和賀川源流&和賀岳その1 和賀川源流&和賀岳その2 山釣り紀行TOP


和賀岳周辺MAP、ブナのモンスター、水場、牛の首、和賀川源流(ゴルジュ、ゴーロ、滝、ガレ場、二又)、イワナ、ウスヒラタケ・・・
昨年は、大雨濁流に見舞われ、高下登山口まで行きながら無念の敗退
今年は、一転、夕方雨に見舞われたものの、総じて快晴に恵まれた
20年ぶりの和賀川源流行&念願の和賀岳山頂に立つことができた

かつて仙北マタギ、沢内マタギが活躍した秘境・和賀山塊
その山塊の主峰・和賀岳(1440m)の北側斜面に広がるお花畑には、
ニッコウキスゲ、トウゲブキ、ハクサンフウロ、ミネウスユキソウ、ムカゴトラノオ、オオカサモチ、ハクサンシャジン・・・

深い八滝沢の谷底から湧き上がる雲海が稜線を流れる・・・神秘的な天上の花園
和賀岳は、別名「阿弥陀岳」と呼ばれていた・・・まさに「極楽浄土」のような山だった
▲和賀岳周辺MAP(カシミール3Dで作成)

コースMEMO
526m高下登山口733m尾根ブナ原生林870m高下岳分岐水場927mピーク
720m和賀川渡渉点BC和賀川源流探索約3km上流上二又和賀川渡渉点BC
1337m横岳1440m和賀岳
▲西和賀町沢内高下・和賀岳登山道入口
和賀川源流行は、平成2年8月に訪れて以来20年ぶりのこと
真夏の超渇水期であったが、源流に行けば行くほど、なぜかイワナの魚影は極端に薄かった
そう感じたのは、ただ単に「釣りの技術が稚拙」だったからに違いない
それを確認する旅でもあった

和賀岳登山は、秋田県側・薬師岳ルートの人気が圧倒的に高い
それは薬師岳〜小杉山〜小鷲倉〜和賀岳という稜線歩きを楽しむことができるからであろう
しかし、高下口ルートは、和賀川渡渉点にBCを構え、イワナと和賀岳登山の両方を楽しむことができる
だから、山釣り愛好家にとっては、高下口ルートが実に魅力的である
▲登山道入口〜733m尾根  
ブナ原生林の尾根まで標高差200m
日帰り装備なら30分ほどで登れるだろうが、重い荷を背負っていれば倍の1時間ほどかかる
急勾配の登山道を牛馬のごとく、無心に歩く
▲標高733m、ブナ林の尾根に出る
733m尾根より上部は、見事なブナの森が広がっている
20年前・・・左の赤沢コースの踏跡は明瞭であったが、今は藪と化していた
▲高下コース途中の核心部・ブナの森をゆく
なだらかな尾根に広がるブナ・・・その小径を歩くのは楽しい
ブナの幹には、沢内マタギが刻んだ「クマ狩」の文字も見える
マタギの森の主「ブナのモンスター」は健在だろうか
▲上りになると、ブナの木も太くなる
それは恐らく、水分の供給と排水が良好だからであろう
あの「ブナのモンスター」は、なかなか姿を現さない
▲「ブナのモンスター」との再会
高下分岐に向かう途中の急坂左に、仁王立ちしたブナの巨樹があった
見上げると、幹は分厚い苔に覆われ、神の手のような枝幹を天に突き上げている
間違いなく「ブナのモンスター」だ
登山道沿いに林立する中では、間違いなくナンバーワンの巨樹である
しかも、姿・形が格好良く、見る者を圧倒するような迫力がある
樹齢は、ブナの一般的な寿命200〜300年を越え、400年近い老樹ではないだろうか
▲870m高下岳分岐
高下岳まで3.6km・・・意外に遠く、この道を歩く人は希であろう
しかし、和賀川が増水すれば渡渉は困難になる
そんな場合は、高下岳から和賀岳を遠望する以外に選択の余地はないだろう
▲ブナの幹の刻印「水」が水場の標識 ▲登山道から極めて近く、冷たい湧き水はありがたい・・・日照りの年は枯れることもあるという
▲山腹に林立するブナ沿いを水平に横切る平らな道を、沢内マタギは、「牛の首」と呼んでいた ▲920mピーク・・・この右手に自然環境保全地域の看板がある。一服して、和賀川に向かって下る。
▲下る途中の左斜面の小沢に向かって道があった。良く見ると、第二の水場があった ▲ブナの木の根道を下ると、いよいよ和賀川である
▲標高720m・和賀川渡渉点
梅雨期で、水量は意外に多い・・・登山者が飛び石伝いに渉れるような水位ではない
夏でも水は冷たく、透明度は抜群・・・底石まで透き通って見える
川虫も豊富で、渓相がイワナ谷であることを物語っている
この対岸正面、右岸の高台が広いテン場になっている
▲標高720m地点、和賀川渡渉点テン場
初日は、先行していた5人組がブルーシートとテントを張っていた
やむなく、対岸の小沢高台の藪を刈り払い、テン場とする
聞けば、既に今晩のイワナは、この周辺で確保したという

