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 9月22日、イベントが中止になったので、急遽休みをとって舞茸谷に向かった。まだ暗い午前5時頃、パトカーが来ていたので、何か事故でもあっのか・・・と思ったら、山中で谷を低空飛行するヘリに出会った。誰か遭難したらしい。マイタケは、這ってでも行きたくなるほど誘惑の度合いが強い。道なき藪道や滝、危険な絶壁、草付の急斜面、クマやスズメバチなど危険も多い。それだけに、遭難を回避する冷静さも必要であることを改めて思い知らされた。
 9月17日〜19日まで雨が降り続いたので、サワモダシ(ナラタケ)があちこちに生えていた。上の写真は、ミズナラの根の周りに大発生したキツブナラタケ。全体が黄色みを帯びて美しく、サワモダシの中では最も美味しいと言われている。だから、今回は、マイタケ採り半分、サワモダシ採り半分となってしまった。
▲舞茸谷とダイモンジソウ
▲大量に落ちていたトチの実・・・今年は栗もトチの実も大豊作
 奥地に位置する急斜面を登る。かつて採ったことのある木を巡って歩くが、既に倒れてしまったり、あったと思えばマメばかり・・・。マイタケより、倒木に生えたサワモダシがやたら目立つ。  
▲ミズナラの倒木に生えていたキツブナラタケ

 雑キノコの中では、サワヨモダシが一番美味しい。その中でも、ミズナラの木に生えるキツブナラタケが一番。だから、マイタケ採りを一時中断して採取する。傘を裏返すと、淡い黄色で美しい。
 3年前、2株採取したキノコ木に向かうと・・・残念ながらマメだった。1株はまあまあのサイズだが、他の3株は、余りにも小粒。大きくなっても良株にはならないであろう。
 5年前、4kgの大株に当たった巨木に向かうと・・・右サイドに開いた黒マイタケがあった。残念ながら、巨木の割には、ちょっとサイズが小さい。もしかして、大株は既に誰かに採られたのだろうか。
▲大量に腐っていたサワモダシ、もったいない!
▲ツキヨダケ ▲シイタケ
オニナラタケ

 ナラタケは、ナラタケモドキと合わせて2種と言われていたが、現在は9種類に分類されている。ブナ・ミズナラ林でよく出会うのは、ナラタケ、ナラタケモドキ、オニナラタケ、キツブナラタケの4種。オニナラタケのカサは、饅頭型から成長すると丸みを帯びたまま平らに開く。全体的に肉厚で黒褐色系、柄は根元が太い。綿毛状の鱗片は中央付近ほど多い。
 5年前に当たったキノコ木を探ってゆくと、根元のまん中に傘が開いた株が1個あった。左上を見上げると、草に隠れるように1株があった。急斜面なので、とりあえずザックを木の根の裏側に置こうと右サイドを回り込むように駆け上がると・・・。
 おっおっ・・・。傘が開いた黒の大株だぁ。やっと当たった。はやる気持ちを抑えて、背負っていたザックを根元に置き、風呂敷を広げる。根元の下から左回りに採取し、風呂敷の上に置く。
▲根元中央・・・傘が大きく開いた茶系マイタケ ▲黒系マイタケ
▲大小5株、5kgほどの収穫

 木漏れ日を浴びながら、本日の獲物を眺める。天然マイタケの香りを楽しみながら、水分を補給し、パンをほおばる。疲れもストレスも、遥か彼方にすっ飛んでいくのが分かるほど、気分は爽快となる。風呂敷の四隅をキッチリ結び、ザックに背負う。ズシリと重くなる。山の神様からの贈り物に感謝、感謝である。
 かつて大株が当たった木は、気配なし。昨年出たとすれば、一般的に今年は休みのはず。しかし昨年は、腰痛でマイタケ採りは2回しか行けず、奥地の状況がどうであったか皆目分からない。マイタケは、生える木を覚えるだけでなく、いつどれだけ収穫したかのデータも欠かさずもっていないと、発生を予測できない。だから毎年欠かさず、数多く山を歩いた人にはかなわない。
 斜面を登って行くと、マイタケが生えそうな半枯れのミズナラが仁王立ちしていた。駆け上がると・・・何と根元一面に、あの美味しいキツブナラタケが群生しているではないか。しかも、まだ傘が開き切る前の極上品。ザックを下のミズナラの根元に置き、まずは生えている状態を撮影する。
 一部ナイフを使いながら、泥やゴミが入らないように丁寧に採取する。サワモダシは、大量に発生するが、腐るのも早いだけに、こういう極上品に出会う確率は低い。それだけに、撮る、採るだけで楽しい。これを背負うと、もはやマイタケ採りは中止せざるを得なかった。   
 舞茸谷を下る途中、かなり低い高度で飛び回るヘリが目の前に現れた。誰かを捜索するヘリに違いない。もしかすると、朝のパトカーは、事故などではなく、マイタケ採りの人が行方不明になったのではないか・・・下る途中、注意しながら下るも、その痕跡はなかった。
▲ミズのコブコ ▲アキノキリンソウ
▲カメバヒキオコシ ▲一般的なナラタケ
マイタケ採り遭難

 崩壊林道を歩いている途中、3人組のマイタケマンに出会う。彼らに聞くと、昨日、80歳ぐらいの人が行方不明になったという。車止めは、パトカーや消防署の山岳遭難捜索用の赤い車、捜索隊員などでごったがえしていた。聞けば、まだ見つかっていないという。

 9月23日付け秋田魁新報によると・・・大仙市協和の79歳の男性が秋田市河辺岩見の山中へキノコ採りに入ったまま行方が分からなくなっている。21日午前6時頃、友人の男性と二人で山林に入ったが、約束の正午頃を過ぎても待ち合わせ場所の入山地点に戻ってこなかった。22日は秋田東署の署員ら計18人が午前6時半頃から捜索したが、見つからなかった。23日も早朝から捜索するという。

 思えば、今から4年前、閉塞性動脈硬化症を患い、舗装道路でさえロクに歩けない病人が、マイタケ恋しさに、同じ山に入り、斜面を這ってマイタケを採ったことを思い出した。冷静になって考えると、何ともウルトラ馬鹿な行動だったが、それだけマイタケの魔力は強いことも確かである。当時の記録は、「初物マイタケ2011」を参照。

 79歳の年齢を考えると、相当足腰が弱ってきているであろう。周りからは、「もう年だからキノコ採りは止めたら」と言われているに違いない。それでも、マイタケが生える頃になると、黙っていられなくなる。この気持ちは、理屈ではなく、血が騒ぐとしか言いようがない。だから、身近な現場で起きた遭難騒動は、他人事とは思えない出来事であった。

 幸いなことに遭難者は、23日午前10時頃、仙北市西木町桧木内の沢で無事発見され、県防災ヘリ「なまはげ」で救助されたという。

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