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2019初のイワナ釣り

 今冬は海岸部の雪が少なかった。2019年4月10日、最も雪解けが早い日本海側の小河川に入渓してみたが、残雪は平年と変わらず意外に多かった。まだ大きな雪代がないようで、底石には黒い苔が残っていて滑りやすい。さらに昨年の集中豪雨の影響か、イワナのポイントが土砂に埋まっていたのにはガッカリ。それでも初物イワナをいただくには十分の釣果があった。
  • 春告花・・・秋田では、里山に春を告げるマルバマンサクの花が満開に咲いている。今回入渓した奥地でも、分厚いスノーブリッジから顔を出したマルバマンサクの枝先に黄色い花が白銀に輝き、春の訪れを実感させてくれた。 
  • 4月は恋の季節・・・エナガやミソサザイは、ペアで巣づくりに余念がない。全山新緑に包まれ、山笑う季節になると、そのやわらかい葉を食べるイモムシ類が大発生する。小型の野鳥たちは、そのイモムシ類をエサに子育てを始める。故に4月は野鳥たちの恋の季節でもある。
  • 川沿いの林道は、数年前から崩壊が著しく、かなりの距離を歩かねばならない。車止めから上り坂が続く林道を1時間余り歩く。半年間鈍った体にはツライ。ほどなく全身から汗が噴き出す。山で汗をかかないことには体が軽くならない。我慢して歩き続ける。なかなか足が前に出なくなった頃、やっと谷に下りる地点に辿り着く。しばし腰を下ろして休んでから、谷に向かって下る。中流部でも、意外に残雪が目立つ。
  • 超渇水・・・渓流の流れに力を感じない超渇水。底石も黒い苔でヌルヌル。さらに中流部は入渓者が多いらしくアタリが遠い。
  • 全身真っ黒にサビついたイワナ・・・サイズに不満は残るものの、やっと初物イワナが釣れた。よく見ると、全身真っ黒にサビついたまま。本格的な雪代の洗礼を受けていないのであろう。腹部と側線前後の斑点が濃い橙色に染まっているのが目立つ。
  • アタリも遠く、たまに釣れてもサイズに不満が残る。
  • 残雪が目立つ奥地まで釣り上がると、俄然イワナの食いは良くなった。ポイント毎に良型イワナがヒットするようになった。恐らく、この奥地は今年一番の入渓者であろう。
  • 刺身サイズのイワナが竿を弓なりに。この野生の鼓動を味わうと、眠っていた釣りバカがむくっと起き出す。そして「走れ、釣りバカ」に。つまり頭の中はイワナ一色、その分集中力が増すので、ヒットの確率も格段にアップするというわけ。
  • 早春らしいイワナを撮るには残雪が不可欠。釣り上げたイワナを残雪の上で躍らせ撮る。白銀に黒っぽい魚体と濃い橙色が浮きたつ。 
  • これも刺身サイズ・・・顔は黒くサヒついているが、全身に散りばめられた斑点は大きく鮮明で美しい魚体。 
  • 上るに連れて両岸に残雪が目立つようになる。 
  • キープしたイワナが10匹ほどになると、またアタリが遠くなった。
  • ザラ瀬が続く源流部・・・ブナが根こそぎなぎ倒された無残な斜面や、かつてイワナのポイントであったカーブ地点は、ことごとく土砂に埋まっていた。これじゃ釣りにならない。まだ午前11時だが上二又に着いてしまった。
  • 上二又上流部・・・二又で昼食後、相棒は左の沢へ、私は右の沢に入ってみた。残雪の多さは、これまでと桁違いに多い。右の沢は、ザラ瀬の続く沢だが、案の定、少ないポイントが土砂で埋まったまま。ほどなくスノーブリッジの連続となる。 
  • 今冬は雪が少ないと思ったが、源流部の残雪は平年と何ら変わらない。不思議なことに雪の上には、クマやカモシカ、ニホンザルの足跡が皆無。どこかに一斉に移動したのだろうか。その理由を知りたいと思った。 
  • 沢を下り、ブナが林立する斜面を上って崩壊林道へ 
  • まだ開かないバッケの若芽を摘みながら歩く。 
  • 対岸を眺めると、冬枯れの斜面に残雪が目立つ。まだ眠っているような殺風景な風景・・・これじゃ、イワナの活性度が低いのも理解できる。 
  • カシラダカ・・・頭部は黒いのでオス。鉛色の森で唯一目立ったのは、やはり鳥たち。恋の季節らしく、メスを求めて美声を発するオスや、ペアで飛ぶ姿が見られた。
  • 断崖絶壁が続く上空を旋回する鳥・・・イヌワシが飛んでいてもおかしくない場所だが、風切の横縞模様が目立つのでクマタカであろう。ノウサギやヤマドリでも狙っているのだろうか。 
  • 海岸近くまで下りると、ワサビの花が咲いていたので、少々ナイフで刈り取る。良く洗ってから刻み、熱湯をかけてから味道楽に一晩漬ける。やっぱり美味い。
  • 年々勢力を拡大するトリカブト・・・眼の前に見える緑の草は全てトリカブト。人間はもちろんのこと、クマやサル、カモシカなども食べないので年々勢力を拡大しているようだ。
  • 近年、白神山地周辺でもニホンジカの目撃が年々増えている。ニホンジカが急激に増えると、ニホンジカが好む無毒植物ばかり食べ、有毒のトリカブトが急激に増えることが報告されている。自然との調和、野生動物との微妙な調和が崩れると、イワナを育んできたブナ帯の森はどうなるのだろうか。
  • 早春の草花・・・カタクリとキクザキイチゲの花は、まだ初期段階。山菜シーズンを告げるニリンソウやオオヤマザクラの花が咲くのは、まだまだ先のようだ。
  • カタクリは下痢に注意!・・・昔は、カタクリをおひたしにしてよく食べたが、何の問題もなかった。ところが最近は、下痢の症状が出るようになった。年のせいか、胃腸が弱っているのか定かではない。元々カタクリは便秘の特効薬であっただけに、下痢気味の方は遠慮した方がよさそうだ。
  • 宮沢賢治「若い木霊」

    おおい。まだ寝てるのかい。もう春だぞ、出て来いよ。おい。寝坊だなあ、おおい。
    ・・・
    その窪地はふくふくした苔に覆われ、所々やさしいカタクリの花が咲いていました。若い木だまにはその薄紫の立派な花はふらふら薄黒くひらめくだけではっきり見えませんでした。かえってそのつやつやした緑色の葉の上に次々せわしくあらわれては又消えて行く紫色のあやしい文字を読みました。
    春だ、春だ、春の日がきた」 

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