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晩秋の黄葉、老マタギの山語り、ナメコが生える条件、数百年ブナのナメコ、、肉厚ナメコ、岩魚のペア、ナメコの薬効・・・
▲ブナ林の「晩秋の黄葉」
11月の季語は、落葉、枯葉、初霜、初冬、冬めく、冬紅葉、晩秋・・・
例年ならば、この森は丸裸になり、見通しがすこぶる良くなるはずである
11月に入ると、それを予告するかのように時雨と木枯らしが吹き荒れていた

ところが、5名のパーティで谷に入ると、ブナの森は・・・
2週間遅れの「晩秋の黄葉」・・・2010最後の輝きを放っていた
ブナの森を見上げては、感嘆の声をあげ、風倒木に群がるナメコやムキタケに舞い上がる
「山釣り2010」の最後を飾るには、これ以上ないベストコンディションに恵まれた
ブナ林のナメコは、同じ風倒木に場所を変えながら次々と発生する
発生のピークは、一般に黄葉の季節と晩秋〜初冬の二回である
今回は、「晩秋の黄葉」という珍現象にもかかわらず、二度目のピークにふさわしい当たりが連発した
▲晩秋の黄葉 ▲ブナの風倒木 ▲落葉のそま道
早朝5時、秋田市を出発・・・車止めに着いたのは午前7時頃だった
準備をしていると、1台の軽トラックがやってきた
この山を知り尽くしている地元の単独マタギであった

「ナメコ採りだがぁ、今年は腐ったキノコばかりでさっぱりだ」と言った
よくよく聞けば、春クマ狩りからゼンマイ、イワナ釣り、マイタケ、ナメコ・ムキタケ、
晩秋のクマ狩りまで、この山を知り尽くした老マタギだった

「今年だば、マイタケが凄かっだなぁ、例年生えねぇ木まで生えでだぁ・・・
ところで、○○森さ行ぐが、それども○○山さ入るが」
「○○森さ入る予定だよ」と言って先に出発した
杣道を歩く途中、昨晩秋にわずかに生えていた倒木にナメコ幼菌を発見
さらに、杣道沿いの倒木に若いムキタケが群生していた
これは、晩秋のナメコ&ムキタケがピークを迎えている序章であった
河原で遅い朝食をとっていると、先ほどの老マタギが追いついてきた
河原に腰を下ろすなり言った
「足が早なぁ・・・皆、山歩げる体しでるなぁ」

老マタギの山語り

彼はすこぶる人懐っこく、山の話がオモシロイ・・・つい山語りに引き込まれてしまう
本流の奥地、ナメ滝近くの小沢にゼンマイ採りに入り、クマと遭遇した話
そのさらに奥地はゼンマイの宝庫で、座ってゼンマイを採ったもんだ
源流から下るように山を巻き、枝沢までクマ狩りをした話

怪魚が棲むゼンマイ谷でクマを捕り、険しい尾根を越え獲物を運んだ話
その谷は、最近、岩魚の姿が見えなくなったとも語る・・・そんなはずはないのだが・・・
その険しい谷に入るルートは、一つ手前の沢を上り尾根を越えるという
・・・これは地図で予想したルートと同じだが、高巻きにしては険しく時間がかかり過ぎるルートだ・・・

この周辺は、彼のマイタケ場だが、ライバルが一人いたらしい
今年は豊作だったが、相手の姿が見えず、マイタケを独り占めした話
この山の陰は、○○マタギの猟場で山菜の宝庫・・・
けれども岩魚を釣りながら山菜採るなら、この沢が一番だという

話の途中で切り上げ、先行していった
朝食を終え、出発・・・ほどなく、彼はそま道でムキタケを採取していた
見れば、旬のムキタケが群れをなして生えていた

「良いムキタケだななぁ」「んだなぁ」
「置いで来た雨ガッパ、見にゃがっだがぁ」
「いゃぁ、見にゃがったなぁ」

地元のマタギは、自分のテリトリーを主張するサインとして雨具をぶら下げる習慣がある
でも、彼は、それを主張することはしない
さらに、我々のキノコ採りのフィールドを避け、反対側の山に入ってくれた
そのさりげない行動に、さすが山のプロだと思った
▲濃霧に包まれた晩秋の谷 ▲錦秋に染まった左岸にテン場を構える。焚き火の薪を調達し、ナメコ&ムキタケ採りに出掛ける。
▲数百年ブナに生えたナメコ成菌の群生
ナメコが生える倒木は、毎年決まっている
いつもお世話になっている1本目のブナには、上から横にかけて群生していた

