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2020山釣りPart2&昆虫

 2020年5月22日~24日、5名のパーティで定番の岩魚谷に向かった。昨夜まで雨が降り続いていたとは言え、渡渉が困難になるほど増水していた。これは、雨に加えて雪代も加わっていることは明らか。例年なら、雪代はほとんど終盤なのだが、まるで雪代のピークを迎えているような状態であった。今冬の記録的な暖冬から推察すれば、イワナ釣りの最盛期を迎えているはずだったが、それは大きな誤算であった。なお、このページの末尾に、山で出会った昆虫16種を掲載。
  • 雪渓が残る岩魚谷・・・4月~5月は気温が異常に低い日が多く、天候も不安定な日々が続いた。だから谷沿いには、至る所に残雪が見られた。恐らく源流部は、スノーブリッジの連続であろう。平地は早春に雪が消えたが、奥山にはかなりの雪が降ったらしく、山のピークは真っ白である。こんなちぐはぐな年も珍しい。
  • ニリンソウ
  • オオバキスミレ
  • キバナイカリソウ
  • サンカヨウ
  • ミヤマキケマン 
  • ムラサキヤシオツツジ
  • 伐採跡地のワラビや、杣道沿いのウド、シドケを採取しながら上流へ。 
  • クマの糞2つ・・・どちらが親の糞か分からないほど大きな糞が二つあった。もうすぐ子別れする親子であろう。植物の繊維を含んだ緑色をしているので、渓流沿いに自生する山菜類を食べているのであろう。
  • 杣道のど真ん中にあったクマの糞・・・目撃したクマの糞3ヵ所は、いずれも杣道沿いのど真ん中にしていた。右上の糞は、杣道を歩いている途中、ナベちゃんが気付かず思わず踏んでしまった後で撮影したもの。
  • 渓流沿いを歩くと、クマがアキタフキやニョウサクを食べた痕跡が至る所にあった。
  • かつてはヤブに隠れるように歩いていたクマが、今や、歩きやすい杣道を堂々と歩いている。ほとんど人が利用しなくなった杣道は、完全に「クマ道」になっている。だから、クマ対策を考える場合、昔の常識が通用しないことが分かる。
  • この岩魚谷は、森林軌道時代に伐採されたが、今やイワナやクマを育む広葉樹の森が復活している。そうした山の変化に加えて、山村の高齢化は凄まじく、クマに対して人の怖さを教えてきたマタギがゼロになって久しい。それに呼応するかのようにクマの生息数が増加し、奥山から里へと生息分布を拡大、クマの行動も大きく変化している。この劇的な変化に合わせて、クマ対策も変えていく必要があろう。
  • テン場・・・雨対策としてブルーシートを張り、二つのテントを設営。背後の斜面に倒れていたブナの風倒木を利用して、焚き火用の薪を集める。
  • やっとイワナ釣りを開始したが・・・雨と雪代による怒涛の流れは、最悪のコンディション。流れの速さを考えると、水面を流す毛バリは通用しないだろう。流れの緩いトロ場や岩穴を探るようにエサを投入したが、アタリはゼロ。たまに釣れてきたと思ったらリリースサイズばかり。もしかしてと思い、3Bのオモリを2個つけて、激流に流されないように瀬尻を狙ってみた。
  • やっとヒットしたイワナ・・・こんなに増水していても、イワナは避難するどころか、流下するエサを待って瀬尻に定位していた。それにしても斑点が明瞭なイワナは、いつ見ても美しい。 
  • 階段状のゴーロ連瀑帯が続く谷は、ポイントが極めて少ない。なぜなら階段状の壺は連続しているが、その全ての壺が沸騰したように沸き立ち、ポイントにならないからだ。一方、傾斜が緩く、一定の距離をもった瀬尻のポイントは極端に少ない。その少ないポイントを狙って釣るしかなかった。 
  • 何とか5人分のイワナを確保し、テン場に戻る。 
  • イワナの刺身・・・9寸~尺前後のイワナがベスト。旬のイワナは、いつ食べてもコリコリしていて美味い。 
  • 塩焼き用イワナ・・・7~8寸前後が美味い。
  • 唐揚げ用
  • 頭と骨・・・焚き火で燻し、骨酒や味噌汁用の出汁に使う。
  • シドケのおひたし
  • ワラビ
  • 山釣り定食で乾杯!
