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イワナ天国でクマと遭遇!

 2018年5月下旬、久々にクマの密度が最も高い秘渓の源流部に向かった。1日目は雨にたたられたが、残り2日間は快晴に恵まれた。丸々太った尺イワナは10本・・・新緑、山菜、イワナ釣りを100%楽しんで帰る途中、推定150kgの大クマ(オス)に遭遇。その距離は、わずか20mほど・・・一生に一度あるかないかの絶好のシャッターチャンスが訪れた。ところが、何故か「カード異常」でシャッターが押せない。動画撮影をしようとしたが、全く作動しない・・・愛嬌たっぷりの主だっただけに、今でもその悔しさがこみ上げてくる。
  • 5月18日、秋田県内は各地に避難勧告がでるほどの記録的な大雨に見舞われた。林道の浸食は著しくデコボコ状態になっていたが、何とかいつもの車止めに辿り着くことができた。途中、山で食べるワラビを採取する。
  • タニウツギの花はまだツボミ・・・一般的に「タニウツギの花が咲けば、タケノコ採りシーズン到来」と言われている。まだツボミなので、期待していたタケノコの気配は皆無であった。
  • キバナイカリソウ・・・淡い黄色のイカリソウ
  • ウワミズザクラ・・・コップを洗う細長いブラシのような白花
  • オオバキスミレ・・・黄色のスミレ
  • ヤマツツジ・・・深緑に映える朱赤色の花
  • ヒメアオキの雄花。雌雄異株。
  • ヒメアオキの真っ赤な実(雌株)
  • よく歩かれている本流筋の杣道から枝沢に入ると、次第に訪れる人は稀で、踏み跡はヤブと化していく。かつては森林起動が走っていた跡だが、今やクマ道と化している。クマ避け鈴とクマ撃退スプレーを腰に下げていないと、安全に歩くことができない獣の世界になってしまった。それほど奥山のクマの密度も格段に高くなった。
  • その杣道のど真ん中にあった真新しいクマの糞。 今は、山菜類を食べているので、繊維質を多く含み、黒くべとっとしている。 予定していたテン場近くにもクマの糞があったが、全く気付かずに踏んづけてしまった。この時、何となくクマに会えそうな予感がしていた。
  • 今回、初めて山釣りに持参した「Nicon COOLPIX P900」・・・描写性能は劣るが、光学83倍の超望遠ズーム(24~2000mm)で、重量も900gと軽い。ハードな山釣りをしながら野鳥や野生動物を撮るには最適なカメラだ。今年の3月から野鳥やニホンザル、カモシカの静止画・動画撮影をしてきたが、素晴らしいの一言。いつ出会うか分からないツキノワグマを撮るにも最適なカメラだと思う。それだけにクマとの遭遇を願っていたが・・・。
  • 二日目、これ以上ない快晴に恵まれる。エゾハルゼミやヤマガラ、ヒガラ、カケスなどの賑やかなコーラスが新緑の森と谷に木霊する。深山幽谷の岩魚谷を目指すのは、私とダマさんの二人。
  • 相棒が走るイワナに、堪らず「竿、出さにゃぎゃ」と言う。こんなところで竿を出してしまったら、魚止めまで行くことはできない。大高巻きの難所まで真っすぐ歩くことにする。
  • 難所の高巻き・・・一人では突破できない難所。ここまで、テン場から真っすぐ歩いて1時間。この難所の高巻きには30分を要した。危険個所にザイルを張る位置を移動するため、かつてのザイルを回収し束ねて帰りの降り口にデポしておく。
  • 秘渓の源流部は別世界・・・スノーブリッジや残雪が随所にあって、早春に逆戻りしたような風景に一変する。萌え出たばかりの新緑が眩しいほど輝いて見えた。昨日の雨と雪代で、流れは笹濁りの状態・・・絶好の釣りコンディションであった。
  • 第一投目から丸々太ったイワナ・・・北海道のエゾイワナのように、斑点は大きく鮮明な個体が生息している。V字峡谷に太陽の光が降り注ぎ、踊る魚体が渓流の宝石のように輝く。二人で交互に釣り上がったが、釣り人は稀なようで、最初から爆釣モードに突入。
  • 清流から丸太イワナが飛び出す・・・新緑のシャワーと清冽なマイナスイオンを全身に浴びて、8寸~尺前後の丸太イワナの入れ食いを満喫。まさにイワナ天国だ。
  • サンショウウオを2匹、丸呑みしていたイワナ
  • 成長の速さを物語る魚体・・・顔が小さい割に魚体は太く大きい。一見、無着色斑点のアメマス系に見えるが、よく見ると薄い着色斑点があることからニッコウイワナ系である。
  • 一度も伐採されたことがない源流部・・・一帯はブナの原生林地帯で、エサがすこぶる豊富なことから、成長も速いのであろう。
