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2019夏、山岳渓流に生きるイワナ

 2019年7月の連休、昨年巨大な雪渓に阻まれた沢へリベンジ釣行に出掛けた。予定の金曜日は大雨の予報が出ていたので、急きょ出発を1日遅らせた。これが幸いして、悪天候を回避。初日は、近場の枝沢を釣ってみたが、雨のお陰で入れ食いを堪能した。ただし、日帰り釣りのフィールドだけに、サイズに不満が残った。待望の二日目、険谷の岩魚谷を源流部まで釣るのは、8年振りのことであった。期待とは裏腹に、アタリが遠い。それでも、清流の飛沫とマイナスイオンに誘われて、上二又の魚止め滝まで足早に釣り登った。
  • ヤマドリの親子・・・車止めに向かう途中、ヤマドリの親子に出会った。車の中から撮影したので、画像が不鮮明だが、撮れただけでもラッキーだった。野生のヤマドリの撮影は難しい。人が近づくギリギリまでヤブに潜んで動かない。その許容範囲を越えると急に大きな羽音を立てて飛び立つ。その光景にカメラすら構えることができなかった。メスは、雄に比べて尾が短く、色も地味である。数羽のヒナを連れていた。文献によれば「7~10卵を産む」とある。 
  • 崩壊林道を彩るエゾアジサイ・・・梅雨期はアジサイが美しい季節。崩壊林道は、アジサイロードと呼びたくなるほど、エゾアジサイが群生し、ちょうど見頃であった。延々と上り坂をゆくと、次第に背丈以上のヤブと化す。左岸に水場があるカーブ地点にテン場を構える。
  • テン場からわずか10mほどのヤブを覗くと・・・クマがアキタフキの茎を食いちぎり、なぎ倒した跡があった。その奥にはニョウサク(エゾニュウ)の中の芯だけ食べた痕跡があった。恐らく、ニョウサクを腹いっぱい食べて、昼寝をした跡だろう。クマのテリトリーは、年々下流へと拡大している。 
  • 雨後は、ミミズが魔法のエサ・・・渇水時は見向きもしないミミズだが、雨が降れば一変する。すなわち、平水時より増水し笹濁り状態になれば、水生昆虫やブドウ虫、毛バリより、ミミズへの反応が数段良くなる。その理由は、ミミズ特有の匂いと激しい動きがイワナを誘惑するからであろう。 
  • やや深い瀬にミミズを流すと、ミミズを狙って数匹のイワナが、四方八方から現れる。 二人とも入れ食いで釣れてくるものの、尺には届かない。
  • いくら釣れてもサイズに不満が残ると、釣りも飽きてしまう。早々に納竿する。 
  • 季節外れのナメコ・・・これまで夏にナメコを見つけたのは、これを含めて2回だけ。夏のナメコは、それだけ季節外れの珍事だ。翌朝、燻製イワナで出汁をとった味噌汁に入れて美味しくいただいた。
  • スナゴケの花・・・大きな岩を覆う緑のマットに、まるで黄金色に輝く星が無数に輝いているかのように美しい。苔玉や屋上緑化に利用される。
  • ヤマブキショウマ
  • ヨツバヒヨドリ
  • クマイチゴ・・・モミジイチゴと似ているが、果実は8月頃赤く熟す。茎は赤紫色、葉は大きく、裂片の先はとがり、基部はハート形。花のあと萼片は反り返る。
  • 定番の山釣り定食で乾杯・・・今回は二人だけなので、日本酒ではなく、アルコール度数の高いウイスキーの水割り。これも少人数の場合の軽量化の一環。フライパンや油も省略したから定番の唐揚げなし。主食のコメは、無洗米ではなく包装米飯にして飯盒も省略。こうすれば後片付けも簡単だ。
  • 翌日は晴れ、久しぶりにリベンジの岩魚谷に向かう・・・勘で下ると、本来の尾根を1本間違えてしまった。歩いた痕跡が全くない急峻な尾根を下ると、眼の前にゴルジュの真っただ中であることを示す滝が見えた。正面には、ブナではなく岩場に生えるアカマツが出現。このまま下ると崖で沢に下りることができなくなる。運よく沢に下りても、雨で増水したゴルジュ帯は危険極まりない。急がば回れ・・・やむなく引き返す。
  • エゾヒョウタンボク?
