シルバーウィーク初日・・・雨の予報にもかかわらず、車止めには30台ほどの車がズラリと並んでいた。キノコの数より人の数のほうが多いのではないかと思うほど、マイタケ人気の高さには、驚かされるばかり。今年は8月中旬頃から雨が降る日が多く、マイタケ豊作の予感がしていた。他のマイタケ採りの人たちと競合したものの、当たりは4ヵ所、次回に望みをつなぐマメも多くみられた。ズバリ、「今年はマイタケ豊作?」の夢が膨らむスタートとなった。
▲ツリバナ ▲ダイモンジソウ

 一週間前の最後の山釣りも雨、初マイタケ採りも雨・・・季節を問わず雨の山は、天国と地獄ほどの落差がある。幸い夏にはヤブと化していた杣道も、マイタケ採りの人たちの往来で明瞭な道に変身していた。それでも、上から雨、前には雨に濡れた藪が続く。ゴアテックスの雨合羽でも、内からの汗でビショビショ。そして何より、カメラを濡れないようにザックの中に入れておかなければならないので、撮影には面倒な事この上ない。
 9月に入ってからも雨の日が多く、雑キノコや毒キノコの出も早い。その雑キノコの筆頭であるサワモダシは、既に大量に腐っていた。美味しいキノコだけに残念。シルバーウィークとマイタケの発生がピタリと重なったことから、今年のマイタケ採りは競争が一層激化しているが、サワモダシは大穴。だから、マイタケよりサワモダシをたくさん採取して福笑いをしている人にも出会った。
当たりその1・・・大小4株

 目的の場所に辿り着き、前進を阻む猛烈な藪をかき分けながら急斜面を登る。頭の中で「マイタケ、マイタケ・・・」と呪文を唱えないと、なかなか足が前に出ない。幸い、マイタケには意外なほど早く当たった。斜面を登り始めてから20分ほど経過・・・期待していたキノコ木を見上げると、マイタケが数株あるではないか。相棒に「あったどぉ〜、あったどぉ〜」と叫ぶ。

 先ほどまで足が前に出なくなるほど疲れていたのに、マイタケに当たると一転、そんな疲れは遥か彼方へ吹き飛び、ガッツポーズが出るほど元気になる。これが雑キノコ採りとは一線を画すマイタケ採り独特のオモシロさ、醍醐味である。
 もう数日置けば、最高のサイズになるのだが、シルバーウィークに加えマイタケ銀座では残すわけにはいかない。小さな1株を残して採取する。案の定、谷底から「お〜い、お〜い」と仲間を呼ぶ声があちこちから聞こえてきた。
当たりその2・・・大小5株(写真は、傘が開いた黒系マイタケ)

 昨年、一昨年と1株だけだが、連続して採ったキノコ木に向かう。いきなり、傘が開いた黒マイタケが目に飛び込んできた。はやる心を抑えながら斜面を駆け上がると、左に2株、右側にも2株、合計5株あった。1時間も経たないうちに当たりが連発・・・豊作の予感は的中したと思った。左サイドを探っていた相棒に「あったどぉ〜、あったどぉ〜」と叫ぶ。
 相棒は、根の間に張り付いた株をナイフで丁寧に切り取る。ところが、この後がいけない。置いてはならない急斜面に切り取ったマイタケを置いてしまった。当然、マイタケは斜面を転げ落ちていった。拾いに斜面を下ったが、マイタケはバラバラに砕け散り、回収できたのは半分ほど・・・実にもったいない。
▲傘が開いたスワリに近い茶系マイタケ

マイタケを採る際の注意点

 マイタケは、他の雑キノコと同じ扱いをしてはならない。ブナ・ミズナラ林のキノコの王様だけに、細心の注意を払って採らなければならない。まず、穴や根に張りついた株を採る場合は、菌糸を残すように刃物で切り取る。手で起こして採取した株は、根元の泥や石などがついた部分を切り取る。その際、白い菌糸は元に戻しておく。

 採取した株は、急斜面に置くと転がり落ちるので、まず25リットルほどのビニール袋に入れる。斜面上部の安定した場所には、風呂敷を広げておく。そこまで持ち上げて風呂敷の上に置く。全株採取したら、マイタケが動かないようにキッチリ風呂敷の四隅をしばってから、縦長のアタックザックに背負う。
当たりその3・・・スワリ2株

 斜面をさらに登ると、めぼしいキノコ木には、マメが芽を出していた。実績のあるキノコ木のほとんどにマイタケの気配があった。これは豊作の兆しでは・・・と思っていると、背後から仲間を呼ぶ声が聞こえた。どうも我々の後を辿るように歩いているらしく、「皆、採られた跡でさっぱりだぁ〜」と呟いていた。横にトラバースすると、今度は下から登ってきた人に出会う。

 前も後ろも他のマイタケ採りに挟まれたような状態になってしまった。下から上がってきた人は、下流側に向かってトラバースしていくという。やむなく、谷まで降りることにする。その前に、水分補給と朝飯、ヨモギ饅頭を食べてエネルギーを補填する。沢へ下る途中で、相棒が2株見つけた。このキノコ木は、3年前に4株、昨年大小2株採取している木であった。
当たりその4・・・スワリ3株

 登りやすい斜面は、ほとんど人が入っている。そこで誰もが入らないであろう崖地を攀じ登る。すると、直立する崖地に、傘が大きく開いたスワリ状態の株が3株連なっていた。数日すれば、腐ってナガレになったであろう。こうしたスワリの株が目立つということは、今年のマイタケの出の早さを物語っているのであろう。
▲茶系のスワリマイタケ

 このマイタケをゲットした後、一時的だが猛烈な雨が降り出した。雨がやむのを老木の根元でしばらく待つ。この雨で斜面は一層ぬかるみ、やたら滑るようになった。初物マイタケとしては、収穫は十分・・・ルンルン気分でマイタケ谷を下る。
▲ノコンギク
▲キバナアキギリ ▲イタドリ
▲キツリフネ ▲ウシノヒタイ(ミゾソバ)
 家に帰ってから、すぐに調理しやすいように処理する。まずブルーシートの上に収穫物を置く。綺麗に採ったつもりだが、意外に泥やゴミの付着が多かった。やはり悪天候になれば、マイタケに泥やゴミなどを付けないように採るのは不可能。株全体の泥やゴミを取り除きながら、調理しやすいように処理する。

 今回は、水洗いしなくてもよい物と、水洗いを要するものとに分けて処理する。不洗物は、調理する分を除いて、小分けしたものを急速冷凍する。水洗いした物は、水をよく切ってから風乾ネットに入れて乾かす。十分乾かしてから調理または長期保存用に急速冷凍しようと思う。いずれにしても水洗いすれば、風味が低下するので、極力水洗いしないのがベストであることは言うまでもない。
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