- 動画「2023イワナが消えた岩魚谷」 ・・・2023年5月3~5日
- 毎年GW恒例の山釣りは、日本海に直接注ぐ白神山地の岩魚谷である。この岩魚谷に最初に入ったのは、昭和63(1988)年である。以来、一度も欠かさず、35年間にわたってお世話になった唯一の岩魚谷である。その旧テン場に向かうと、昨夏の集中豪雨による被害は、岩魚谷を壊滅させるほどの惨状に絶句するほかなかった。
調べてみると、2022年8月9日、気象庁は深浦町付近で7時までの1時間に約100mmの猛烈な雨を解析し、記録的短時間大雨情報を発表していた。観測された日雨量は312mmで、過去最高を記録。この集中豪雨で、白神岳登山口駅周辺では、大規模な地すべりも発生している。しかし、イワナが生息する奥山の沢々がどんな影響を受けたのか、という情報は皆無であった。
今回、懐かしの岩魚谷を訪れてみると、蛇行していた沢はショートカットしたかのように流れが大きく変わり、河床も大きく低下、旧テン場は面影がないほど破壊されていた。イワナ釣りは、今年一番乗りだったが、イワナの影すら見えない。恐らく記録的な集中豪雨による超巨大な洪水が発生し、下流に一気に流されたり、えぐり取られた岩や流木、斜面崩壊もろとも溺死したのであろう。余りにもショックな出来事に言葉もない。
この岩魚谷は、白神山地の中でも結構険しい沢で、イワナが遡上できない滝が幾つも懸かっている。昔、その滝上に、先人たちがイワナの移植放流を繰り返すことによって、渓師たちから「イワナの宝庫」と呼ばれるようになった。さらに峡谷のゴルジュ帯には、絶滅危惧種・オオサクラソウの希少な群生地帯があった。それがたった一度の集中豪雨によって完膚なきまでに破壊されてしまった。
今、地球温暖化によるゲリラ豪雨、記録的な集中豪雨が各地で頻発しているが、それは同時に川の最上流部に陸封された「イワナの危機」「生物多様性の危機」でもあることを痛いほど思い知らされた。さらに白神岳に源を発する世界自然遺産追良瀬川流域や赤石川などでも甚大な被害を受けたのではないか。早急な調査を望みたい。
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