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巨大群生その1〜その6、ナメコ、遊びじゃなく仕事、二人で46.5kg、サワモダシ狂想曲の一日・・・
旬のサワモダシ(ナラタケ)のピークを予測し、相棒と二人でブナ帯の森に向かった
結果は、想定外の大、大爆発
ブナの風倒木を埋め尽くすように生えたサワモダシの群生に・・・

「わぁっ、これは何だ、すげぇ〜」を連発
二人で採るには、桁が一桁、いや二桁も違うほど、想定外の大豊作だった
それも、腐ったものはほとんどなく、9割以上は旬のサワモダシであった
二人で、傘裏の白い上級品だけを選び、つまみぐいをするように採りながらブナ林の奥へと向かった
結果的に、担いで何とか歩ける限界の重さまで採取してしまった
荷の全体重量は30kg、相棒が26kg・・・

ザック等の重さを引いたサワモダシの重量は、二人で46.5kgに及んだ
雪国のブナ帯では、雑キノコ採りと言えども、知られざる「夢のような物語」があった
一日、そんな「サワモダシ狂想曲」に酔いしれた
▲傘が開きかけたサワモダシの幼菌 ▲極上のサワモダシ成菌・・・傘の色は、場所によって白色系から淡い褐色、赤褐色など多様。傘裏が白っぽいものが旬。

家を4時前出発・・・5時に相棒と合流し、雑キノコ山に向かう
まだ薄暗かったが、既に2台の車が夜明けを待っていた
猟犬を連れた地元のマイタケマンは「マイタケ採りだがぁ」と聞いてきた

「マイタケ採りは終わりにしました・・・サワモダシ狙いです」
「やっぱり終わりがなぁ・・・前回残してきたマイタケでも見にいくべと思って」
「○○の山は、10月初旬頃に出てきたマメやサワリは、全部採られていだがら」

「んだがら、おらは○○の山さは行がねぇ」
マイタケ採りの稀な山なら、まだ期待できるだろう
先行の二人は、夜明けと同時に奥山に消えていった
6時ちょっと前、準備完了し、車止めを出発
ほどなく、いつも腰に下げるクマ避け鈴とクマ撃退スプレーをベルトごと忘れたことに気付く
相棒に聞くと、クマ撃退スプレーは持っているとのこと

それなら安心だ・・・幸い、いつもザックに吊るしているクマ避け鈴はあった
杣道沿いの倒木には、サワモダシが目立つ
しかし、本命の奥山に達するまでは、全てパスして歩く

枝沢に入ると、先行していたサワモダシマンがゴミ袋にたくさん採取していた
やはり、予想は的中したようである
相手が叫んだ・・・「マイタケ採りだがぁ」

「いやいや、サワモダシだぁ」
「この奥さ行ぐんだがぁ、おらぁ、長靴なんで奥さは行げねぇ・・・、
今日はいいんじゃないがと思って、会社休んで来た」

「それは正解だね」と言うと、サワモダシマンは、当たりが的中したことに
満面の笑みを浮かべ、キノコの山と化した風倒木に向かって駆けていった
▲サワモダシ幼菌の色は、場所によって千差万別だが、全てが旬である・・・稀に幼菌でも傘裏が腐っているものがあるので注意 ▲成菌の旬は、傘裏で確認する・・・傘裏が白〜淡い黄色系、クリーム系が旬である

サワモダシマンと分かれて、朝飯はいつもの名水の場所と決めて杣道を歩く
ところが、杣道の真ん中、斜面、朽ち果てた倒木、草むらの下、立ち枯れのサワグルミの根元など
ありとあらゆる所に旬のサワモダシの群生が続き、なかなか前に進めなくなった

もったいない採り方だったが、ツマミ食いするように採取しながら進む
▲ナメコの幼菌・・・豆粒なのでパス  ▲ムキタケの幼菌

例年、サワモダシが生え出すのは9月20日過ぎ
今年、初めてサワモダシを確認したのは、例年より2週間以上も遅れた10月9日である
そのわずか2日後、大爆発の予兆である幼菌が到る所に見られた