天然ナメコが生える条件

@雪崩や雨水で移動しないような安定した林床・緩斜面、急斜面と緩斜面の境界線、
 沢筋などのブナの風倒木
A湿度がやや高く、風通し・排水ともに良好で、明るいブナ林であること
B気温は15度前後以下で、一般に黄葉の季節と晩秋〜初冬にかけて生える

この@〜B全ての条件を満たさないと、ナメコの大群生には当たらない
要は、里地里山近くの雑木林ではなく、奥地のブナ原生林地帯がポイントになる
つまり、ブナ林を代表する天然ナメコは、山を熟知した健脚向きのキノコと言える
だからオ・モ・シ・ロ・イ
▲倒木の横に生えたナメコを採る ▲周囲はナメコの菌に包まれていた。高台に横たわる細い倒木にもナメコが群がって生えていた。全員で楽しいナメコ採りモードに突入。
▲立木に生えたナメコ成菌 ▲ウスヒラタケ ▲ムキタケの幼菌
▲ムキタケ成菌 ▲傘が開いたナメコ ▲腐っていたトンビマイタケ
ナメコを探しながらブナ林を彷徨っていると、必ず腐ったトンビマイタケに出会う
キノコのプロは、ブナ林のトンビマイタケからスタートする
ブナに着生するキノコの中では、最大の獲物だけに、ぜひ挑戦してみたい

トンビマイタケの採取時期は、8月上旬〜9月上旬
マイタケは、9月上旬から10月中旬、サワモダシは9月下旬から10月中旬
ナメコ&ムキタケは、10月中旬から11月・・・

ということは、キノコ採りは8月〜11月の4ヶ月にも及ぶ
キノコ採りを山釣りに加えると、雪国の山釣りは、4月〜11月の8ヶ月・・・
年間の2/3を山で楽しむことができる・・・こんな素晴らしい遊びはないのではないか
▲立ち枯れ木に群生したムキタケ
手の届かない高い場所は、柄の長い鎌で切り落とし、小ザルで受け取る
ランダムに落ちてくるムキタケを完璧にザルで受けるには、鋭い反射神経が要求される
まるで自然のキノコゲームを楽しむように採る
▲小沢沿いの倒木に生えたナメコ幼菌
▲ムキタケ(左2枚)と紛らわしい毒キノコ・ツキヨタケ(右の写真)

晩秋ともなれば、ムキタケと間違えやすい毒キノコの筆頭・ツキヨタケは姿を消しているはずである
ところが、ムキタケと同じ倒木に旬のツキヨタケが群生していた
これは、今年のキノコの異常を象徴するような光景だった
▲数百年ブナに群生したナメコの幼菌&成菌
仲間と別れ、単独で気になっていた数百年ブナの倒木に向かった
急斜面を上り、高台に倒れた巨大ブナに辿り着く

その倒木中央を覆うように群生したナメコが目に飛び込んできた
ブナの木の皮を破って芽を出すナメコ幼菌のパワー・・・
「こりゃ〜凄い!」と、思わず独りで雄叫びを上げてしまった
ナメコたちは、一斉に語りかけてくる
「俺たちを独り占めする気か・・・」
急ぎ尾根まで駆け上がり、谷の向かい側にいる仲間に向かって、大声を出した

仲間の応答の声があったが、次第に遠ざかっていった
笛で合図を送ったが、もはや何の反応もなくなった
やむなく、この感動を独り占めで楽しむことに・・・
独り興奮を隠し切れず、カメラのシャッターを押し捲る
ザックから直径30cmのザルを取り出し、採取にとりかかる
あっと言う間にザル一杯になった・・・ここで3袋採取する

