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令和初の山釣り 山笑う
 令和の時代初のGW・・・イワナ谷は草木が一斉に萌え出し、まさに「山笑う」季節を迎えた。3日間とも好天に恵まれたが、PLフィルターがなければ光の反射が強過ぎて失敗する写真が多かった。それだけに釣れない釣り日和~イワナの食いは鈍かった。けれども新緑に染まった谷では、ニリンソウやシラネアオイ、ミヤマカタバミ、ヒトリシズカ、キバナイカリソウ、スミレ類が咲き乱れ、アイコやシドケ、ヤマワサビなどの山菜が一斉に萌え出し、「山笑う」イワナ谷から多くの元気をもらった。いつものことだが、山の恵みに感謝、感謝である。
  • 今回のパーティは6名。下流部は、谷から峰まで眩しいほどの新緑に包まれていた。
  • ブナの新緑・・・新緑の季節は、ブナ帯の森が最も美しく輝くときである。若葉色、萌黄色に輝くブナ林は、生命力に満ち溢れ、いつ見ても美しい。  
  • カツラの若葉・・・花が終わるとハート形の葉を広げ、みずみずしい萌黄色の若葉が青空に映え、殊の外美しい。 
  • オオヤマザクラ・・・赤みを帯びた若葉が開き始めると、花よりも赤い葉が目立つようになる。 遠くから遠望すると、花は白く、葉は紅葉したかのように見え、ベニイタヤの赤茶色の若葉とともに「春紅葉」を演出してくれる。
  • ベニイタヤ
  • ハウチワカエデ
  • ブナ帯の春紅葉・・・光の反射で、春紅葉の美しさが描写できなかったが、肉眼で見ると、それはそれは美しい。 春の芽吹きの色彩は、一つ一つが微妙に変化し、多様性に富んでいる。時が経つにつれて、オオヤマザクラやヤマツツジ、フジなどの花の色が加わると、色彩は無限に広がる。
  • 野生のイチゴの中で最も美味しいモミジイチゴの白花・・・春、5弁の白い花を下向きに咲かせる。6月下旬、ツキノワグマが繁殖期に入ると、黄色に熟す。ちょうどその頃、生後1歳半の子グマが夢中でキイチゴを食べている間に子別れをする。これをマタギは「イチゴ落し」と呼んでいる。
  • ツボスミレ
  • タチツボスミレ
  • スミレサイシン
  • オオバキスミレ
  • ラショウモンカズラ
  • オドリコソウ
  • ミヤマキケマン
  • ヤマツツジのツボミ
  • クルマムグラ
  • ヒトリシズカ
  • ウルイ(ギボウシ)
  • オオカメノキの白花・・・ブナ帯の森に生え、株立ち樹形になる落葉低木。早春、アジサイに似た白い装飾花をたくさんつけ、北国の山に春がきたことを告げる。亀の甲羅のような大きな丸い葉が特徴。 
  • 黄金色の花を咲かせるエチゴキジムシロ・・・ヤマブキと同じく、黄金色の花が鮮やか。この花を見ていると、令和の時代は金運に恵まれるような気がする。キジムシロに似ているが、小葉は5個で、下方の1対は小さい。
  • テングスミレ・・・花の後ろに飛び出した距がスミレの中では一番長く、天狗の鼻のように見える。
  • ブナの若葉と花・・・ブナはミズナラなどより芽吹きが早く、やわらかい若葉の量も多い。だからブナの若葉は、冬眠明けのクマにとって春一番のごちそうである。
  • 春クマ猟に向かう一人マタギ・・・「なぜ一人なのか」と聞けば、高齢者は引退、若者は奥山の険しい谷や尾根歩きを嫌う。だから一人で猟をするしかない、と呟いていた。さらに、オリワナで捕る夏の駆除が多過ぎて、旬の春クマが少ない。つまり駆除の悪循環で、本来の狩猟が衰退している現実を憂いていた。
  • ベースキャンプのテン場・・・アイコ畑が広がる二又右岸にテン場を構える。3日間快晴の予報につき、雨対策用のブルーシートを張るのは省略した。
  • 令和初のイワナ釣り・・・この時季経験したことがないほど陽射しが強く、気温がグングン上昇。水面近くを小さな虫が無数に飛び交っていた。その光景を見て、毛バリを持ってくるべきだったと悔やむ。案の定、ブドウ虫のエサにはほとんど反応しない。苦戦を強いられる。 
  • 早春のイワナ・・・頭から魚体の半分が黒くサビついている。斑点は大きく鮮明な個体。側線周辺の橙色の斑点と腹部の橙色が鮮やか。 