今回は、初確認からわずか5日しか経っていないが、既に大爆発
遅れを一気に挽回するかのように、倒木の下、横、上、草木の下などを問わず、
幹周りを埋め尽くすように一斉に生え出しているのが、今年の特徴である

さらに、晩秋のキノコの代表であるナメコやムキタケの幼菌も目立ち始めた
もう一週間もすれば、黄葉の峰走りは谷に達するであろう
それを考えると、サワモダシの旬は、1週間あるかないかであろう
サワモダシの巨大群生その1
巨大な群生その1は、倒木の根元から幹全体に大蛇のごとく群生していた
それもほぼ100%が旬・・・ここで全て採取していたら、奥まで行かずに終わってしまう
楽して採ろうとすれば、担げるだけ採って帰るのがベストの選択かもしれない

しかし、奥地の状況を確認しないと、次回のナメコ、ムキタケの旬を予測できない
だから間引くように採取し、先を急ぐことにする
それでも、朝飯の名水場に到着したのは、午前8時をとうに過ぎていた
▲私のデポ1・・・右の袋は25リットルの大袋。蒸れないように口を開けたままにしておく。 ▲相棒のデポ1・・・既に3つの袋満杯に採取。右のザックは55リットルのアタックザック。

名水でお湯を沸かし、お吸い物とおにぎり、パンをほおばる
遅い朝食後、ここに採取した袋をデポする
対岸の倒木を見ると、キノコらしきものが見えた
その状況を確認すべく、沢を渡渉して対岸へ
対岸から見える部分は、まばらにしか生えていなかったが、反対側を見るとサワモダシが群生していた
後ろを振り返ると、細い枝にも群がって生えていた
急いで採取したが、すぐに袋は満杯になった・・・この袋もデポ1に置いて先を急ぐ
巨大群生その2・・・ナメコとサワモダシ
いつもお世話になっている倒木まで来ると、
いつもの場所に早稲の極上ナメコが群生していた
例年なら、ナメコが生える時期は、サワモダシはほとんど腐っているのが通例である

しかし、倒木の下を見ると、旬のサワモダシが幹に群がるように生えていた
▲極上のナメコだけは完全に採る ▲旬のサワモダシの群生・・・つまみ食い程度にとどめる

採取したナメコとサワモダシは、ここにデポ2して先を急ぐ
巨大群生その3・・・本日のクライマックス
対岸を眺めると、ブナの風倒木にキノコらしき群生が見えた
沢を渡って、唖然・・・
目の前全ての倒木にサワモダシが群がって生えているではないか

二人は奇声を発した・・・「何だ、こりゃ・・・すげぇ〜」
群生その3は、想定外の大群生で、本日のクライマックスだった
サワモダシは、広葉樹、針葉樹を問わず群生し、近場でも簡単に採取できる

だから、奥地でサワモダシマンと会うことはほとんどない
しかし、100年〜200年ブナに生えるサワモダシは一際美しく、群生のスケールが違う
そして何より、天然キノコの風景を撮るにも一級品の被写体である
▲まるで生きている大蛇が、幹の全身に巻き付いているかのように群がって生えるサワモダシの大群生
興奮覚めやらぬ状態でシャッターを押しまくる
これを全て採取したならば、数十キロに達し、とても担げる量ではなかった
全体を見渡し、若いものが群生している場所から採取開始・・・
▲折り重なるように生えた成菌
▲傘が開いた旬の成菌  ▲既に白い粉状の菌糸が見えるが、傘裏は白く旬・・・つまり、ほとんどが旬のサワモダシであった

ナイフで株ごと切り取り、採っても、採っても尽きることはない
相棒が「柴ちゃんじゃないけど、飽きだなぁ〜」と言った
「こうなりゃ、遊びじゃなくて、仕事だ・・・担げるだけ採ろう」

