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初夏の花、毛バリ釣り、大イワナの滝壺、イワナ天国、カモシカと急接近、場荒れと魚影・・・
昨年の夏、イワナの魚影が極端に少なかった沢へ
今年初の毛バリで釣ってみると、いきなり尺イワナがヒットした
さらに、ゴルジュ滝の滝壺では・・・40cmを優に超える大イワナが姿を現した

昨年の記録「2011夏 クール沢遊び」には・・・
「食い筋の瀬尻にイワナの気配は全く見られない
偵察隊の小イワナ一匹走らない・・・まるで沈黙の川に竿を出しているような感じだった

あの「沈黙の川」が「イワナ天国」に一変していた

▲初夏の花・タニウツギ

冬の豪雪、4月早々の爆弾低気圧の影響で、林道も至る所が崩壊している
次回に山ごもりする予定の林道状況調査に出掛けた
昨年は、林道起点から4.5kmほど奥まで車が入ることができた

今年はどこまで入れるか・・・
案の定、わすが2kmほど走ると法面崩落で通行止めとなっていた

後は、登山とタケノコ採りを予定していたが・・・
時計はまだ5時過ぎ・・・見上げれば雲一つない好天であった
涼しい谷を歩きながら、今年初めての毛バリ釣りをしたくなってしまった

釣りバカにつける薬はない
日帰りの小沢に向かったが、二ヶ所とも先行車がいた
やむなく、昨年の夏に山ごもりした沢に向かった

昨年崩壊した土砂はとうに片付けられていた
結局、林道終点まで車が入れた
ラッキーとは思ったものの、これじゃイワナ釣りには何人も訪れていることだろう

昨年の夏、魚影が極端に薄かった謎が解けたように思った
イワナは釣り人に根こそぎ釣られたわけではなく、単なる「場荒れ」ではないだろうか
▲ラショウモンカズラ ▲ヒメシャガ
沢に下りる下降地点まで、崩壊林道を歩くことわずか10分足らず
急斜面の踏み跡は、ヨドメの滝〜ゴルジュ帯を過ぎた地点まで続いている
途中、踏み跡を外して下降し過ぎてしまった

目の前にヨドメの滝が迫ると、断崖絶壁で行き詰る
やむなく急傾斜の細い脇尾根を這い上がる・・・暑さで全身から汗が噴き出す
やっと、踏み跡を見つける・・・以降、慎重に踏み跡をたどる

踏み跡に別れを告げて、ヨドメの滝上・ゴルジュ帯に降り立つ
▲いつもお世話になっている竹濱毛バリ・・・黒系と茶系の毛バリ
▲ジャスト30cmのメスイワナ

暗いゴルジュ帯の深い瀬尻に、木漏れ日が射し込んでいた
水面上を羽虫が盛んに飛び交っていた
よく見ると、時々水面が割れた・・・イワナがライズしているようだ

そのライズしているポイントへ毛バリを流すと・・・一発で食らいついた
合わせてビックリ・・・意外にデカイ
ハリスは1.5号だから強引に引きづり込む

顔は優しいメスだが、計測するとジャスト30cmの尺イワナであった
期待していない沢で、いきなり尺イワナがヒットしたことに驚いた
すぐ上のポイントに毛バリを振り込む
今度は8寸ほどのイワナがヒット
初夏は、やはり毛バリの威力が素晴らしい

ゴルジュ帯を抜けると、砂地に釣り人の足跡が無数にあった
林道終点まで車が入れることを考えると、当然のことだった
こうした沢は、雪代が終わると、急激に場荒れしてくるが・・・
▲黒系毛バリを丸呑みしたイワナ、濃い着色斑点が際立つ

途中、ハリスが穂先に絡まったため、仕掛けを作り直した
その際、毛バリを茶系から黒系に変更した
すると、上の写真のとおり、毛バリが見えなくなるほど丸呑みした

つまり、イワナの場荒れはまだしていないようだ
高巻を強いられる第二ゴルジュ帯
左の岩壁の凹部を這うような姿勢で通過し、灌木類につかまって斜面にとりつく
屹立する斜面は、木の根をつかみ、猿のように四つん這いになって這い上がる