  • 目印に食らいついた尺イワナ・・・水面を無数に飛び交う瀬にエサを振り込む。道糸につけた赤い目印が瀬を流れていくと、突然、水面を割ってイワナが飛び出す。それも丸々太った尺イワナだったが、反転すると目印をくわえて上流に走った。その引きの強さに、無意識に合わせてしまったが、当然のことながらイワナは目印を離して消えた。この時、目印にも針を付けておけば・・・などとバカげたことを考えてしまった。何のことはない、毛バリなら一発でヒットしたであろう。準備不足を反省するしかない。
  • V字峡谷はアタリが遠い・・・谷が狭くなるV字峡谷は、いかにもイワナが居そうな渓谷美が続いているが、イワナにしてみれば、増水すると下流に流される危険地帯だ。雪代期から最盛期にかけて、イワナは水生昆虫や落下昆虫を捕食しやすい穏やかな瀬が続く安全地帯に移動する。 
  • 瀬が続く穏やかな渓流・・・イワナの食いは依然鈍いものの、粘ると何とかヒットするようになった。 
  • ヒットすれば、ほとんど刺身サイズ・・・このポイントならイワナが必ずいると信じて粘ると、意外にも刺身サイズが釣れた。ということは、釣れない釣り日和に加えて、10連休前半まで、釣り人が多く入り、イワナの警戒心は極めて強いだけであろう。その年一番乗りなら尺イワナが連発するに違いない。
  • 真っ黒にサビついたイワナその1
  • 真っ黒にサビついたイワナその2 
  • 雪代の洗礼を受けた美しい魚体・・・顔の一部にサビが残っているものの、雪代の洗礼を受けでサビがとれた典型的な魚体。それにしても、この沢は着色斑点のニッコウイワナがほとんどを占めた。
  • エゾエンゴサクの群落
  • エンレイソウの珍しい群落・・・エンレイソウは、2~4個程度の小さな群落が多いが、8~10個も連なって生えているのは極めて珍しい。
  • 本日の釣果・・・苦戦を強いられたが何とか目標の6匹に達したので竿を畳む。
  • 宴会用の準備・・・山菜の調理
  • シドケのおひたし
  • アイコのおひたし 
  • アイコときゅうりの酢味噌和え 
  • イワナ料理・・・刺身、皮とアラは唐揚げ用、頭と骨は焚き火に吊るし燻製に。
  • 令和初の源流酒場・・・ブナ帯の恵み~釣りたてのイワナ料理と旬の山菜料理を肴に乾杯!。ブナ帯の冬は長いだけに、何十年やっても「山笑う」季節の源流酒場は喜びが爆発する。釣りバカにとって人生の楽園、人生の桃源郷とは、世俗から遠く離れた別天地=ブナ帯の源流である。
  • 二日目も雲一つない快晴・・・私とダマさんは、昨日納竿した源流部に向かう。魚止めまで、釣る区間は短いが、本日は帰りの山菜採りがメインである。 
  • 巨大なスノーブリッジが残る源流部・・・源流部は水量が極端に減水。雪代が入っているにもかかわらず、水量は渇水状態と同じ。夏になればほとんど枯れた状態になるのであろう。走るイワナも総じて小さい。
  • 釣れない釣り日和・・・久しく入渓者の多い沢を釣ったことがない。それだけに、驚くほど釣れないイワナ谷に対応する技術がない。ただただいたずらに釣り上がるのみ。たまにマグレでイワナが釣れる程度。これには参った。 
  • イワナは苦戦しても・・・肉厚の春ヒラタケの群生に出会う。味噌汁用に採取する。 
  • 渓流を盛んに低空飛行していたカワガラス
  • ミソサザイ・・・繁殖期に入ったらしく、比較的目立つ場所に出てきて、美声で囀りながら縄張りを宣言していた。渓流釣りでは、カワガラスとミソサザイは定番の野鳥だ。
  • キクザキイチゲ
  • 塩焼きサイズのイワナ
  • 魚止めの滝・・・期待に反し、釣れてきたのは7寸ほどの小物。結果論で言えば、二日目の源流部はイワナの種沢のような区間で、イワナが成長すれば水量の多い下流部に下るのであろう。ここで納竿し、下りながら山菜採りを楽しむ。 
  • シドケ(モミジガサ)・・・独特の香り、ほろ苦み、シャキッとした歯触りで、秋田では人気ナンバーワンの山菜である。上の写真のような若芽は天ぷら、傘が開いたシドケはおひたしが定番。 