こんなことは滅多にあることではない
採集の遺伝子が騒ぎ、夢中で採り続けた
1時間ほども採っただろうか・・・
このまま採り続けたら、ここでTHE ENDになってしまう
1/5も採っていないが、大袋一杯になったことだし切り上げる

取り残した群生を眺めて・・・「もったいにゃなぁ」と呟く
常識人なら、ここで担げるだけ採取し、一目散に帰る選択をするだろう
しかし、山釣りバカは、奥地の原生的なブナ林のサワモダシを見ずには帰れない

杣道に戻って枯れ木の根元にデポ3し、奥地の倒木を目指して歩く
対岸に、ナメコとサワモダシが生える倒木を遠望する
やはり、キノコが群がって生えているのが見えた
そんなものまで採っていたら、とても奥地は探れない・・・無視しながら高度を稼ぐ

さらに、杣道の真ん中や草むらの下にもサワモダシが生えていたが・・・全てパス
巨大群生その4
杣道から沢に下り、狙った倒木の1本目を探る
倒木も大分疲れてきたのか、まばらにしか生えていなかった
本命の大木の上側を見ると、大きな塊が見えた
これは後で採取することにし、すぐ隣の本命倒木に向かった
巨大群生その5・・・幼菌の群生
本命の倒木は、全体に生えているものの、下側部分は湿り気が強く半分ほどは腐りかけていた
さらに、いつも生えている倒木左下のナメコは、早くも傘が開き全部が腐っていた
これは想定外の光景だった

奥地のキノコは、下流部の状況とは明らかに異なっていた
これは、黄葉の季節にナメコの豊作を予兆するような現象ではないだろうか

一方、上部には、幼菌から成菌手前のサワモダシが大きな塊を作って生えていた
下から見上げると壮観な眺めだった・・・群生の美に酔いながらシャッターを押す
サワモダシの幼菌は、形もヌメリもナメコに似ていて、味噌汁、大根おろし和えなどに最適だ
▲互いに「押し競饅頭」をしているような大きな塊の幼菌アップ

急斜面で足場が悪い・・・足場をかため、ナイフで株ごと切り取るように採取する
後処理のことを考え、泥や枯葉などが入らないように丁寧に採取するのがコツである
それだけに時間は、あっという間に過ぎていった
▲傘が開けかけた幼菌は、ナメコと同様、最上級品である
こんな旬のサワモダシに当たるには、わずか数日ずれてもアウトになる
秋田の米の作況指数は、近年聞いたことがない「94」の大不作・・・

春の低温、日照不足、夏の猛暑とゲリラ豪雨、秋の厳しい残暑・・・
こうも異常気象が続くと、キノコのピークを予測するのが難しい
事実、生えてくる時期が例年より2週間前後も遅れた・・・しかし、全てのキノコは「大豊作」となった

地球温暖化は、キノコにとって歓迎すべき現象なのだろうか
ここで二袋満杯に採って昼食をとる
沢沿いのブナを見上げると、葉は色づき始めていた・・・黄葉の季節も近い
採取した袋をデポ4し、最後の奥地3本目に向かう
▲ツキヨタケも遅いピークを迎えていた
巨大群生その6
枝沢に入ると、滝下の倒木にブナハリやサワモダシが見える
入り口の滝を右回りに大きく高巻き、滝上に出る
尾根の斜面から狙っていた奥地3本目の倒木を遠望する

苔生すブナの倒木には、予想通りサワモダシがビッシリ生えていた
しかし、残念ながら倒木の横と下は旬を過ぎつつあった
これで最後と思い、採ろうとすると相棒が言った

「これを採ったら、歩げねぇ」
「今日は遊びじゃねぇ、仕事だ」
と言いながら、傘裏が真っ白な旬のサワモダシだけを選び採取する

「毎日が日曜日」になれば、キノコ採りを仕事にしている妄想にかられる
「山釣り紀行」のHPで、採取した天然キノコの風景をリアルタイムに掲載し、
秋田・源流釣友会のキノコ販売開始・・・
などという夢のようなことを考えてしまうほど、ブナ・ミズナラ林のキノコパワーは凄まじい
戻る途中、草地の斜面に隠れていた旬のサワモダシを見つけてしまった
見てしまった以上、採らないわけにはいかない
もはや担げる量の限界を超えていたが、本能的に採ってしまった

