雑きのこ1 雑きのこ2 ナラタケ3 ナメコ4-1 ナメコ4-2 ナメコ5-1 ナメコ5-2 ナメコ6 山釣り紀行TOP


初冬のフナ林とナメコ、老木ナメコ、クマ撃退スプレー、クマと遭遇、食物連鎖、山に生かされている実感・・・
2010年11月21日、快晴の予報・・・
週末の散歩を兼ねて、最後のナメコ山に向かった
ブナの森は、ほぼ100%落葉し、冬を迎える寂しい風景が広がっていた

やはり、ナメコのピークは過ぎていたが、初冬ナメコのマメや幼菌も目立った
午前11時頃・・・最後のナメコ場に達する直前、クマに吼えられてしまった
幸い、腰には新調したばかりのクマ撃退スプレーを下げていた

お陰で、冷静な対応ができた・・・けれども・・・
クマにしてみれば、「これから俺たちは冬眠だ・・・お前も、そろそろ山遊びに終止符を打て」
との警告だったのではないかと思う
▲大量の落葉が降り積もった杣道 ▲ブナの老木

車止めに着いたのは、まだ真っ暗な朝5時半
夜が明けるのを待っていると、1台の車が走って行った
朝6時、夜明けを待って準備を開始する

初冬の谷は、足の感覚が喪失するほど冷たい
地下足袋に先割れのネオプレーンソックスを履く

さらに11月15日は狩猟解禁日・・・
初冬のブナ林を歩く場合、間違っても黒系の雨具を羽織ってはならない
ヘボなハンターに撃たれないよう、「赤」い雨具と「赤」のザックカバーをする

クマ避け鈴2個とクマ撃退スプレーを腰に下げ、冷え込みが厳しい杣道を歩く
早朝は、手袋をしていても、手の感覚がなくなるほど寒い
それでも、澄んだ空気は凛として清々しく、降り積もった落葉は足裏に優しい
二又近くで、先行していた二人組に追いつく
彼らも初冬のナメコ&ムキタケ採りだった
沢に倒れこんだ倒木の先端を見ると、ナメコの幼菌が見えた
いつものナメコ場まで一気に向かって歩いた
途中、まばらではあるがナメコの幼菌を発見
斜面を駆け上がって、ブナの倒木の裏側や根元部分を見ると、ナメコが大量に腐っていた
そういえば、二年前、この倒木でナメコを採った記憶が蘇った
次に、いつもムキタケが群がって生える倒木の上側を見上げる
何と、倒木の両サイドにナメコが生えているではないか
しかも、これから生えるマメも無数にあった

この倒木には、ナメコは生えないと決め付けていたが、
やはり、歩いたことのない時季に歩けば、新たな発見がある
▲初冬の豆粒ナメコ
ナメコの第一ピークから約一ヶ月が経過している
こんな光景に出くわすと、ナメコは一ヶ月以上にわたって生えてくることが分かる
さすがブナ林を代表するキノコだと思う
▲右側の横に群がって生えていたナメコ成菌
▲ナメコ幼菌を上から撮る ▲腐りかけの老菌
▲ムキタケとナメコのマメ
▲豆粒ナメコ ▲沢筋の湿った倒木に生えていたナメコ成菌・・・初冬のナメコは、傘中央部の色が異様に濃いのが特徴か?
▲老木に生えたナメコ幼菌
枝沢から杣道に戻って、上流に向かって歩く
左手に苔生すブナの老木に、何やらキノコらしき塊が見えた

老木の根元から見上げると、下から幹の上部までナメコが群がって生えていた
幸い、谷にも朝日が射し込み、「ブナの宝石」のようにキラキラと輝いて見える
残念ながら上の塊には手が届かず、パス・・・手の届く範囲を丁寧に切り採る
▲ムキタケ
▲落葉した裸木の輝き ▲まばらに芽を出すナメコ
▲初冬のブナ林
100%落葉したブナ林は、一気に視界が開け、開放感に満ち溢れている
降り積もったフカフカの落葉、暖かい初冬の光を全身に浴びて、ブナの森を彷徨う

倒木には、生える場所を変えてナメコが生えている
だから、ブナ林の散歩は、訪問者を決して飽きさせない
▲視界100%のブナ林と倒木 ▲ナメコの幼菌
ナメコは、同じ倒木に、黄葉期、晩秋、初冬と場所を変えながら次々に生えてくる
しかし、初冬ともなれば、群生の規模は一気に小さくなるようだ
それでも一人なら十分過ぎるほど採取できる 
数百年ブナを見上げると、澄み切った青空が透けて見える
丸裸になったブナの骨格は、青空に不思議な線を描いているように美しい
落葉・・・雪国の厳冬に耐えるブナのたくましい戦術に脱帽せざるを得ない
命芽吹く早春の新緑が待ち遠しい・・・それはブナとて同じであろう
▲折り重なるように生えていたナメコの成菌
丸裸になった森は、風、光ともに最大となり、ナメコは乾燥しやすい
しかし、悪天候が続いていたこともあって、傘のヌメリはピーク時と何ら変わっていなかった
ザックを背中から下ろし、落葉の座布団に座ってのんびり採取する
▲澄み切った青空と丸裸のブナ林
ブナの落葉が林床を埋め尽くし、一面が茶色っぽく見える
落葉を踏みしめながら斜面を駆け上がると、サクサクと心地よい音がする
今年は、ブナの実が凶作・・・クマにしてみれば、生き抜く最後の試練を迎えていることだろう 
▲硬い皮を、ナメコは一つの塊になって突き破る
一個のナメコの力は小さいけれど、集団のパワーを結集して大きな力を発揮する
これは、小さな生き物が、厳しい森の中で生き抜く巧みな戦術のように見える
その千差万別の光景は、実に美しく、何度撮っても飽きることがない
▲傘が著しい粘液に覆われたナメコ幼菌の群れ
この倒木には、数年お世話になっている
来年も生えてくるように、できるだけ倒木に傷をつけないように、ナイフで株ごと切り取る
楽しい、楽しいナメコ採りが続く
▲ブナ林とナメコ木 ▲ナメコ成菌
ブナ林の高台から○○森の方向に向かった
この時、頭の中はナメコのみで、まさかクマに吼えられるとは思ってもいなかった