初日は、これだけで満足だった
これより上の核心部は明日の楽しみに残し、左の尾根に向かい下った
その尾根は、ブナの純林に覆われていた
厚い落ち葉に埋もれるように倒れたブナにはナメコ、立ち枯れの幹にはムキタケが群生していた
饅頭型の旬のナメコのみ採取しながら下る
▲ブナの風倒木に生えたムキタケの群れ
▲肉厚のナメコが群生
尾根を下り終える直前、2年前の晩秋に採取した倒木を思い出す
その倒木の中央から下部には何も生えていなかった
上を見上げると、落葉を被った極上ナメコを発見・・・
傘の厚い粘液の上に落葉が降り積もり、傘の縁からヌメリが滴り落ちようとしている
傘の中央部の色は、極めて濃い枯葉色に染まり、傘の周縁部にかけて淡いクリーム色をしている
下から見上げると、傘も茎も太く充実した極上ナメコであった
これこそ天然ナメコでしか見ることのできない個性を放っていた
▲肉厚のナメコを採取すると、ザルが山盛りとなった
満足してテン場に戻ると、途中で別れた仲間も大当たりしたという
初日で早くも、例年の2日分を採取してしまった 
産卵をまじかに控えた岩魚
右に2匹のペア、左上に1匹のオス岩魚が見える
左上のオス岩魚は、戦いに敗れたのであろう

岩魚の産卵は、一般にメスが産卵適地を選ぶ
そのメスを巡って激しい争いが起きる
ケンカに勝ったオスは、メスの腹部を突付き、産卵床を掘るよう促す

左上のオスは、恐らく、産卵の瞬間に割り込んで放精するに違いない
つまり強い者だけが子孫を残すわけではなく、
弱い岩魚も漁夫の利を得て子孫をちゃんと残しているところがオモシロイ
▲大根おろし和え用の幼菌 ▲万能つゆで煮込み調理 ▲ダマさんが釣ってきたタコの刺身
夜空は雲ひとつない満天の星が煌いていた
明日の快晴を予告するかのように夜の冷え込みは、殊の外きつい
持参した着替えを全て着ても寒い

靴下を履いた足、無防備な手は、刺すほど冷え込みは激しい
焚き火で暖をとるしかない・・・濡れた倒木を焚き火で乾かすと、盛大な焚き火となった
▲キノコ鍋 ▲タマネギの上に盛り付けたカツオの刺身
▲キノコ鍋を調理する柴田シェフ ▲キノコ鍋料理 ▲野菜、ソーセージ、ゆで卵の野菜サラダ
焚き火の傍らで、キノコ料理を肴に酒を酌み交わす
会発足以来の想い出話が延々と続き、全員酩酊したところでシュラフに潜り込む
晩秋の寒さは半端じゃないが、仲間全員がたわいもなく深い眠りに落ちた
▲翌朝起きると、錦秋の谷は幻想的な霧に包まれていた
谷の霧は、水温と外気温の差で生じる
恐らく、早朝の気温は限りなくゼロ度に近かったと思う

濃霧の谷をカワガラスが、低空飛行を繰り返しながら上流へと飛んでいった
「山霧に、五里霧中で突っ込む、カワガラス」

それは、二日目も快晴を約束する現象であった・・・
(晩秋の黄葉とナメコ&ムキタケ採りPart2につづく)
ナメコの薬効MEMO
天然ナメコ特有のヌメリはムチンという成分
ナメコに含まれる薬効成分は、ムチン、コンドロイチン、ナイアシン、植物繊維の4種

ムチンの薬効・・・胃潰瘍・胃腸病の予防、インフルエンザ・風邪予防、疲労回復、動脈硬化(血液をさらさらにし、血流の改善効果)、アレルギー疾患に対して効能がある
コンドロイチン・・・心臓疾患、老化、美肌、関節痛に効果

ナイアシン・・・肌荒れ、二日酔い、うつ病、不眠症に効果
水溶性の植物繊維・・・発ガン物質・コレステロールの吸着排出、ダイエット効果
つまり、ブナ帯の天然キノコは、現代病に打ち勝つ「秘薬」なのである

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