  • 久々に渓流の音を聞きながら、山釣り定食を肴に酒を飲んだ。持参したワインと熱燗一升で終われば良かったが、ついついウイスキーまで手をつけてしまった。お陰で、記憶がなくなるほど酔い潰れてしまった。シュラフに潜ったのは10時半らしい。
  • 翌朝起きたのは8時過ぎ・・・いつもなら遅くとも6時に起きるのだが、これまで最も遅い8時を過ぎていた。明らかに二日酔いで、体調がすこぶる悪い。食欲が湧かなかったが、無理して朝食を食べる。すぐに喉が渇くので、水を飲みながら休んだが、依然体調が良くならない。
  • 5人のうち、2人は留守番をするという。 こんな二日酔い状態で、山を歩けば、熱中症になりかねない。しばしテン場で休む。やっと3人で奥地を目指して出発したのは、10時半を過ぎていた。とても源流部を目指す時間はなかった。
  • 最初の上り坂・・・すぐに息切れするだけでなく、喉がカラカラになる。何とも苦しい。休み、休み、歩きながら、やっとの思いで小沢に達する。苔生す小沢の名水をコップ一杯に汲んで、立て続けに2杯飲む。それでもすぐに喉が渇く。5分~10分歩いては休む。何とも情けなくなるほど歩けない。酒は山で飲むと、確かに美味い。しかし次の日のスケジュールを考えて飲まないと、痛い目に会う。そのことを改めて思い知らされた。
  • 杣道から上流の釣り場に達したのは、歩き始めて1時間余り・・・時計を見れば昼近くになっていた。昼飯の時間だが、朝飯を食べるのが遅かったので、まずはイワナを釣ることにする。
  • 今年に入ってから、杣道を歩いた釣り人の形跡は皆無であった。ということは、今年一番乗りだから入れ食いを予想していた。ところが、気温が上昇するとともに雪代が加わり、みるみる増水。しかも雪代の入った水温は極端に低い。イワナの食いは、想像だにしないほど鈍かった。
  • 北海道のエゾイワナに似ている個体・・・エゾイワナの特徴は、斑点が大きく鮮明なこと。そんなエゾイワナと異なる点は、側線前後の斑点が白ではなく、橙色の着色斑点であることだけ。元々、海に下るアメマス系の子孫が、陸封されたという点で同じだから、似ているのも当然のことである。
  • 釣り時間はわずか1時間余りで納竿。昼飯のメインは、カップラーメン。お湯を沸かそうと思ったら、いつもザックにぶら下げているヤカンがないことに気付く。やむなく冷たい水を飲みながら、大福とパンをかじるほかなかった。何とも貧しい昼食になってしまった。これも二日酔いの天罰が下ったのであろう。だから、二度と二日酔いはしまい、と誓うほかなかった。反省、反省、大反省!
  • イワナの旬を保つために・・・釣り上げたイワナは、生きたまま種もみ用の網袋に入れて釣り上がる。納竿して下る際、残雪の雪を枝で砕いて、保冷代わりに網袋に入れる。さらに解けた水が漏れないようにビニール袋に二重にくるんでザックに背負う。こうすれば、刺身に使えるほどイワナの旬を保つことができる。
  • 最も簡単な鮮度保持法・・・イワナを野ジメにした後、濡れ新聞にくるむだけで、意外なほどイワナの鮮度を保つことができる。
  • 帰りは、シドケを採ったり、フキを採ったりしながら下る。
  • 焼きイワナとフキの煮つけ・・・アクを抜いたフキと焼いたイワナを鍋に入れて、お酒と醤油で煮る。焼いたイワナから素晴らしい出汁がでるので絶品!
  • ワラビたたき・・・秋田では、アクを抜いたワラビを、すりこぎで叩き、包丁で繊維を短く切る。それに山椒の葉と味噌をのせ、包丁で混ぜながらさらに叩く。好みで砂糖を入れる場合もある。これまた絶品!
  • イワナの刺身
  • ウドの天ぷら
  • 焚き火と山釣り料理風景 
  • 豪華な山釣り定食・・・上左から刺身、ウドの天ぷら、下左からシドケのごま和え、イワナとフキの煮つけ、ワラビ、ウドの酢味噌和え。他に唐揚げ、ワラビたたきなど食いきれないほどの山の幸定食を肴に乾杯!
