山釣り紀行TOP

「足るを知る」山釣り

 2020年7月は、新型コロナに加え、記録的な豪雨が列島各地で猛威を振るった。専門家は、「海も大気も暖かくなり、大気の水蒸気量が増えている。温暖化で今後も豪雨災害のリスクは高い。昔は大丈夫だったから今回も大丈夫という発想は捨てた方がよい」と警告している。人間の欲望には際限がないが、その結果招いたのが地球温暖化による記録的な豪雨災害ではないか。こういう苦難の時だからこそ、「足るを知る」原点に立ち返る必要があるように思う。
  • 2020年7月中旬、4名のパーティで近場の岩魚谷に向かった。連日雨が続いただけに、いつもより水量はかなり多い。しかし、流れに濁りは全くなく、底まで丸見えの透明度であった。
  • ヨツバヒヨドリ
  • ノリウツギ
  • シナノキの花は満開
  • エゾアジサイ 
  • ニワトコの赤い実
  • マタタビの花 
  • オニシモツケ
  • タニウツギの蒴果 
  • オカトラノオ
  • キブシの実
  • タマガワホトトギス・・・山地の谷沿いや林内の湿った所に生える。だからイワナ釣りの谷ではよく見かける花のように思うが、実際はなかなかお目にかかれない花である。秋田の谷では、個体数が極めて少ないように思う。
  • 日帰りのイワナ釣りで有名な岩魚谷・・・それだけに夏になれば、市販のエサには見向きもしなくなる。ちょっと面倒だが、川虫(カワゲラ)を採取し、現地調達のエサで釣り上がる。これがイワナのミャク釣りの原点だ。 
  • かなりスレているようで、アタリは遠い。それでも食い気のあるイワナは、主食のカワゲラの魅力に負けて食らいつく。 流れの透明度が高いだけにイワナは白っぽい魚体が多い。
  • 川虫の付いた針がイワナのお腹に刺さっている。キンさんの竿が折れんばかりに弓なりになったが、河原に横たわるイワナをよく見るとガラ掛けであった。 
  • イワナ釣りは、足で釣るのが鉄則。それだけにイワナ釣りと沢登りの楽しさを同時に味わうことができる。釣りも楽しいが、風光明媚な岩魚谷を鑑賞しながら、清冽なマイナスイオンを全身に浴びて釣り上がるのがこの上なく楽しい。
  • 刺身サイズのイワナ・・・珍しく黒っぽい魚体に、小さな斑点が星屑のように全身を彩る。精悍な面構えをしているのでオスのイワナだ。4人分のオカズを調達した時点で竿を畳む。持続可能な釣りを楽しもうとすれば、イワナ釣りも「足るを知る」ことが肝要だ。
  • 初日は好天に恵まれ、久々の山釣り定食で乾杯。
  • アキアカネ・・・初夏に羽化した成虫は、水辺を離れて近隣の山や渓流などへ移動し、秋に田んぼなどに舞い戻って産卵する。この岩魚谷でも、たくさんのアキアカネが飛び交っていた。夏のイワナ釣りでは、現地採取のエサの一つ。 
  • エゾアジサイとヨツスジハナカミキリ・・・リョウブやウツギ類、エゾアジサイなどの花粉を食べるほか、広葉樹の倒木にも飛来する。 
  • シナノキの花とオオマルハナバチ・・・全身黒でお尻がオレンジなのはコマルハナバチと同じだが、舌が短く、胸とお腹に肌色の帯がある。コマルハナバチより大型。
  • シナノキの花とトラマルハナバチ・・・胸部の鮮やかなオレンジ色が特徴。舌が長く、ツリフネソウやイカリソウなど深い蜜源の花も得意である。花と昆虫を撮影していると、最も受粉に貢献しているのは、ミツバチとトラマルハナバチがナンバーワンのように思う。
  • オオハナアブ 
  • クモの巣に捕まったアキアカネ
  • ヤマカガシ・・・毒を出す牙は上あごの奥にある。浅くかまれただけでは毒が注入されにくいため、かつては無毒とされていた。毒の強さはマムシの4倍くらいもあり、昭和47年以降死亡したケースが4件報告されている。 
  • ヒバカリの幼蛇・・・名前は、かつては毒蛇とみなされ「噛まれたら命がその日ばかり」と考えられていたことに由来する。実際は無毒種。