昨年付けた赤い目印があった・・・それを頼りにトラバースして沢に降り立つ
巻き終えてから下流のゴルジュを覗くと・・・
釣り人が悪戦苦闘して張った真新しい残地ロープがあった
毛バリは久しぶりだったので、早合わせし過ぎて失敗するケースが続出した
イワナが出たら、早合わせするのは×・・・むしろ毛バリを送り込めば確実に釣れた
その勘を取り戻すのに時間が掛かり過ぎた

終わってみれば毛バリのヒット確率、何と50%程度と低い
これじゃ、ヘボ毛バリ釣りであった
エサのようにほぼ100%釣れると、釣欲を失うが、毛バリで外すと釣欲は俄然増すから不思議だ

ほどほどに釣れるから、オモシロイ
ただし、ほとんど釣れない釣法は、誰だって×である
ちょっと強い光に反射して分かりにくいが・・・
側線前後の着色斑点、腹部の柿色も極めて濃く、赤腹イワナに近い個体である
八幡平の葛根田川や大深沢に生息する独特のイワナに近い感じがする
F1、F2を過ぎると深く大きな釜をもったゴルジュ滝F3に出会う
釜は深く大きい・・・淵尻に悠然と泳ぐ大イワナが見えた
姿勢を低くして接近・・・大イワナの近くに毛バリを落とすも、全く反応しない

さすが百戦錬磨の滝壺の主だ・・・稚拙な毛バリを簡単に見抜いたようだ
この沢の上流部では、最大の釜をもつ滝壺だ
恐らく、源流部で大きくなったイワナは下流に下り、この滝壺で大イワナに成長するのだろう

左の大岩下の穴は大きく、50cmや60cmクラスの大イワナでも十分快適な棲家に見える
まさに「大イワナの滝壺」である
対岸に渡って岩の上から観察すると・・・
大イワナは、釣り人を無視するかのように悠然と泳いでいた
最大のズームアップで撮る・・・優に40cm以上はある大イワナだ

いつかあいつを釣ってみたい
まてよ、帰りにもう一度挑戦してみようかとも思った

しかし、こういう大イワナを釣るには、天の力を借りるしかないだろう
こんな丸見えの澄んだ流れで、かつ雲一つない快晴・・・
釣れない釣り日和では、相手にしてもらえない

こいつを釣り上げるには・・・大イワナが冷静さを失う瞬間を狙うしかない
それは雪代最盛期の頃、又は雨後の笹濁りを狙うしかないだろう
それだけ水位が高くなるから、沢の危険度はグ〜ンとアップする

だから源流の大イワナを釣り上げるには、至難の技である
サラリーマン釣り師にとっては、極めて確率の低い偶然を期待するしかない
それだけ大イワナは、釣り人より賢い
ゴルジュ滝を越えると、谷は一気に開け穏やかになる
昨年7月の三連休の頃は、走るイワナの姿が皆無であった
ところが、今は、イワナがあちこちの瀬から走る

一体、このイワナたちは、どこに隠れていたのだろうか
まるで、別の沢に入り込んだような錯覚を覚えるほど、イワナの魚影は俄然濃くなった
イワナ天国で、黒系の毛バリを振り込む
すかさずラインが上流に走る
合わせるまでもなく、イワナは毛バリを丸呑みにしていた

泣き尺サイズで、かつ美しい黄金イワナであった
ちなみに、イワナ天国に来れば、毛バリでも技はほとんど必要がなくなる
向こうから勝手に毛バリに食いつく
昨年の記録には、イワナの魚影が見えない沈黙の川に対して次のように推測していた