  • 沢岸の岩場にあったクマの糞・・・沢通しに歩けば、至る所にクマの痕跡があったが、イワナ釣りに夢中でそれを撮る余裕なし。
  • 新緑の岩魚谷・・・まさにイワナ天国に迷い込んだような気分で釣り上がる。日常のストレス解消には、これ以上の非日常の世界はないであろう。だからついつい「イワナ天国」あるいは「イワナの楽園」を連想してしまう。
  • シラネアオイ ・・・ゼンマイが生える雪崩斜面に株となって咲いていた。
  • リュウキンカ 
  • ニリンソウ 
  • ヤマワサビの白い花 
  • エゾエンゴサクとキクザキイチゲ 
  • 新緑に映えるムラサキヤシオツツジ・・・下流部は、緑も濃く、朱赤色のヤマツツジが満開を迎えていたが、源流部は萌黄色の新緑に映えるムラサキヤシオツツジが満開を迎えていた。植物を季節カレンダーとして見れば、早春と晩春ほどの差がある。 
  • 雪渓の下にリュウキンカの黄色い花が咲く
  • 雪が解けたばかりの斜面には、春を告げるバッケ(ふきのとう)が・・・まだ残雪が多い源流部は、早春から初夏までの花や山菜を楽しめる。それだけに楽しみは無限大に広がる。
  • またまたクマの糞・・・キクザキイチゲの群落を過ぎ、淵を高巻こうと斜面を上ると、クマの糞があった。人跡稀な原生林地帯だけに、クマの密度はすこぶる高い。
  • 中間部に懸かる大滝・・・一旦竿を畳み、大滝の左岸を高巻く。この滝壺より上流部は、サイズが尺前後とワンランクアップした。 
  • 沢沿いに残雪が点々とあるイワナ天国を釣る。
  • 34cmの尺イワナ・・・頭がデカク、やや痩せていたが今回最大のサイズ。
  • 穏やかな河原の両岸が広く平らな別天地に一変・・・一帯はヤマワサビの白い花とニリンソウ、エゾエンゴサク、リュウキンカの黄色い花が咲き乱れる花園になっている。さらに沢筋にはクマの大好物・エゾニュウが群生している。 
▲クマ道 ▲クマの寝床
  • クマ定番の寝床・・・右岸の平らな草地に明瞭なクマ道とクマが昼寝をする定番の寝床があった。そこは大好物の山菜が群生している花園で、寝床のすぐ右手には清流が流れている。花園を観賞しながらクマ道を歩き、エゾニュウを食べた後、渓流で喉を潤し、定番の寝床でせせらぎの音をBGMに昼寝をするのであろう。クマの立場に立って考えると、一級品の寝床であった。
  • 時計を見ればちょうど12時・・・相棒は嫌な予感がしたらしく、昼食前に爆竹を鳴らした。その対岸の日陰でお湯を沸かし、昼食とする。 
  • 昼食後、釣りを再開。木漏れ日が射し込む穏やかな流れの瀬から尺前後の丸太イワナが竿を弓なりにする。ほどなく相棒のエサがなくなる。もはやキープする必要はないので、写真を撮ってはリリースしながら魚止めをめざす。
  • 丸々太った尺イワナ
  • 魚止めのゴーロ滝の岩場にいたキセキレイ・・・川の上流部にキセキレイ、中流部にセグロセキレイ、下流部にハクセキレイとおおまかに棲み分けている。
  • 途中、雪代と崩れた雪渓の影響で濁りがひどくなった。久々に二又上流の魚止めを確認し竿を畳む。二人は100%満足して、超望遠デジカメを首に下げ、「クマでも出てこないかなぁ」と冗談交じりに話しながら下ると・・・
  • 森の王者・クマと遭遇・・・釣り上がる上る途中、クマの寝床があった場所まで下ると、先ほど冗談で話していたクマが目の前を悠然と歩いていた。それもこれまで見た中で最も大きいクマであった。定番の寝床で昼寝をしていたが、我々の存在をいち早く察知し、無用なトラブルを避けるために、一定の距離をとってくれたのであろう。しかも、慌てる様子は微塵もなく悠然としていた。「森の王者」の風格が全身にみなぎっていた。その恐怖感を全く与えない冷静な行動に脱帽であった。
  • 推定距離は、およそ20m。超望遠レンズならドアップで撮るにも楽勝の距離。まさに一生に一度あるかないかのシャッターチャンスが眼の前に現れたのだ。ところが、何と、何と、これまで一度も見たことがない「カード異常」のエラーメッセージが出た。カードを取り出し、再度挿入しても同じ。そうこうしているうちにクマは、大きな黒いお尻を左右に振りながら斜面の小沢を上り、ヤブの奥に。それにしても愛嬌たっぷりの森の王者であった。それだけに撮影に失敗した悔しさは計り知れない。
  • 電池を切ってから、カードを入れ直してみると、「カード異常」は消え、何とか作動するようになった。上の写真は、ヤブに隠れてしまった黒い物体が大クマなのだが・・・現場を見ていない人には、単なるヤブにしか見えない、残念、無念!