  • 本流に懸かる滝壺を釣る。滝の飛沫が物凄く、不用意に近づくと、首にぶら下げているカメラを濡らしかねない。左右両サイドに分かれて釣る。
  • 大きな滝壺に対して、ヒットしたのは、意外に小さい8寸ほどのイワナであった。 
  • ミヤマカラマツ
  • オオバキボウシ(ウルイ)
  • ミズキの実・・・後に黒く熟す
  • クガイソウ
  • いよいよリベンジの岩魚沢へ・・・上二又まで水平距離1.2キロに対して、落差は170mを越える。平均勾配は1/7で、イワナの生息限界1/10を超える。 つまり一般的な渓流ではなく、延々と小滝が階段状に続くような沢である。当然のことながら、イワナが自力で上流に遡上することは不可能。恐らく釣り好きなマタギが移植放流した子孫であろう。
  • イワナのアタリがない・・・一昨年7月下旬の記録的な豪雨で、山系一帯が大きな被災を受けた。もしかして、源流部のイワナたちが一斉に流されてしまったのだろうかと、心配になった。その矢先・・・
  • 待望のイワナがヒット・・・白っぽい花崗岩の谷に棲むイワナだけに、透き通るような美しい魚体で、丸々太っていた。 
  • 今日は真夏日の予報・・・暑い夏は、編み袋に入れて生かしたまま移動。鮮度を保つために、こまめにデポしておき、帰りに回収しながら下ることにする。その際、デポした場所の目印として大きなフキの葉などを岩の上に並べて置くことを忘れずに。 
  • 中間部に懸かる二段の滝・・・この右岸の巻き道には、虎ロープが張られていた。かつてはなかったが、釣り人が張ったものであろう。
  • 清冽なマイナスイオン・・・暑い夏は、延々と続く階段状のゴーロ連瀑帯の谷は、清冽な飛沫とマイナスイオンを全身に浴びて遡行できるので涼感・爽快感は満天。沢登りを楽しむだけでも楽しい。イワナは、透きとおるような瀬から何度も走るが、食いがすこぶる悪い。ポイントが5~10回に1回程度しかヒットしない。これは明らかに釣り人を警戒している。
  • 相棒にもやっとイワナがヒット・・・側線前後に薄い着色斑点がある。この沢のイワナは、全てニッコウ系のイワナである。急な階段状のゴーロを登り切ると上二又だ。
  • クマの真新しい痕跡・・・今日か昨日、クマが尾根から沢へ降りてきて、ニョウサクを食べたようだ。真ん中の芯を食いちぎったクマの歯型が残っていた。恐らく、この源流部一帯をナワバリにするボスグマであろう。
  • 魚止めの滝・・・二又を過ぎて左に入ると、すぐ魚止めの滝が懸かっている。細長い滝の落下は、岩角にぶち当たって四方八方に飛び散り、一面緑の苔に覆われている。見上げればブナなどの広葉樹に覆われ、日中でも薄暗い。滝壺は、岩が硬いのか、下流に向かって細長くなっている。左サイドの深い淵を狙ってエサを流す。
  • 丸々太った28cmのイワナ・・・魚止めにしては小さい。恐らく、今年一番乗りの釣り人に釣られてしまったか、あるいは主だけに警戒心が強く簡単には食いつかないのであろう。天然のイワナは、警戒心が強いからこそ、尺以上に成長できる。
  • それはクマも同様である。人を警戒しないクマは、人とのトラブルを招きやすく駆除される場合が多い。逆に警戒心の強いクマは、人間とのトラブルをうまく回避し、結果として長生きするから大きくなれる。だから大きなクマに遭遇したら、慌てず、騒がす、冷静に対峙し、クマと向き合ったまま静かに後ずさりして離れる・・・その基本さえ守れば無用なトラブルは回避できる。
  • ハナニガナ 
  • センジュガンビ 
  • ウワミズザクラの実・・・やがて黒く熟す
  • ノリウツギ 
  • マタタビの花
  • カケスの羽根・・・猛禽類に食べられたようだ
  • イワナの醤油煮・・・一度焼いたイワナを、醤油・砂糖などで煮る。 
  • 山の恵みで乾杯・・・会の定番は、これまで刺身と唐揚げであったが、焼イワナの煮つけは絶品であった。これも、少人数軽量化作戦の産物である。
  • たくましい源流イワナ・・・一昨年の記録的な豪雨で下流に流されたのではないかと心配したが、魚止めの滝までイワナは確かに生息していた。野生のイワナは、人間が考えるほどヤワではない。むしろ人間は、厳しい山岳渓流に生きるイワナのたくましさに学ぶべきであろう。

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