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当たり5本、総重量16kg、ツトの作り方、絹・綿の風呂敷、乾燥マイタケ、後処理と保存、マイタケ料理・・・
2010年9月25日(土)、前回は雨のため、とりあえず記録的な写真しか撮れなかった
今年はマイタケが豊作・・・この絶好の機会を逃せば、簡単に撮れる獲物ではない
天然マイタケの写真を自分の足で思う存分撮りたいと思い、再度マイタケ山に向かった

朝4時、家を出発・・・車止めには、先行車1台しかなかった
車止め発5時半、山に向かおうとすると、一気に3台の車がやってきた
マイタケに狂わされた人の多さには、いつも驚かされる
地図と標高、林相を読みながら歩くと、予想通り当たりが連発した
午前11時、65リットルのザックは満杯・・・収穫は、今年最高の16kgであった
採取したマイタケの株を並べ、4年目にしてやっと「夢が現実」になった感激をかみしめた

夢を見ることは、誰でもできる・・・しかし、「夢は見るものではなく、追い掛けるもの」

当たり1本目・・・サカリ5株
杣道から沢に降り、傾斜のきついゴーロを歩く
瀬尻からイワナが走る・・・やはり藪道を歩くより、水の道を歩く方が楽しい
目的の小沢に向かうと、先行者がすぐ右の脇尾根にいた

やむなく沢を下がって、下流の脇尾根を上った
沢沿いを好むサワグルミ、トチ、カツラなどの林を抜け、傾斜がきつくなると、
ブナとミズナラが目立つようになる・・・対岸から、マイタケ採りの人たちの声が聞こえた
右手の急斜面にミズナラの巨木が見えた

近付くと、根の上側に一株発見
ザックを下ろし、カメラを出して根の下側へ
あった、あった・・・全部でサカリが5株もあった・・・じっくり撮影に専念する
▲草に覆われていたマイタケ
右の写真のとおり、草が被さっていた部分の葉は変形し白っぽくなる
数多く当たり始めると、初めて気づくことがある
それは、標高や地形、場所によって、色や形、大きさが異なり、多様性に富んでいることである

それだけに、数枚程度しかない図鑑では、決して見ることのできない面白さがある
例えば、低木の枝や枯れ木に挟まれたり、小石を抱き込んだり、
根の深い窪地から茎が長く伸びたり、乾燥マイタケ状態になったり・・・
▲下から見上げて右側に生えていた2株
低木や草に邪魔されずに成長したマイタケは、姿、形、色ともに美しい
この木には、左側に2株、右側に3株生えていた

この急斜面で、株を壊さずに、どうやって回収したらいいのだろうか
安定した場所は根の上部しかない・・・そこまで運ぶのが大変である
株を下から起こすように採り、25リットルのビニール袋に入れて根の上に運ぶ
右下の写真のとおり、根の上に全ての株を運び、ビニール袋から取り出す
ビニール袋では、痛みが激しく劣化も早くなる
今回は風呂敷を4枚準備・・・風呂敷に丁寧に包み直し、ザックに入れて背負う
▲サワリ状態のマイタケ
この木は、採られた痕跡が残っていた
良く見ると、マメやサワリの状態の株が数株あった
つまり、マイタケは時期をずらしながら次から次へと生えてくるのが分かる
従って、採取した木の周辺を時期をずらしながら巡回すれば必ず当たるように思う
当たり2本目・・・小さめ5株
▲下から見上げて根元右側に着生したマイタケ
今日は、予報は晴れだったが、一日中曇天で山から吹き降ろす風が強かった
マイタケが生えている場所は暗く、フラッシュ撮影をするしかなかった
小さめの5株は、風呂敷に入れるサイズでないのでビニール袋に入れる
▲根元左上部に着生したマイタケ・・・枯枝に挟まって内部は変形していた ▲根元左側に着生したマイタケ

当たり3本目・・・1株 
▲根の幹下に着生した株
これから生えてくる木なのだろう
採取できるサイズは、まあまあのサイズ1株のみ
周囲を探ると、左上の草場の根にサワリの株があった
▲色は茶黒く、葉が下に垂れ込んでいる個体 ▲イワウチワの葉の下にあったサワリの株