源流部は、ブナ帯の原生林が深く、イワナの宝庫を連想させる
しかし、気温、水温ともに高いせいか、瀬を走るイワナは皆無に等しかった
真夏日が続く渓では、目視や釣りによってイワナの魚影を確認するのはほとんど不可能に近い

釣りのアタリは極端に少ないものの、イワナが生息していることは確認できた
改めて、春一番あるいは雨後の笹濁り時に探ってみたい
恐らく、イワナがどこから湧いてきたのかと驚くほどの入れ食いが続くであろう


その予想は的中した
やはり、年間を通してイワナを追わないと、正確な魚影の判断は下せない
源流部二又上流部は、ブナやミズナラの原生林も深くなる
ブナ帯の原生林が深くなれば、イワナの魚影も濃くなる
林床には、写真のとおり、ネマガリダケ(チシマザサ)が密生していた

いつもなら、クマも大好物なタケノコが生えている頃だが、何も生えていなかった
山菜採りで最も人気が高いタケノコだが、今年は、発生するのが遅い
そのためか、山の奥へ入り込むタケノコ採りの人たちが増え、遭難が相次いでいるという
魚体は全体的に白っぽく、秋田美人タイプ
側線前後の橙色の斑点、腹部の柿色も鮮やかで美しい
思わぬ入れ食いに、8寸以下はリリースしながら釣り上がる
流木堰堤を越すと、分厚いSBが現れた
無理をせず、下がって右の小沢を偵察してみることにする
小沢だけにさもない淵だったが、いきなり尺物が掛かった

その勢いにつられて、テンカラのようにビシッと強合わせをしてしまった
エサ竿の穂先が折れ、イワナに仕掛けごと水の中に持っていかれてしまった
こんな単純ミスをするということは・・・無用な殺生はやめろ・・・ということだろう

▽カモシカと急接近

 帰路、ゴルジュ滝の右岸を巻こうとしたら・・・突然、山の上からカモシカが猛烈な勢いで下ってきた。危うくぶつかる寸前で急ブレーキをかけ、反転、10mほど駆け上がってから立ち止まって私を睨んだ。

 カモシカも驚いただろうが、こちらも驚いた。危うくクマ撃退スプレーを出すところであった。ビックリさせないでよ、カモシカちゃん!前回はクマ、今回はカモシカ・・・野生動物は、人間を警戒しなくなったのだろうか。
▽イワナの場荒れと魚影考

 終わってみれば、イワナのサイズは8寸〜尺サイズで、かつ魚影の濃さには驚くばかりであった。

 つまり、真夏に魚影がほとんどなかった沢であっても、釣り人に釣り切られたわけではなかった

 よく釣り人や沢登りの人たちが、あの沢にはイワナの魚影が全く見えなかったと呟き、根こそぎ釣る釣り人を強烈に批判したりするのをよく聞く・・・しかし、私はこの目で確かめない限り信用しない。

 イワナは、釣り人が入り替わり立ち代わり訪れるようになると、警戒して姿を現さなくなる。ましてや沢登りの銀座のような沢ともなれば、なおさらのこと。イワナが人を警戒して釣れなくなる現象を、釣り人は、「場荒れ」と呼ぶ

 場荒れがひどくなると、アタリはもちろん、イワナが走る魚影さえ皆無となる。釣り人は、そんなイワナに騙されて、根こそぎ釣られたか、あるいは毒流しされたのではないかと疑い、「魚影は極端に薄い」と錯覚してしまう。昨年夏は、まさにそんな錯覚を覚えるほどの「沈黙の川」であった。

 それが一転、初夏になると、良型イワナが毛バリを丸呑みする・・・大淵に悠然と泳ぐ大イワナが姿を現す。これじゃ、まるでイワナ天国ではないか。

 同じ沢なのだが、初夏と真夏では、天国と地獄ほどの落差があった。この不思議な現象は、人間の頭では到底理解できない。イワナたちは、あの手この手で攻めてくる釣り人から、どのような術をつかって姿をくらましているのだろうか・・・イワナの謎は深まるばかりである

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