュ帯を避けて、いきなりザラ瀬が続く源流部まで2時間弱歩いた。急峻な小沢を一気に下り、沢に降り立った。今だ流れは濁り、白く波立っていた。一人で渡るのは危険・・・二人でスクラム渡渉を繰り返しながら釣り上がった。
 次第に濁りが薄くなり、昨日の雨の影響は減少していった。しかし、いつもの倍もある水量では、イワナのポイントが皆無に等しい。イワナは、およそポイントにはなりえない浅瀬の止水に避難していた。我々に気付いたイワナは、次々と上流に向かって走った。それでも諦めきれずに、釣り上がった。
 浅瀬に避難していたイワナが、私に気付き、上流に走った。逃げたわずかな淀みにエサを振り込む。イワナは、相当慌てていたらしく、何と、お腹に針が刺さった。ガラ掛けの引きは強烈だ。竿は、折れんばかりに弧を描き、大イワナがヒットしたような強烈なアタリが返ってきた。強引に引き抜こうとすると、頭ではなく、橙色の腹が水面に現れた。なんだぁ〜、ガラ掛けか・・・それでも計測すると28cm。初物イワナにしては、上物である。
 午前11時過ぎ、源流部上二又に辿り着く。ここまで私も相棒もたったの2匹・・・完全なる貧果であった。ゲリラ豪雨の影響だろう。二又の流れはすっかり変わり、いつも休憩していた河原が消失していた。ここで早い昼食を済ませ、二手に分かれる。集合時間は午後1時。というのも、午後2時ともなれば、雪代はピークに達し、渡渉不能に陥るからだ。雪代を甘く見てはいけない。
 まだまだ深い雪、雪崩で埋まった源流部・・・そのわずかなポイントを丁寧に探る。いつもなら、クマの足跡が見られるのだが、皆無。今だ冬のような光景が続く。 
 何とかイワナを4尾ほど釣り上げ納竿。それでも、丸一日歩き回って、わずか6匹・・・こんな貧果に終わることもある。イワナは、雪代が終盤にならないと釣れない。雪代で水温が低下するだけでなく、水嵩が増すと、イワナはエサを追うどころではないからだ。つまり、雪代の危険を顧みず、イワナを追っても徒労に終わるだけ・・・そのことをしみじみと感じさせてくれた一日であった。
▲芽が膨らみ始めたブナ・・・背後に根周り穴の森が見える。

 上二又を午後1時過ぎに出発。次第に雪代で濁り始め、水嵩が一気に増し始めた。これはヤバイ・・・右岸から流れ込む枝沢まで濁っているではないか。このまま下ると危険だから、この枝沢を登って崩壊林道に出た。林道は深い雪に覆われていた。気温の上昇で雪は緩み、歩く度にズボズボとぬかり、エネルギーの消耗が激しい。
 ちょうど食べ頃のパッケがあちこちに生えていたが、もはやそれを採る元気は完全に失せていた。雪に足をとられるたびに、足がまともに上がらなくなる。足だけでなく、腰まで痛くなってきた。疲労はピークに達していたが、かろうじて足が前に出たのは、下り坂だったためだ。歩き始めて2時間半、やっと車止めに着いた。
 日本海に近い下流部では、カタクリとキクザキイチゲが一斉に咲き始めていた。しかし、源流部はいまだ冬の装いであった。そのギャップには、いつも驚かされる。イワナ釣りは、既に解禁になっているものの、その適期は、もう1〜2週間後であろう。まして、奥の深い源流釣りは、例年と同じく5月以降になるであろう。  
▲ショウジョウバカマ
▲アセビの花 ▲スギの花
▲ネコヤナギ ▲梅
▲マルバマンサク

 現在、HP「モリエールあきた」で「山野の花シリーズ」を連載しているが、それが終わったら「樹木の花シリーズ」と「野鳥シリーズ」を企画しています。今年は、樹木の花や葉、実、紅葉を追い掛けて撮影する予定です。「野鳥シリーズ」は、写真部門の各賞を受賞している知人の写真を借用し、私の文とのコラボでやってみたいと思っています。

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