明日から始まる3連休は、人の往来が激しく、テン場周辺では釣りにならないだろう
テン場を設営し、薪を確保した後、遅い昼食をとる・・・時間はたっぷりある
今晩のイワナを確保すべく、私は単独でゴルジュ上流に向かう
▲和賀川渡渉点上流のゴルジュ
谷は狭く、ゴルジュ区間も長い・・・しかし、岩の足場となる凹凸があり、比較的歩きやすい
横断箇所は、少なくとも二箇所・・・増水すれば通過不能の谷でもある
梅雨期は、圧縮された流れが太く、岩をヘツリながら進む
底石まで見える透明度は素晴らしい
流れに入ると、見た目より深く、流れも速いので注意が必要だ
淵も深く、腰近くまで水に浸りながら前進する

暑い夏は、わざと水に入りながら遡行すれば、爽快感は満点である
最後のゴルジュは、左岸を高巻き、開けた河原に出る
見上げれば雲の流れが速く、今にも降り出してきそうな雲行きであった
曇天で毛針釣りには最高のコンディション
水量は豊水で、瀬は流れが速すぎて釣りにならない
緩流帯や瀬脇を中心に毛針を落とす・・・イワナは水面を割って食い付いた
目印が走り、竿先が弓なりになる・・・毛針が見えないほど丸呑みしていた
イワナの活性度はかなり高いことが分かる
▲着色斑点が極めて薄いニッコウイワナ
2匹ほど釣った所で小雨が降り出してきた
急いで釣り続ける・・・こんな時、毛針釣りは効率が良い
▲無着色斑点のアメマス系イワナ
和賀川源流のイワナは、ニッコウイワナとアメマス系が混在している
ちょうど5尾確保した所で大粒の雨が頭を叩き始めた

わずかな区間しか釣っていないが、魚影が濃いことは明らか
なのに20年前は、魚影が極端に薄いと感じていた・・・それは、単に釣りがヘタクソだっただけ
やはり、未熟な技術を棚に上げ、魚影は薄いと判断したのは間違いであった
▲夏の谷を彩るセンジュガンピ ▲ゴルジュ終点から下流を望む

竿を畳むと、夏特有の大雨に激変した
水嵩が増せば、ゴルジュを通過できなくなる・・・危険が脳裏をかすめた
足早にゴルジュ始点まで戻り、左岸の高台の巻きを開始した

ものは試し・・・ブナが生い茂る藪の斜面を歩き、テン場まで戻れるかどうか歩いてみた
急斜面の藪こぎは殊の外暑い・・・全身から汗が噴出す
増水時は、危険なゴルジュを通ることなくテン場まで戻れることが分かった

今晩は、イワナの刺身と蒲焼きを肴に水割りウィスキーを飲む
夜空を見上げると、満天の星が輝いていた
明日の和賀川源流行に備えて、早めにシュラフに潜り込む
二日目、願ってもない好天に恵まれた
和賀川源流行には最高の天気だが、釣りのコンディションは逆に悪い
夏は、源流行の季節だが、イワナ釣りは最も難しい季節・・・
だからこそ、釣り人の技術が問われる季節でもある
▲霧が立ち込める和賀川源流を釣る
夏の和賀川は、気温と水温の差が大きく、霧が発生しやすい
テンカラ竿を背負っていたが、二人ともチョウチン毛針でイワナを追う
結局、テンカラの出番はなかった
▲和賀川源流の美魚
毛針は、上顎に掛かっている
昨日とは違って、毛針を丸呑みするイワナは皆無だった
快晴ともなれば、イワナの活性度は極端に落ちることが分かる
和賀川は、ゴルジュから穏やかな河原、そして階段状のゴーロへと変化する
いつものことだが、絵になるゴーロ区間はイワナの魚影が薄い
荒釣りしながら先を急ぐ
▲夏のキノコ・ウスヒラタケ
ゴーロ区間の倒木下に、クリーム色の鮮やかなウスヒラタケがびっしり生えていた
イワナとキノコ・・・これだから谷歩きはオ・モ・シ・ロ・イ
背中からナイフを取り出し、丁寧に採取する
▲3〜5匹ほど釣ったら、生かしたままデポする
▲巨岩 ▲F1の小滝
▲F2・・・上段にも滝が連続し、総落差は12m程度 ▲強い日差しが谷に降り注ぐと、下手な毛針は偽者と見破られやすい。そこで相棒は、毛針にブドウ虫を付ける。何と、入れ食い状態で釣れるではないか。
▲和賀川源流を象徴するような清涼感溢れるF2上段の滝
深緑の谷に懸かる清冽な瀑布
滝壺は、渓畔林を映して藍色に染まっている
猛暑の夏は、この清冽な飛瀑を浴びて歩くのが楽しい
▲谷は次第に狭くなり、「石化け、木化け」で釣る ▲昼食は、イワナ3尾をさばき、旬の刺身を美味しくいただく

