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 2015年10月5日(月)、相棒と二人、定番のマイタケ谷とは水系の異なる未知のマイタケ山に入ってみた。その源流部一帯は、ミズナラの巨樹が素晴らしく、中にはミズナラの森と呼べるような場所もあった。当然のことながら、マイタケのプロをはじめマイタケ狂の人たちが、こういう場所を見逃すはずはない。そんな人たちが週末に歩いた踏み跡は、至る所にあったが、幸運にも黒マイタケに当たった。けれどもナガレ寸前のマイタケやナガレが多く、新規のマメも少ない。マイタケ採りもいよいよ終盤に入ったようだ。
 最近、気温も急激に下がり、朝晩の冷え込みも一段と厳しくなってきた。マイタケ山は、早くも黄色に色づき始めていた。今後は、晩生のマイタケ、いわゆる極上の霜降りマイタケが生えてくることに期待したいのだが・・・。
 マイタケ山周辺の源流部は、山釣りで二度ほど訪れたことのある場所である。急斜面の尾根沿いにミズナラの巨樹が多かったのが印象に残っていた。それだけにマイタケ採りに入る人も多いに違いない。土日に多くのマイタケマンが入った直後の月曜日・・・歩いてみると、めぼしいキノコ木には、ほぼ100%踏み跡があった。それでも丁寧に探ると、採り残しのマイタケがあった。
 ミズナラの密度が高い急斜面の尾根筋を歩く。キノコ木を中心に明瞭な踏み跡がついていた。息切れして休もうとすると、すぐ目の前にいかにもマイタケが生えそうな老樹が仁王立ちしていた。根元から下を覗くと、葉陰の下に黒マイタケの株が見えた。
 巨木の割には、2株とも小さい。恐らく、大株が採られた後、二番手に生えてきたものであろう。それでも黒マイタケ・・・大事に採取する。
▲ミズナラの森

 この森は、奥が深く伐採から逃れた原生林地帯。しかもブナではなく、ミズナラが圧倒する森・・・マイタケマンなら泣いて喜ぶほどの典型的なマイタケの森である。当然のことながら、マイタケが生えそうなキノコ木を辿るようにマイタケ道がついていた。
当たり・・・黒マイタケ3株

 ミズナラの森を彷徨い歩くと、ほどなく相棒が「大株があるぞぉ〜」と叫んだ。駆け寄ると、黒マイタケの良株であった。相棒が言った。「当だれば、疲れが吹っ飛ぶな」。そのとおりである。
 大事に採取し、風呂敷に包んでザックに背負う。このマイタケに当たっただけで、来たかいがあった。初めてのマイタケ山であったが、このミズナラの森を真っ先に発見できたのはラッキーであった。これは、単なる偶然ではなく、マイタケ採りの感と地図を徹底的に読んだおかげだと思う。
▲黒系のマメ ▲黒系のサワリ
 
 他にマメ1個と、大株になりそうなサワリの株があった。この小さな2株は、次回のために残した。以降、キノコ木らしき半枯れのミズナラを見て回ったが、次回につながるマメは全く見つけることができなかった。もしかしてこれから不連続で晩生のマイタケが出てくるのかも?・・・そんないつ出てくるか分からない霜降りマイタケは、収穫ゼロを覚悟して10月中旬から下旬頃まで山を見回り続ける人にしか採れない・・・いわばプロの領域のような気がする。

 プロは、同じキノコ木のデータを持っているといっても、早生、中生、中晩生、晩生といった時期別のデータも持っている。その膨大なキノコ木データは、素人マイタケマンがいくら努力しても足元にも及ばないであろう。
▲ナガレ寸前のマイタケ3株

 次なる当たりは・・・キノコ木の下から見上げて、左肩に1株、まん中に1株、右肩に1株、合計3株あった。残念ながら、白茶系でかつ傘が開き過ぎていた。傘裏を見れば分かるのだが、ナガレ寸前のマイタケであった。まだ食用には十分なのだが、品質が良いとは言い難い。持ち帰るか迷ったが、品質の悪いものを背負うと重くなるだけだ。
 これを採らずに放置すれば、根は死滅菌に覆われ、次なる発生時期が2〜3年ほど遅れるといわれている。だから丁寧に切り取って、キノコ木から離れた斜面下に捨てた。また、根の周り一面にナガレたマイタケもあった。真新しい踏み跡はあるものの、マイタケの気配は濃厚であった。さすがはミズナラの森である。その事を確認できただけでも、大きな収穫であった。
 ミズナラの森から一旦沢に降りて、別の尾根に向かおうとすると、ブナの倒木に生えていたサワモダシに出会った。よく見ると採られた後だが、週末の雨で再度出てきたようだ。
▲黄色く色付き始めたマイタケ山 ▲真っ赤に紅葉したヤマモミジ
▲雨に打たれてナガレたマイタケ ▲ミズナラの老木に生えたマスタケ

 ミズナラの密度が濃い尾根は、ことごとく踏み跡があった。車止めから遠い源流部でさえ、踏み跡のない場所は皆無・・・マイタケマンたちの凄まじい執念を感じた。裏を返せば、それほどマイタケの魅力は大きいということだろう。このまま同じ場所を下るようでは、当たる確率はゼロ。二手に別れて尾根を下ることにする。

 私の選んだ尾根は、ミズナラの密度が低いブナの森である。なぜなら、密度が薄い分、それだけ人が歩いていないからである。案の定、踏み跡は消えた。ただし、ミズナラの本数が少ない分、当たる確率は、依然として低いことに変わりはない。
 一面ブナの森が覆う急斜面・・・ミズナラの木は見える範囲で1本あるかないかである。そんな森を下る途中、何とブナの根元に生えていたマイタケを発見!!まさか〜・・・一瞬、我が目を疑った。
 マイタケのプロは、ブナの木には絶対に生えないという。良く見ると、すぐ右隣にミズナラの巨木があった。その根元には傘が開いたマイタケが2株生えていた。恐らく、ブナの根元の下を潜って張り巡らされたミズナラの根から生えたものであろう。
▲スワリの黒マイタケ ▲ヌメリツバタケ

 傘は大きく開いているものの、ナガレ寸前の白茶系のマイタケと違って、傘裏や茎がしっかりしている。さすがは黒系マイタケだと思う。新しい風呂敷に包んで背負うと、ズシリと重い。満足して沢に向かって舞い降りた。そして何より、マイタケの新たなフィールドが増えたことに嬉しさを隠しきれなかった。今年は、新たなフィールド開拓として、もう少しマイタケ山一帯を歩いてみようと思う。     

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