2016マイタケ採りPART1

 2016年9月22日、この時季は例年なら車止めは満車状態になるはずだから、少し手前の場所に駐車した。薄明りとなる午前5時頃、車止めを出発。休日にもかかわらず、マイタケマンの車が意外に少ない。マイタケマンたちは、先週の3連休にどっと押し寄せていたが、結果は「マイタケ不作」だったのであろう。連日高温が続き、マイタケの出が遅い。最高気温が25度を下回ったのは、ここ数日前のことである。その秋らしい涼しさがやっと来たので期待したのだが・・・。
 暗い中、河辺三内の交差点に来ると、秋田東警察署の人たちに停止させられた。消防署も含めて物凄い数のパトロール隊・・・何か事件事故でもあったのか、と思いきや「キノコ採りですか」、「はい」、「クマに気を付けてください」 ・・・チラシ2枚と缶詰タイプのパン「サバイバルパン」をもらった。

 今年はクマによる4人連続殺害事件をはじめ、8月末時点で死傷者数は17人、秋田県自然保護課では初めて「ツキノワグマ出没警報」を発令している。加えて、毎年のことだが、マイタケ採りの遭難事故が極めて多い。改めて注意したい。
 クマ避け鈴は、ザックと腰に2個ぶら下げ、いつでも取り出せるように右側の腰には専用ホルスターに入れたクマ撃退スプレーを下げる。不覚にも、せっかく握ってもらったオニギリ4個を忘れてしまった。予備食としてパン、大福、ガッコ、チョコレートを持っているので問題ないが、予備として先ほどもらった「サバイバルパン」を背負う。 
 いつもお世話になっているキノコ木に向かうと、下側、両サイドには何もなかった。上側を覗くと、あったがサワリの1株だけ。ガッカリしながら根元に上がって左サイドを見ると・・・ 
 何と黒マイタケ2株を見逃した上に、足で一部を潰していた。写真のとおり、下からは草が覆いかぶさり見えない状態であった。しかも、黒系マイタケは保護色に近く、傍まで来ないと判別が難しい・・・マイタケを壊したど素人対応に苦笑いしながら、ザックを背中から下す。それでもマイタケに出会えた嬉しさがジワジワと湧き上がってきた。
 二株を大事に風呂敷に包む。サワリの1株は次回のために残す。幸先良いスタートと思ったが・・・以降、過去に生えたキノコ木を中心に巡回するもマメすらない。 
 やっと当たったキノコ木を見て唖然・・・木の周りにグルリと8株も生えているが、全て小株ばかりで当たったうちに入らないようなものばかり。それでも無いよりはましである。 
 次の尾根に向かって移動しようとすると、藪の向こうからクマの唸り声が聞こえた。腰に下げているクマ撃退スプレーを確認し、背中を見せないように反対方向に移動し難を逃れる。
 やっと見つけたと思ったら、小株でかつナガレ寸前のマイタケ2株。傘裏の白い部分には、胞子の粉が付着・・・品質ランク外。その後、小株を2株採取しただけ。
 次回につながるマメがあればまだ良いのだが、それすらほとんど見当たらない。だから殊の外疲れる。ミズナラの大木に腰を下ろし、何度も噴き出す汗を手ぬぐいでぬぐう。マイタケ山を一望しながら、これじゃ大当たりは夢の又夢である。
▲ヤマブドウ

 ミズナラのドングリは、風がある度に落下・・・ブナの実は皆無だが、心配していたドングリは結構落ちている。クリは豊作・・・それなりにクマの食べ物はあるように思う。問題はキノコ。シイタケ、ブナハリタケ、マスタケ、サワモダシ、ヤマブシタケ、クリタケといった雑キノコもほとんど皆無。毒キノコの筆頭・ツキヨダケも見当たらない。どうしたことか、と考えていると、大粒の栃の実がヘルメットを直撃した。
 車止めに着くと、ベテランのマイタケマンたちは、それなりに採ってはいるもののいずれも少ない。「今、出ていないと、今年はダメだな」とか、「今年のマイタケは早く終わるんじゃないか」といった懸念の声が聞かれた。それでも、マイタケを求めて山を歩けば、不思議なほど歩ける。60歳前後から閉そく性動脈硬化症、膝痛、腰痛を患い、年々体力、気力が衰える老後・・・そんな私が心身ともに健康を維持するためには、山を立体的に歩くマイタケ採りは欠かすことのできない苦しみ、楽しみである。
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