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2020イワナ釣りその2

 4月16日(木)、久々に快晴の予報が出たので、前回とは別水系の岩魚沢へ向かった。初釣りから約2週間も経過していたので、山菜も期待していたが、その気配すらない。連日、天候が安定せず、気温が低いからであろう。釣れてくるイワナも黒くサビついたイワナが目立つ。里では桜も咲きはじめたが、新緑と山菜の季節は、GWの頃が最高であろう。巷では、新型コロナによる緊急事態宣言が全国へと広がった。それだけに、今年のGWは、3つの「密」を避けて、人跡稀な渓流三昧がベストであろう。
  • 雪解けが最も早い下流部の雑木林は、芽吹きの気配すらない。林床には、太陽の光がほぼ100%降り注いでいる。その割には、カタクリやキクザキイチゲなどの早春の花々が稀にしか咲いていない。加えて山菜の気配はゼロ・・・まだ森全体が冬の眠りから覚めていないような印象を受ける。
  • 花は黄色いキブシが目立つ程度で、冬枯れの崩壊林道を歩く。 
  • 雪崩斜面の下にカモシカの死骸があった。今年は記録的な暖冬が続いただけに、カモシカにとっては、想定外の雪崩に巻き込まれたのであろう。 その死骸は、ツキノワグマやテンなどの肉食性の動物に食べられ、腐敗が進むとハエやシデムシたちが食べて命をつないでいく。自然界には、無駄なものが一つもない。
  • 例年お世話になっている山菜畑の斜面・・・山野草も山菜も皆無。1時間ほど歩いて竿を出す。 
  • V字峡谷と苔生す巨岩が点在する岩魚沢を釣る。例年なら点々と残雪が見られるのだが、今年はほとんど見られない。それだけ雪解けが早い分、釣り人も例年より早く始動しているようだ。 来る途中、つい最近釣り人が捨てたであろうゴミが散乱していた。釣り人よ、自然に遊ばせてもらっている以上、ゴミぐらいは持ち帰ってほしいものだ。
  • 良型のイワナがヒットするものの、イワナの食いが今一つ。イワナたちは、早くも釣り人を警戒しているような印象を受ける。例えば、こちらからイワナが見えたり、瀬尻から走られると、ほとんどエサを追わない。これは完全にスレている証左だ。 
  • 早春のサビイワナ・・・これまで見たこともないほど真っ黒にサビついたイワナ。暗い岩穴の奥深くに潜み、仮死状態で越冬するイワナは、保護色として黒くサビつく。こういうイワナが釣れるということは、山菜もまだ早いサインである。 
  • 苔生すV字峡谷を釣る。奥の谷は朝日に照らされ明るいが、峡谷の中は薄暗く冷たい風が吹いている。手がかじかむほど寒い。この寒さが草木の芽吹きを阻止している最大の原因であろう。 
  • またしても全身黒くサビついたイワナ
  • やっとサビがとれたイワナ・・・V字峡谷を過ぎると、黒いサビがとれ、美人タイプのイワナが釣れた。それにしても斑点が鮮明で美しい個体だ。 
  • やっと谷に光が射し始めた。谷に迫り出す広葉樹の木々は裸木のままで、雲一つない青空が透けて見える。久しぶりの好天に、鳥たちの恋のさえずりがうるさいほど聞こえる。光が射し込むと、かじかむ手もさすがに暖かくなった。 
  • 橙色の斑点が鮮明なニッコウイワナ。光が当たると、その美しい魚体が光り輝く。 
  • 第二の山菜畑斜面・・・カタクリやキクザキイチゲなどの早春の草花さえ皆無。いかに山の気温が低いか、想像に難くない。 
  • 好ポイントでさえ、アタリがピタリと止まった。これじゃ釣りにならないので、早々に納竿し、下流二又の左の沢に入るべく沢を下った。
  • 左の沢は、右の沢に比べて険しい。それだけ釣り人も入っていないようで、尺前後のイワナも釣れた。この沢を訪れるのは、十数年ぶりで、滝以外はほとんど記憶がなくなっていた。
  • いきなり、良型のイワナがヒット。幸先のいいスタートだった。
  • 今度は尺近いイワナがヒット。右の沢よりワンランク大きいイワナがヒットする。これは釣り人の多少だけではない。右の沢は、奥まで伐採された二次林である。左の沢は、落差の大きいV字峡谷が続くものの、険しい分、伐採から逃れたブナ帯の原生林が残っている。だから水量も多い。その自然度の高さがイワナを育んでいることは確かである。 
  • 全身サビついたイワナ。
  • 渓に降り積もった落葉とイワナ。 
  • 豪快に落下する直滝F1・・・昔は、ロープなどなかったが、右岸に虎ロープが張られていた。恐らく地元のマタギが仕掛けたロープであろう。この左岸の尾根には、今でも明瞭なマタギ道がある。マタギは、その左岸のマタギ展望台から対岸のブナの芽吹きを貪るクマを探して撃つ。仕留めたクマは峡谷の谷底へと落ちていく。そのクマを沢通しに流して運ぶ。その際、難所の高巻きルートに虎ロープを張ったものであろう。 
  • 数段の滝からなるF2の滝・・・右岸の巻き道は、きわどい高巻きを強いられる。だから数ヵ所に虎ロープが張られていた。その難所を越えると・・・。 
  • 滝を巻いて前方を見ると、落差の大きい階段状のゴーロ連瀑帯が延々と続いていた。十数年振りとは言え、ほとんど記憶にない風景が続いていた。 
  • 巨岩が居座る滝壺を釣る。相棒は、右の沢では苦戦していたが、左の沢に入ると尺イワナをはじめ、良型イワナを快調に釣り上げていた。
  • 午後1時、釣果も十分なので納竿とする。屹立する岩場が続く峡谷を、転がり落ちるように下る。
  • 午後2時頃、本流の沢を横断する。例年なら、雪代で濁り、増水のピークを迎えているはずだが、底石が透けて見えるほど透明度が高い。水量も、朝と全く変化していない。恐らく、源流部の残雪がほとんどない証左であろう。 
  • 崩壊林道沿いに咲く山野草を撮りながら下る。 
  • タラノメもまだ小さい。一部、ニリンソウが点々と咲きはじめていた。日当たりの良い林道沿いで、アイコが2本だけ芽を出していた。もう二週間もすれば、待ちに待った新緑と山菜の季節がやってくるであろう。それを楽しみに待ちたい。
  • イワウチワの花蜜を吸う昆虫(秋田市雄和・高尾山)
  • 「春の女神」と呼ばれるヒメギフチョウの食草・ウスバサイシン(秋田市雄和・高尾山)・・・草木の美しい花々を撮影していると、必ずと言っていいほど昆虫たちが花から花へと飛び回る光景に出会う。動けない植物は、その受粉を鳥や昆虫などの動物たちに運んでもらっている。そのうち昆虫の割合はどのぐらいになるのだろうか。
  • 「受粉にまつわる生態学」の本によれば、昆虫の中でも、ハチ目、ハエ目、チョウ目、甲虫目に多く、この4目で9割以上の動物媒植物種の受粉を担っているという。 つまり、この植物と昆虫との素敵な関係があるからこそ、私たちは、四季折々、美しい花々を楽しむことができるのである。植物の多様性は、送粉者の主役である昆虫の働きなしにはあり得ないことが分かる・・・昆虫は全くのド素人だが、この事実を知ったことが「特集 昆虫シリーズ」に挑戦しようと思ったキッカケである。ただし完結するまで何年かかるか、分からないが。

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