デポ4まで戻り、採取した袋を背負う・・・最初は背中の荷もさほどではなかった
デポした袋を回収しながら、杣道を下る
デポ3、デポ2・・・ザックの荷は、どんどん重くなっていった
▲帰る途中で見つけたナメコの幼菌 ▲サワモダシ幼菌

デポ1まで下って、ザックに入れると65リットルのザックは満杯になった
これまで山釣りで背負った最高は、1週間の山ごもりで約25kgであった
それを遥かに超える荷の重さ・・・やっと立ち上がり、牛馬のごとく歩いた

こうなれば、もはや遊びではなく、仕事だと自分に言い聞かせるしかない
それにしても重い・・・肩がしびれ、足が震える
車止めに着いたのは午後4時・・・

相棒に声をかけると・・・返事がない・・・無言のまま
「どうした」と声を掛けると
「こやくて(疲れ果てて)、声も出ねぇ」と絞り出すように言った

サワモダシ狂想曲の一日に、全エネルギーを費やしたような長い一日だった
それでも、心は充実感に満ち溢れていた
家に帰っても休む暇はない
サワモダシは、その日のうちに後処理を済ませなければならない
山の恵みを粗末にすれば、授けれてくれた山の神様の怒りをかうことになる

しかし、いつもは一人で処理しているが、とても一人で処理できる量ではなかった
女房にも手伝ってもらい、延々と後処理を続ける
煮る⇒水洗い1⇒水洗い2を繰り返す
▲後処理が完成したサワモダシ・・・熱を加えると形が崩れずきれいに仕上がる
一般的にサワモダシ成菌は熱を加えると黒褐色に変色するが、旬のサワモダシは色艶が違う

処理したサワモダシは、大きなザルに入れて一晩水を切る
翌朝、缶詰にするか、あるいはフリーザーバックに入れ密封してから冷凍保存する
ちなみに処理したサワモダシは25kg・・・缶詰にビッシリ詰めた個数は42個

もはや遊びの領域を超えてしまったとしか言いようがない
マイタケの魔力も凄いが、雑キノコの代表格・サワモダシの魔力も凄いと言わざるを得ない
しかし、これも秋田の森の知られざるパワーの一端に過ぎない
▲冷蔵庫で乾燥させた天然マイタケ・・・乾燥させると香りが一層高くなる
焼きマイタケ、天ぷら、マイタケご飯などに最適
冷凍保存する場合も、乾燥した方が美味しい
やはり手間を惜しまないほど、天然素材の旨味を引き出すことができることを実感する
▲本日採取したナメコの幼菌 ▲天然ナメコのおろしあえ
サワモダシは、ナメコと同じく独特のヌメリがあって美味しい
だから、サワモダシの和え物も幼菌が最適である
また、納豆汁には、ヌメリのあるナメコとサワモダシが最適

成菌は鍋物用など、サイズごとに選別しておくと、簡単かつ美味しく調理できる
「毎日がキノコ三昧」の日々・・・
味噌汁、鍋、麺類の具、お吸い物、天ぷら、和え物、酢の物、焼きマイタケ、マイタケ酒・・・

安全、安心、薬効、ヘルシーな食材と言えば・・・
何といっても、「ブナ・ミズナラの森の恵み」に勝るものはない
▲ブナのキノコパワーには圧倒される
▲ブナ・ミズナラ林のキノコ採り
これからブナ林の黄葉とナメコ、ムキタケ・・・晩秋のナメコへと続く
マイタケ、サワモダシが大豊作なら、ナメコも期待できそうだ
問題は、今後の冷え込みと適度な雨、そして山に入るタイミングがその旬に当たるかどうか・・・

これだけは運を山の神様に祈るほかない
山釣り2010は、まだまだ楽しみが尽きない

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