標高を見ると、既に800m付近に達し、林相は笹とブナの純林となった
これより上は期待できないだろう
下流側にトラバースし、枯れ沢を横断、次の脇尾根を下ることにする
その途中で、4本目の当たりがあったが、危うく見逃すところだった

当たり4本目・・・サカリ2株
▲花崗閃緑岩を抱くミズナラ、その急斜面に生えていたマイタケ2株
次の脇尾根に移る区間は、滑り落ちるような急崖になっている
上の写真のマイタケには気付かず、そのすぐ脇を下り終えてから、ふと思った

花崗閃緑岩は 「ナラノキイシ」と呼ばれ、マイタケ採りに欠かせない重要な石だったことに気付いた
振り返って、大岩を抱くミズナラの見事な光景を見上げた
いかにもマイタケが生えそうな木だなぁ・・・視線を右下に落とすと・・・

あっ、あっ・・・あったぁ〜
やはり、先人の諺は当たっていると改めて思った

急ぎ急斜面を四つん這いになりながら這い上がり、やっとの思いで根の上部まで戻る
唯一安定した根の上にザックを置き、カメラを取り出す
足場を固めて撮ろうとしたら、足元がずれ落ちるほど危険な斜面だ

写真を撮るのも命懸けの作業だ
それだけに価値ある写真だと思う
▲下の大株アップ
開いた葉が横又は上に真っ直ぐ伸びたマイタケは、いかにも働き盛りようにも見える
色、姿、形の良いマイタケは、肉質が締まり、香り、歯切れともに最高である
大事に風呂敷に包んでも、こうも当たると上からの重みで下のマイタケは壊れてしまう
マイタケのプロは、葉がついたままのオオバクロモジの枝で「ツト」を作り、壊れないように背負う
「ツト」とは、昔、稲ワラで納豆を包むような状態を言う

そんな技も余裕もないから、風呂敷に包んだマイタケを重ねて背負った
家に帰って唖然・・・ザックの下半分近くは形が崩れていた
これでは商品価値がほとんどなくなる・・・売るわけでないから味には問題なしなのだが・・・

▽ツトの作り方・・・戸堀マタギに電話で聞くと・・・
葉のついたクロモジの枝を三尺ほどの長さに数本切る
葉先側は弱いので、互い違いにする

それを×状態、あるいはマイタケを包み込むように数多く置き、その中にマイタケを入れ
折り曲げてから端と端を合わせて細ヒモで結ぶ
つまり、風呂敷で包むのと同じ感覚で、クロモジの枝で包めば良いのだろう

何となく分かった気がするが、こればかりは現場でやってみないと分からない

▽絹・綿の風呂敷
戸堀マタギから夜に電話があった
わざわざマイタケ採りのプロから聞いた話を伝えてくれました
その話によると、ビニール製の薄い風呂敷は×

絹の厚手の風呂敷に入れ、きっちり結べば、その上に重ねても崩れないと言う
これなら誰でもできる・・・ぜひ試してみたいと思う

 当たり5本目・・・大当たり9株
▲崖下の直下に生えていたマイタケ
ヤセ尾根を下る途中、右手に切れ落ちような崖があった
こんな急な崖下にミズナラが立っていた
上から、その根元を見下ろすと、マイタケらしき大きな塊が2個見えた

急崖のためか、乾燥して色が変色しているように見える
どうしたらあの根元に辿り着けるか・・・
低木類につかまりながら、崖のわずかな小段を辿り、微妙なバランスで下りる 
根元の上にザックを置き、左下を覗くと大株が見えた(左上の写真)
それにしても危険な崖である
ザイルで補助しないと、一般的に安全とは言えないような危険地帯だ