  • シドケを採る・・・できるだけ茎が太いものを選び、手で自然に折れるところから折り採るのがコツ。葉がモミジの形をしていて美しいことから、採るのが楽しい山菜の筆頭でもある。
  • ヤマワサビの白花も満開・・・根の太いものを選び、数株採取する。
  • ニリンソウが咲き乱れる斜面・・・この周辺の斜面一帯は、一面アイコとシドケの畑。畑で収穫するより、天然の山菜畑で採った方が楽しさは百倍である。
  • アイコ(ミヤマイラクサ)・・・全草に細かい刺があり、その刺にはヒスタミンを含んでいる。不用意に素手で触ると、痛く、痒くなるので、必ず軍手をはめて採る。腐葉土が厚い所では、土中に入った茎の部分は意外に深い。できるだけ深い根元から採取するには、手前に折り返すように折り採るのがコツである。 
  • 根元から折り採ったアイコ・・・茎が太く、根元部分が赤くなっているのが美味い。 
  • 採取したシドケ・・・水洗いした後、水滴がついたまま新聞紙に包む。家に帰ってから新聞紙に包んだ状態で野菜室に保管すれば一週間は保存できる。アイコの保存も同様である。
  • 調理の際の注意点・・・サイズ別に分けて、輪ゴムで束ねる。小さいサイズは天ぷら用、大きいサイズはおひたし用に調理する。 
  • 山菜を買物袋一杯に採って沢を下る。 
  • クレソン(オランダガラシ)の白花・・・明治の頃、香辛野菜として持ち込まれたものが全国に野生化した外来種。テン場周辺には、炭焼き窯の跡がある。誰かが食用に持ち込んだものが野生化したのであろう。アイコ、ヤマワサビに混じってクレソンがやたら目立つ。湿地周辺を覆い尽くすように群生し、その繁殖力の強さには驚かされる。 
  • ミヤマカタバミ 
  • シラネアオイ
  • キバナイカリソウ 
  • ツルネコノメソウ
  • オオバクロモジ
  • 尾根沿いのマタギ道・・・ブナが林立する尾根沿いによく踏まれた道があった。そのマタギ道を辿ってしばらく登り、対岸を望むと、新緑に染まった絶景が広がっていた。
  • 一人マタギは、見張り台と呼ばれる場所から対岸を8倍の双眼鏡でクマを探す。ブナの木に登り、夢中で若葉と花を貪るクマを探すと、狙いを定めて撃つのであろう。撃ったクマは、沢へと転げ落ちる。捕獲したクマは、沢の流れに乗せて運ぶという。  
  • ムラサキヤシオツツジ
  • 花が終わったオオイワウチワ 
  • トチノキの若葉
  • コヨウラクツツジ
 
  • リョウブの樹皮・・・・サルスベリやナツツバキに似て、樹皮が剥がれて斑になるのが特徴。まだ芽吹いていなかったが、若葉は食用になり、茹でて干すと長期保存ができるので、昔は重要な救荒食であった。 
  • 山菜調理風景・・・沸騰したお湯に塩を少々入れ、アイコ、シドケを湯がき、冷たい渓流水にさらしてアクを抜く。アイコは、丁寧に皮をむいてから食べやすい長さに切って皿に盛る。 
  • ヒラタケとアイコの特製味噌汁・・・ヒラタケは食べやすい大きさに切り裂き、アイコの葉と茎、出汁用に焚き火で燻製にした頭と骨を二匹入れて煮る。特にイワナの頭骨とヒラタケから出る出汁が最高で、絶品!
  • アイコのおひたし
  • シドケのおひたし
  • シドケの天ぷら
  • ヒラタケとアイコの特製味噌汁
  • 二日目の山釣り定食
  • 令和の英訳は「Beautiful Harmony=美しい調和」・・・ブナ帯文化を代表するマタギ文化は、人間と動植物を区別しない世界観をもち、自然に対して畏敬と感謝の念に満ちている。それを平易な言葉で表現すれば、自然と調和、動植物と調和する生き方だと思う。それは、まさに令和の英訳「Beautiful Harmony=美しい調和」そのものである。
  • 新しい令和の時代を迎え、その元号に込められた願い「美しい調和」を求めるとすれば、1万年以上も続いた森の文化「縄文文化」を含む「ブナ帯文化」に学ぶ必要があるであろう。

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