  • 酒は1合程度に自制したら、寝る前に酔いが覚めてなかなか寝られなかった。やっぱり酒は、多くても、少な過ぎても駄目であった。何事も、ほどほどがベストとは、頭で分かっていても、いざ実行するとなると、幾つになっても難しい。
  • 3日目は快晴・・・テン場をきれいに片付け、荷造りを済ませた後、杣道をゆっくり下る。 
  • 下る途中、太いゼンマイや旬のウド、シドケなどを採りながら下る。
  • ヒメアオキの赤い実
  • ヤマツツジ・・・車止め付近は、やっとヤマツツジが咲き始めた。
  • 山で出会った昆虫①ヒメツチハンミョウ・・・甲虫目ツチハンミョウ科。局所的で数は少ないらしい。成虫で越冬したメスは、春になると土の中に産卵する。生まれた幼虫は、草に上って花にたどりつき、飛んできたハナバチ類に運よく乗り移った幼虫は、ハナバチの巣の中で卵や花粉・花蜜を食べて育つ。つまりハナバチ類の巣に寄生して育つ。乗り移りに失敗した幼虫は、死ぬしかないので個体数が少ないという。捕まえると黄色い液を分泌するが、これはカンタリジンという有毒物質を含むので触れると水疱性皮膚炎を引き起こすので注意。
  • 山で出会った昆虫②オオヤマカワゲラ成虫・・・幼虫は、イワナの大好物。釣り餌として最も使われているカワゲラの一種。
  • 山で出会った昆虫③カワゲラ成虫
  • 山で出会った昆虫④ホソオビトゲシリアゲ・・・シリアゲムシ目シリアゲムシ科。山地性のシリアゲムシ。両方のハネの中央に細い黒筋があるのが特徴。
  • 山で出会った昆虫⑤ハエの仲間・・・辛み成分をもつワサビの葉に大量に集まっていた。
  • 山で出会った昆虫⑥ガガンボ類・・・ハエ目ガガンボ科。蚊を大きくしたような体形で、体色の変化が乏しく、識別は難しいのでガガンボ類とするしかない。幼虫は、水中、腐植土、キノコ、朽ち木、鳥の巣など様々な環境で生育する。
  • 山で出会った昆虫⑦ドロハマキチョッキリ・・・金緑色に輝く美しいオトシブミの仲間。イタドリ、ヤマブドウ、サルナシ、マンサク、ドロノキ、コナラ、カエデ、ヤナギ、ポプラなどの葉を巻く。しかし、オトシブミではなくチョッキリと呼ばれるのは、産卵後の葉や果実などを切り落とすものがいるからである
  • 山で出会った昆虫⑧ヒシバッタの仲間・・・テントのフライシートにたくさん張り付いていた。
  • 山で出会った昆虫⑨アワフキムシの巣・・・大きなアキタフキの葉の裏に泡が二つ。これは、アワフキムシの幼虫が作った「巣」。小さな幼虫は、植物の汁を吸って生きている。その際、余分な水分は排泄しながら泡で巣をつくる。泡は、粘り気があって、雨風・日照りにも強く、意外に丈夫にできている。
  • 山で出会った昆虫⑩ツマグロオオヨコバイ・・・イタドリの葉に群がっていた。小さいが、よく見ると鮮やかな黄緑色で美しいが、農業害虫でもある。頭部と前胸背に顕著な黒点があり、ハネの末端は黒色。多くの植物の汁を吸い、その中には大豆や桑、ブドウ、柿、イチジクなども含まれ、害虫とされている。 危険を感じると、横に移動、葉の裏に隠れる。
  • 山で出会った昆虫⑪ベニボタル・・・甲虫目ベニホタル科。鮮やかな朱色のハネが特徴。ホタルと近縁だが、発光はしない。ベニホタルの仲間は、種類が多く識別が難しい。しかし、山では本種が最も普通に見られる。
  • 山で出会った昆虫⑫オニアカハネムシ・・・甲虫目アカハネムシ科。ハネが赤いだけでなく、頭部と背面が赤褐色をしている。毒のあるベニボタルに擬態しているとの説もある。花粉や花蜜、他の昆虫を捕食する。 
  • 山で出会った昆虫⑬ワサビの花とクロハナアブ・・・花を訪れるハナアブの仲間。触角が短くハエの仲間だが、花の蜜をなめるのに適した口をもつ。
  • 山で出会った昆虫⑭セスジジョウカイ・・・甲虫目ジョウカイボン科。 頭部は黒色で、両眼は左右に突き出る。黒褐色の地色に黄褐色の縦条が二本入る。中型のスマートなジョウカイボンで低山地から山地にかけての広葉樹の葉上で見られる。成虫は、他の小昆虫を捕らえて食べるが花にも来る。
  • 山で出会った昆虫⑮イタドリハムシ・・・甲虫目ハムシ科。黒色に赤色から黄色の混ざった鮮やかな紋が目立つ。この紋には、個体差があり、赤色みが強い個体、黒化して赤色紋が小さく8つに独立した個体など様々。成虫は、5月に現れ、オオイタドリ、イタドリ、ギシギシ、スイパなどの葉を食べる。メスは土の中に産卵する。幼虫は、成虫と同じ植物を食べて成長し、土の中に潜って蛹になる。
  • 山で出会った昆虫⑯エゾハルゼミ・・・ブナ帯の森でいち早く鳴くセミの仲間。北海道から九州まで広く分布する。秋田では、5月末から梅雨の頃、ブナ帯の森から聞こえてくるセミの声は、エゾハルゼミと思って間違いなし。集団発生し、夏に林全体がセミの合唱域と化す。「ミョウキン、ミョウキン、ケケケ・・・」と鳴く。幼虫期間は不明。
  • 特徴・・・透明なハネ、頭部・胸部は緑色を帯びた褐色で黒色の斑紋がある。腹部は黄褐色。体長は、オス40~44mm、メス38~42mm。
  • 名前の由来・・・北の地域に多く、 春一番に鳴くセミだから。
  • 今後は、イワナ釣りよりもブナ帯の森の昆虫撮影に集中しようと思う。今度はどんな昆虫に出会えるだろうか。楽しみ、楽しみ!

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