毛針+エサ釣法
真夏日の日中は、源流と言えどもイワナの活性度は極端に落ちる
私が毛針で外したイワナでさえ、相棒は毛針+ブドウ虫で釣り上げる
毛針にエサをつけるのは邪道と笑う人もいるが、これも立派な釣法の一つである

毛針に本物のエサを付けてポイントに沈める
上下すれば、ハックルの毛が踊り、イワナの食い気を誘う
その下に本物のエサがついているのだからたまらない・・・釣れるのは、ごく自然なことである
▲岩手フキもデカイ
▲ガレ場
この巨大なガレ場は、一時期谷をふさぎ、自然堰止湖を造った痕跡があった
その下流は角ばった石がゴロゴロ転がっていた
こうした荒れた区間は、イワナが極端に嫌う
▲ガレ場を過ぎると、ほどなく標高880m地点の二又に達する
右手の小滝が懸かる沢は、高下岳を源流とする沢である
左が本流だが、水量は、ほぼ1:1である
時計をみれば、まだ午後1時を過ぎたばかりだが、納竿とする
▲生簀を作ってイワナの撮影を楽しむ
全身黄色っぽいニッコウイワナ
体の割には頭がデカク、成長の遅さを物語っているような個体が多い
つまり、40cmオーバーの大イワナは期待できないだろう
結果的に釣り過ぎてしまった・・・痩せたイワナを含めて小さい順に放流しながら谷を下る
▲頭部に虫食い状の斑紋が鮮明な個体

ゴルジュを下り終えると、二人がミミズをエサに釣っていた
聞くまでもなく、釣果はゼロ・・・
高下コースはイワナと和賀岳登山が定番である
なのにイワナの食材を確保できなければ、このコースの魅力は半減する
新聞紙にくるんで大事に持ち帰ったイワナ4尾を差し出す

「えっ!本当にもらっていいの」
「どうぞ、イワナを食わなきゃ、和賀岳に登れんでしょう」
相棒が「刺身でも食べられるよ」とアドバイスする

「魚影は薄い」と呟く登山者たち
3連休は、渡渉点に泊まるパーティが切れることなくやってきた
そのほぼ全てのパーティが、イワナを釣ろうと渓流竿を持参していた
しかし、テン場周辺でイワナを釣ることができたのは初日の5人組だけだった

そして決まって言う言葉は・・・「ここは魚影が薄い」、果ては「イワナはいないんじゃない」
そもそも、人跡希な源流まで来れば、いつでも誰でも簡単に釣れると考えるのは、大きな間違いである
テン場周辺は、連日、人の往来が絶えない

無垢なイワナとは言え、岩下深く隠れて姿すら見せない
イワナの習性を熟知しているベテランなら、そんな早とちりな判断は下さない
▲イワナの刺身 ▲イワナの唐揚げ

イワナづくしの料理とキノコ汁・・・谷の極楽は、山の恵みなくして味わえない
まだ日は高いが、二人で宴会モードに突入する
ほどなく、雷鳴が轟き、バケツをひっくり返したような大雨となる

蒸し暑い夏は、ブルーシートを張ると虫の大群と蒸し暑さに悩まされる
しかし、夏の雨は突然やってくる・・・ブルーシートの有難さが身に沁みる瞬間だった
対岸のパーティは、ブルーシートがない・・・大丈夫だろうか

ほろ酔い加減になると、雨も止み、一転、星空となった・・・(つづく・・・和賀岳登山)

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