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 2015年10月26日、待ちに待ったナメコがやっと出てきた。今年は黄葉が一週間ほど早かったから、ナメコが出るのも早いと予想していたが、見事に外れた。一週間前は、ナメコの気配がほとんどなかった。一転、紅葉晩期になってやっとナメコが出てきた。結果的に、ナメコの最盛期は10月下旬から11月上旬というナメコ採りカレンダーに狂いはなかった。艶やかな黄葉を愛でながら、ナメコを撮る、採る・・・今年最後の山遊びを飾るには、これ以上のものはない。森の恵みに感謝、感謝・・・。
 最近は、黄葉が最も美しくなる条件の一つ・・・最低気温が5℃を下回るほど寒くなってきた。その黄葉を愛でながら降り積もる落葉の上を歩くのは楽しい。カサカサ、カサカサと乾いた音が心地よい。途中、残していたマメは、全てきれいに採られていた。ひたすら奥地のナメコの森へと向かった。
 ナメコの森に辿り着くと・・・ブナの倒木にナメコ発見。豆粒からやや成長した幼菌、傘が開いた成菌、その中間とバラエティに富んでいる。やっと、ナメコの盛りがやってきたようだ。小躍りしながら撮る、採る。
 いつものルートは、週末に歩いた跡があるので一旦沢に降りて対岸の森へと向かう。標高の高い山頂から中腹部は、ほとんど落葉し、白い裸木が目立つが、谷筋や低木類は黄葉、紅葉真っ盛りであった。沢に降りると、ちょうど、沢の上流部から太陽の光が射し込み、ナメコの森は、今まで見たこともないほど美しい輝きを放った。
 急斜面の尾根を上ると、ミズナラの根に腐ったマイタケがあった。ブナが目立つが、所々にマイタケが生えそうなミズナラの大木があった。立ち枯れのミズナラには、ムキタケが生えていた。休み、休み上っていると、先行していたダマさんが、「あったどぉ〜」と叫んだ。
 傘が7分開き・・・ちょうど食べ頃サイズのナメコが倒木を埋め尽くすように生えていた。枯葉が旬のナメコの群れに落ちる風景は、本格的なナメコ採りシーズン到来を告げる。
 傘裏が白から淡い黄色系が旬の証。ナイフで切り取ったナメコをザルで受け取るように採取すると、効率的かつ落葉や土を混ぜることなく綺麗に採取できる。
▲ムキタケ・・・ゼラチン質で汁がいつまでも冷めないので鍋物に合う。
▲傘が開いたナメコと幼菌
▲多雪地帯に適応したエゾユズリハ ▲エゾユズリハ群落でムキタケを採る
▲見上げれば、燃え上がるような黄葉
▲ナメコの大群生
▲ナメコの群れを撮る、採る
▲錦秋のナメコの森、数百年ブナの倒木には・・・
 ムキタケとナメコがあちこちに生えていた。それを概観すれば、斜面上部にはムキタケ、水分の多い斜面下部にはナメコが生えていた。ナメコは、日当たりの良い傾斜した斜面の倒木下部に集中して生えることが多い。ただし、雨の多い年は倒木の下部より上部に生えることが少なくない。
▲倒木下部に生えた幼菌
▲倒木下部に生えた成菌・・・落葉と黄葉に染まった傘の群れ
 黄葉に染まったブナ帯の美を鑑賞しながら、キノコ目になって歩けば、身も心も軽く楽しい。やはり自然の造形美に勝るものなしである。
▲錦繍のブナ林
▲旧マタギ道に林立するブナの巨木

 旧マタギ道は、ほとんど歩く人がなく伸びた草木に埋もれている。数百年ブナの幹には「昭和18年」などと刻んだナタ目が残っている。今は、この森一帯を縄張りにしていたマタギが完全に消えてしまっただけに、ナタ目は希少な遺産のように見える。少なくとも、山に生きた人々のナタ目を「落書き」などという人に、山の文化を語る資格はないように思う。
 帰る途中に見つけたナメコの群生。傘が6〜7分開きで、かつ肉厚で美味しそう。ナメコの傘表面の色は、落葉の色と同系統の色で、まるで生きた保護色のようにも見える。
 楽しい、楽しいナメコ採り
▲香りが高く煮付けが美味しいブナハリタケ ▲熟して落下したヤマブドウを拾う
▲新しく倒れたブナ。

 ナメコ採りは、倒木のデータが全て。倒れてから3年目になると、ナメコやムキタケなどが生えてくる。倒木の皮がなくなるまで生えるが、5〜6年もすれば朽ち果てる。従って新しい風倒木のデータを逐一追加更新していくことが重要である。
 かつて山は、信仰登山やブナ帯の恵みを求めて分け入る、常に暮らしと密着した山の文化そのものであった。それが次第に実利を求めない近代登山へと発展してきた。水も食料も全て背負い、人の手が入った登山道を登り、山小屋に泊まる。実利を求めない趣味的登山へと発展・・・それは、実利を求める山の文化より、高度な文化だと錯覚しているように見える。

 だから実利を求めない登山や紅葉狩りには、行列ができるほど人が押し寄せるのに、黄葉に染まったナメコの森は、無人に等しい。まるで身も心も貴族になってしまったのだろうか。「自然に帰れ」と言う前に、「庶民に帰れ」と言いたくなるほど、誠におかしな日本・・・。

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