  • 二日目、最源流部を釣る・・・今日は快晴。上二又まで一気に歩いて1時半ほど。釣る前に川虫採りをしてから、落差の激しい源流部を釣り上る。
  • 源流部のイワナの特徴は、魚体が金色に輝く個体が多いこと。 
  • たまに白っぽいイワナも釣れる。ただし、腹部から尻尾にかけて濃い橙色に染まっている。 
  • 魚止めの滝で釣れた黄金イワナ。この個体が源流部を代表するイワナである。釣り時間はわずか1時間半ほどだが、4人分のイワナが釣れたのであっさり竿を畳む。
  • 今から18年ほど前、滝上に移植放流したイワナを調査する予定であったが、ピンソールを忘れてしまったので、高巻きは危険と判断し、諦めざるを得なかった。
  • 刺身サイズのイワナ・・・刺身サイズのイワナは9寸から尺前後、塩焼きサイズは7寸から8寸程度がベスト。だから大きいサイズのイワナばかり釣れても、ベストの山釣り定食はできない。何事もバランスが大事だ。
  • 炎天下、テン場まで歩くこと2時間弱。汗が全身から吹き出し、足が上らなくなるほどバテバテになってしまった。アップダウンが続く渓流を長時間歩くと、心臓に負担がかかる。それでも一日中歩けるのは、森林浴効果と清冽なマイナスイオンのお陰である。これが健康の源である。
  • クマの糞 
  • エゾニュウを食べた痕跡 
  • 秋田駒ヶ岳登山道、クマに襲われ2人ケガ・・・7月13日午前9時45分頃、秋田駒ヶ岳の登山道で、高山植物の盗採防止パトロール(環境省委託)をしていた仙北市の男性(69)と秋田市の男性(72)がクマに襲われ、顔や腕などにケガを負った。現場は8合目登山道から約100m離れた旧登山道。二人はパトロールを終えて戻る途中、ヤブから現れた親子のクマに遭遇。子グマは逃げ出したが、体長約1.5mの親グマは二人を交互に襲ったという。
  • 百名山の一つ秋田駒ヶ岳は、花の最盛期になると連日大勢の登山客が訪れる県内ナンバーワンの人気を誇る山である。人の賑わいが続く名山で、かつこの山に最も精通したパークボランティア二人が襲われたという衝撃は大きい。
  • クマが沢沿いのヤブを歩きながらエゾニュウを食べ、昼寝をした跡もあった。今や秋田県内の山では、クマが飽和状態。どこでクマと遭遇しても不思議ではない。タケノコシーズンが終わった7月~8月、クマは沢に集まりエゾニュウやミズ、フキなどを食べる。そこはイワナ釣り場と完全に重なる。だからイワナ釣りでは、クマ撃退スプレーなしには歩けなくなった。くれぐれもご用心を! 
  • 今年はブナの実豊作か?・・・今年はブナの実がよく実っている。6月下旬、森吉山のゴンドラに乗った時も、ブナ林を俯瞰したら、ブナの実がたくさんついていた。今冬は、クマのベビーラッシュがあるのだろうか。
  • イワナの冷しゃぶ・・・イワナの刺身は、いつもより大きめに切る。それをザルに入れ、熱湯を上から万遍なくかけた後、渓流の冷たい水に浸して完成。 
  • 海鮮サラダの上にイワナの冷しゃぶを乗せる。酢と醤油とワサビでいただく。 
  •  ミズの塩昆布漬け
  • ミズたたき
  • 夏の山釣り定食
  • 「足るを知る」山釣り・・・山釣りは、気心の知れた仲間とイワナ釣りを楽しみ、山菜・キノコなどの山の恵みも採取し、みんなで協力分担して調理する。夜が更けると、焚き火を囲み、せせらぎの音と瀬音を渡る風を浴びながら山釣り定食を肴に呑み語らう。そんなささやかな行為を何度繰り返しても、「至福の時」を味わうことができる。そんな岩魚谷では、便利なスマホもお金も全く役に立たない。しかし、満足度はいつも最高レベルなのである。
  • 山から帰ると、車や風呂、家族、愛犬等々、当たり前の日常の有難さが身に沁みる。これこそ「足るを知る」山釣りの神髄だと思う。 
  • 2020年夏、清冽な岩魚谷(YouTube、2分55秒) 

山釣り紀行TOP

inserted by FC2 system