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新緑、ツキノワグマ、ニリンソウ、スミレ類、シラネアオイ、雪代ピーク、山菜とイワナ、山釣りと縄文人のDNA
 2014年GW後半、今年初の山釣りへ・・・イワナ谷は萌え出る新緑に包まれていたが、残雪は意外に多く、雪代はピークを迎えていた。だから遡行に難渋するだけでなく、イワナのポイントも極端に少ない。しかし、日当たりの良い斜面には、山菜シーズンの到来を告げるニリンソウが咲き始め、楽しい山菜採りを満喫した。
 上の写真をご覧あれ・・・ツキノワグマと格闘し、ノックアウトさせたかのように見えるであろう。
 今年は会結成30周年の記念すべき年だが・・・何と死んだばかりのツキノワグマに遭遇した。こんなことは一生に一度あるかないかの珍事・・・Part2で詳細を報告したい。
▲新緑とオオヤマザクラ ▲ニリンソウ ▲ヒトリシズカ
 年齢を重ねる度に思うのは、体力の衰えである。二泊三日の荷を背負い、アップダウンの激しい杣道をほんの少し歩くだけで息切れする。何度も休みを繰り返し、萌え出た新緑の森を見上げる。沈黙していた森が一斉に芽吹く姿を見ていると、次第に生きる力、元気がみなぎってくるから不思議である。
▲キバナイカリソウ ▲タチツボスミレ

 「山路来て 何やらゆかし すみれ草」(芭蕉「野ざらし紀行」)
 山路をたどると、ふと路傍に紫色のすみれの花が咲いている。ひっそりと春を告げるその姿がどことなく慕わしいという意味。春を告げるスミレは種類が多く、古くから日本人の心をとらえてきた草花である。 
▲萌え出る新緑の若葉
▲オオカメノキの白花 ▲ムラサキヤシオツツジ
▲エゾエンゴサク ▲ヤマワサビの白花  ▲シドケ 
▲山菜シーズンを告げるニリンソウの群落
▲小沢両サイドの斜面は、アイコ、シドケが採り切れないほど生えていた
▲地元の山菜採りのプロ・・・茎が太い極上のシドケを背負いきれないほど採っていた
▲今晩の山菜を摘みながら本流へと下る

 下界では、肉や魚、野菜など食べ物全てをお金で買っている。その分、食べ物を調達する苦労も少ないけれど、満足度も低い。そんな日常を離れて山にこもると、お金では何も買うことができない。だから山の野菜を採り、山魚のイワナを釣り、倒木をノコギリで切って薪集めもしなければならない。そんな半自給自足的な生活をしてみると、苦労した分だけ満足度が高いことに気付かされる。 
▲シドケ

 シドケが生えている斜面には、ブナなどの広葉樹の落葉に覆われている。こうした腐葉土の厚い所に生えるシドケは、茎も太く品質も高い。山菜のプロたちは、こうした奥地のブナの森をフィールドにしている。中には、イワナ釣りを兼ねて山菜を採る地元の人たちとも良く出会った。しかし、近年、高齢化でリタイヤしたのか、そうしたプロたちを見る機会がほとんどなくなったのは寂しい。  
▲アイコ  
▲アザミ ▲シラネアオイ ▲スミレサイシン
▲新緑の谷とは思えないほど巨大な雪渓がいつになく多い。

GW後半に谷が新緑に染まる年は、一般的に雪解けが早い。
ところが、今年は新緑の季節になっているものの、意外に残雪が多いのが大きな特徴である。
 雪代はピークを迎え、釣りながら沢を横断することは危険を伴う。見た目より流れは速く、足を置いた石が流されるほど速い。無理して渡れば転倒したり、流されたりする確率が高いので、沢の渡渉は諦めるしかない。さらに雨が降れば、遡行は完全不能に陥る。こうした雪代の場合は、「釣りはほどとぼに」のサインである。
 午後から一時的に雨が降り、雪代に雨も加わり濁流と化した。こうなれば、ミミズに勝るエサはない。しかし、沢を一切横断せずに釣りをせざるを得ない。横断せずに移動できる距離は、数百m程度に過ぎない。そのわずかなポイントを丁寧に探って、何とか一人2尾程度を確保したところで納竿とする。
▲今晩のメインデッシュ・・・ブナの森の恵み「イワナ」

 数こそ少ないが、刺身サイズのイワナがそろった。腹を割き、内臓を取り除いてから、渓流水で背骨付近にある血合いもきれいに洗い流す。雪代で増水した渓流水は、手を切るほどに冷たく、数匹処理すれば、手の感覚がなくなってしまう。
▲イワナの刺身 ▲採取したアイコ
▲山菜は焚き火で湯がく ▲沢水にさらし、皮をむいて調理
▲湯がいて沢水にさらし、水気を絞ったシドケ ▲野趣あふれるイワナと山菜料理で春の宴会

 雪代で沸き返る沢の音を聞きながら、焚き火を囲み、イワナと山菜のフルコースを肴に宴会がスタート。こんなことを30年間欠かさず繰り返してきたが、全く飽きることはない。それどころか、これが最高の至福の世界であるとの確信に至りつつある。

 かつて日本の開始は、大陸から進んだ文化を持った人々が渡来してきて、水田稲作を始めた弥生時代からと教えられた。それ以前の縄文文化は、先住民族の遅れた人々の異文化であり、考古学の世界でも軽視されていた。けれども、今や「縄文人は我々の祖先」というのが定説になっている。

 狩猟漁労採集文化の中で最も発展した縄文文化は、自然と人間とが一体の文化である。東北の基層文化を探れば、間違いなく縄文・蝦夷の文化に辿り着く。それを支えた森がブナの森である。だからブナの森をフィールドにする山釣りの世界に人生を狂わされるのは、ブナの森に生かされた縄文人のDNAが不思議と蘇るからであろう。(つづく)

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