  • 考えてみれば、新しいSDカードは職場のパソコンに挿したまま忘れてきてしまった。急きょ、家にある古いSDカードを代用に使ってしまった。それが今回のトラブルの最大の原因であった。それにしても、こんな時に「カード異常」が出るとは・・・悔やんでも悔やみきれないミスであった。今でも、思い出すたびに悔しさがこみ上げてくる。それほどの大失敗であった。
  • イワナ天国の岩場に群生していたゼンマイ・・・ゼンマイは、雪が消えてから半月余りで芽を出してくる。雪渓が残る深い谷が新緑に包まれると、ゼンマイ採りのシーズンである。この奥地の谷は、ゼンマイ採りの好きな人にはたまらないほど群生している。 
  • 極上のシドケ(モミジガサ)・・・茎が太く、葉が開ききらない若芽の頃が旬。両岸の斜面は傾斜がきついので、アイコ(ミヤマイラクサ)は皆無。山菜としては、ゼンマイやシドケ、ウド、ヤマワサビ、エゾニュウ、アザミ類が目立つ。 
  • 旬のウド・・・葉が開く前の若芽が旬。この谷は、雪崩の多いV字谷だけに堆積した崩壊斜面に極上のウドが群生している。 
  • スミレサイシン
  • ミヤマカタバミ
  • 春紅葉を演出するベニイタヤ 
  • サワグルミの花・・・枝から垂れ下がる
  • 最後の難所・・・回収したロープを別の位置に張り直しして、絶壁が連なる難所を突破し、本流に降り立つ。テン場まで真っすぐ下って2時間半。前回はワンランク下の山釣りであったが、今回はかなりハードな山釣りであった。それだけに満足度は高い。
山釣り定食
  • 尺イワナの刺身・・・薬味はヤマワサビがベスト
  • イワナの唐揚げ
  • シドケのおひたし
  • ミズの塩昆布漬け
  • ワラビとウドの酢味噌和え
  • イワナの塩焼き
  • 山の幸フルコース・・・いつものことだが、ブナ帯の森林浴、清冽なマイナスイオン、瀬音をBGMに、盛大に燃え盛る焚き火を囲む。源流酒場にズラリと並んだ渓の幸、山の野菜のフルコースを味わいながら酒を飲み語らう。苦労を厭わず、一日中険しい谷を歩き回れば、その感激も一際大きい。お陰で、寿命が5年ほど伸びたような満足感に包まれた。
  • ベニイタヤ 
  • カツラ 
  • トチノキ 
  • ホオノキ 
  • クロモジ 
  • ミズナラ 
  • ブナの実・・・もうすでにブナの実が一杯ついていた。これだけ実っていれば「豊作」の予感がする。
  • またまた、真新しいクマの糞・・・帰路、杣道のど真ん中に真新しいクマの糞があった。昨年のクマの捕獲数は、想像を遥かに超える824頭にも達している。にもかかわらず今年の目撃件数は昨年を上回るペース。県の新たな生息数の推計値は、千頭から倍以上の2,300頭に修正された。
  • 今回、奥山の源流部を歩いて感じることは、里だけでなく、奥地のクマの密度も一様に高くなっていると強く感じる。この感覚で推理して見ると、奥山のクマの生息密度がこれまで以上に高まり、そこから押し出されたクマが里へと生息分布を拡大しているように思う。そう考えると、2,300頭という推計値は、まだまだ低いように思う。 

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