けれども大株を見てしまった以上、下側に行かざるを得ない
ザイルは背負っていたが、出すまでもないだろう
ほぼ垂直に近い斜面を下りて2株を見上げるように撮る(右上の写真)
▲根と岩のわずかな隙間から茎を伸ばしたマイタケ・・・意外に奥が深く、茎の太さに驚かされる ▲岩場の草付けに生えた中株
▲ほぼ垂直に近い根の右側に生えた大株
こんなにデカイ大株になると、地震がくれば崖下に落下するのではないか・・・
と思うほど、微妙なバランスで生えていた
これを撮るのも、壊さず採って回収するのも大変な作業だった
▲右横の2株  ▲左横のサワリの株
▲崖地の上部に生えた乾燥マイタケ
マイタケが生えている根の下は、岩がほぼ垂直に切れ落ちていた
従って、雨が降っても保水力はゼロに近い状態であろう
このマイタケは、そのままでも乾燥マイタケとして保存できるような株であった

色は微妙に変色し、生えている場所に近い保護色で、
よく見ないと、見逃してしまうような株であった
▲一本の木から大小合わせて9株を採る
全ての株を並べて、マイタケ採りのクライマックスを撮る
ほっとしたのも束の間、歩き過ぎてガス欠状態になっていることに気付く

パンを頬張ったが、水がないので喉が通らない
おにぎり一個を食べて、エネルギーを充填する
二つの風呂敷に包み、ザックに入れたらほぼ満杯になった

背負ってビックリ・・・3日程度の山ごもりザックより重いではないか
ちなみにマイタケは16kg、カメラなどザック本体の重量は5kg、合わせて21kgもあった
20kgを越えると、山を自在に歩くには重過ぎる

もはや荷の限界に達していた
重荷を背負って、この急なヤセ尾根を下るのは危険極まりない
下流側に枯れ沢を巻き、やや穏やかな尾根にとりつき、まっしぐらに沢に向かって下った
後処理及び保存法
ブルーシートを敷いた上に、本日の獲物を並べる
壊れたクズや形が崩れた株から処理する
根の石突はナイフで切り取り、株全体の泥やゴミを取り除く

調理しやすいサイズに縦に裂き、直径30cmのザルに入れる
一杯になったら、二度ほど水洗いし水を切る
今晩の調理用と保存用に分ける
▽冷凍保存法
1.水洗いをしないで、そのまま冷凍保存する
2.水洗いした後、ザルに入れて水を切ってから冷凍保存する
3.水洗いした後、水を切り、マイタケを新聞紙の上に広げ、扇風機で一晩乾かしてから冷凍保存する

いずれも、フリーザーバックに入れ密封してから冷凍保存する
いずれの方法がベストかは、今後、解凍して香り、歯切れを比較してみたいと思う

▽乾燥保存法
マイタケは一枚づつ細かく裂いて、ゴザやザルの上にできるだけ重ならないように広げる
光の当たる風通しのよい場所で2日間ほど天日干しにする
十分乾燥させた後、缶やビニール袋に密封し冷暗所に保管する

マイタケの市場性が高い理由
マイタケは、プロや一部のマニアックな人しか採れないキノコの代表であること
天然物は、栽培物と違って巨大な株になり、極めて香りが良いこと

味も一流で、歯切れも素晴らしい
油や和風だし、醤油、味噌、素焼き・・・和風料理、洋風料理にも合う万能キノコであること
さらに、腐りにくく、保存性は、数あるキノコの中でも極めて高いことである

マイタケ料理例
▲マイタケ鍋・・・マイタケをメインに、豆腐、豚バラ、ネギだけの特製鍋 ▲マイタケの天ぷら
▲焼きマイタケ ▲マイタケうどん ▲マイタケご飯
▲マイタケと豚バラの油炒め ▲マイタケのお吸い物 ▲イワナの燻製 
マイタケ料理
 天然の風味と歯切れの良さを生かすには、短時間に調理できる料理が最適である

 一般的な料理は、天ぷら、炊き込みご飯、鍋物、土瓶蒸し、お吸い物、味噌汁、佃煮、茶碗蒸し、炭火焼・ホイール焼き、マイタケ酒、酒蒸し大根おろし和えなど。特に秋田では、きりたんぽやだまこもちなど郷土料理に欠かせないキノコの筆頭である。

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