▽「クマ撃退スプレー」の有効期限
思えば前回、長年腰に下げていたクマ撃退スプレーのガスが、
完全に抜け切り、使用不能になっていたことに気付く

クマ撃退スプレーの有効期間は、約3〜4年程度と記されている
その倍の期間を腰に下げ、山と渓谷をハードに歩いた
ガスが抜けるのも当たり前
万が一を想定し、クマ撃退スプレーを新調した

製品は「元祖・クマ撃退スプレー カウンターアソールト
製品の底に記された有効期限は2014年11月・・・
ということは、有効期間は約5年程度

価格は1万円弱・・・高いように思うかもしれないが、
クマとの無用なトラブルを避ける唯一の武器と思えば安い

▽初冬のクマと遭遇
2個もクマ避け鈴を鳴らしながら進むと、
うるさいほど丸裸の森に響き渡る
しかし、クマ避け鈴をつけていれば、
100%安全と思うのは大きな間違いである

その悪夢が現実となった

すぐ目の前に、ナメコが生えるブナ林が見えてきた
すると突然、目の前の笹薮から、地鳴りのような重低音が全身を揺さぶった
森の王者・クマが渾身の力を込めて発する警告音・・・

この恐怖は、実際に間近で体験した者でなければ、分からない
一言で言えば、全ての野生動物を震え上がらせるほど凄まじい

「やばい・・・」
この時、頭によぎったことは、ただ一つ
対応を誤れば、「殺される」
腰に下げていたクマ撃退スプレーを握り締め、冷静さを取り戻す

相手に背中を見せず、向き合ったまま後ずさりし、距離をとる
クマは微動だにせず対峙している・・・次第に警告音もやむ
安全圏まで達した所で一息つき、急斜面の尾根をゆっくり下った

▽クマ撃退スプレーは冷静さを保つ必須アイテム
単独で山に入り、不幸にもクマと遭遇すれば、襲われる確率は極めて高くなる
常人なら、冷静さを失い、本能的に背中を向けて逃げようとするだろう
クマは人間より遥かに足が速い・・・逃げ延びることは100%不可能である

かろうじてクマと対峙したとしても、武器がなければ、冷静さを失うのは当たり前のこと
無用なトラブルを回避するには、ただ一つ
とにもかくにも、冷静さを失わないことに尽きる

こんな時、クマ撃退スプレーは強力な武器になる
何より、クマの恐怖に勝る精神的な力は絶大である

だから、クマ撃退スプレーの価格が1万円でも、
それに救われると、一転「激安価格」に思えてくる

▽相手は親子グマか?
オスグマなら、接近するクマ避け鈴の音を察知すれば、向こうから逃げたであろう
ということは、親子グマと推定するしかない
小熊を助けようとする「母グマ」ほど恐ろしいものはない

「山の神」が、「森の王者・クマ」だとすれば、それは「母グマ」しかいないだろう
▲斜面から湧き出す名水  ▲苔生すブナ ▲落葉の散歩道

▽人間も「食物連鎖」の輪から逃れられない
かつて、クマ撃退スプレーは、北海道のヒグマ対策に限って腰に下げていた
フナ林のツキノワグマは、クマ避け鈴でほぼ100%、遭遇を回避できた時代もあった
しかし、山仕事がなくなり、春クマ狩りもめっきり減ると、ツキノワグマの数も行動も変化した

今では、クマ撃退スプレーを腰に下げないと、安心して山に入れなくなってしまった
とにもかくにも、お茶の間感覚の動物愛護的な感覚では殺されてしまう
自然の中では、人間も「食物連鎖」の輪の中に組み込まれていることを忘れてはならない

今年はブナの実が凶作・・・冬眠を前に、クマは飢えているに違いない
ヒグマと同じく、ツキノワグマも、人間の味を覚えると、「人食いクマ」に化ける
その事実は、江戸時代の古文書「弘前藩庁御国日記」にも記されている
▲ダケカンバ ▲清流を汲み、お湯を沸かして昼食

クマと遭遇したばかりだが、意外に冷静な自分に驚く
北海道日高の山中では、ヒグマに接近され、その怖さは体に染み付いている
山釣り人生25年を振り返ると、生きているのが不思議に思うことさえある

しかし、そんなことで山遊びをやめようと思ったことは一度もない
むしろ、山に生かされている実感がフツフツと湧いてくるのを感じる
山から学ぶことは尽きることがなく、その魅力は深まるばかりである

「その山の師匠は誰か」と問われれば・・・
迷わず答える・・・「深山仙境に棲むイワナ」であると
だから、ブナ帯に棲むイワナには、感謝しきれないほどの恩がある

熱いミニカップラーメンを汁に、おにぎりを頬張る
身を切るほど冷たい渓流、丸裸になった森を眺めながら熱いコーヒーを飲む
「やっぱり、山はいいなぁ〜」・・・独り言をつぶやく

雑きのこ1 雑きのこ2 ナラタケ3 ナメコ4-1 ナメコ4-2 ナメコ5-1 ナメコ5-2 ナメコ6 山釣り紀行TOP

inserted by FC2 system